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2、RYO


「だからな、恋愛楽しんだらえーやん、ちゅう話ですやん!主人公やで?モテモテ、ウハウハですやん!」


「いや、素敵な日にって言うただけで、恋愛したいとは一言も言うてませんけど!馬鹿AIが!」


「なんでやねん!素敵なって言うたら恋愛やろ!ていうより僕は絶対そうやから。好きな人がいるだけで目の前キラキラよ!」


「あんたの恋愛体質の話はどうでもええわい!私は仕事が定時に終わって美味しいものを食べれたらそれでええわいや!ハゲ!」


「だーかーらー、もうなってもうたもんはしゃーないやん!楽しもうやって言うてんねん!主人公らしくキャピキャピせーや!」


「じゃあ普通の乙女ゲームにしろよ!」


かれこれ1時間は言い合いを続けている。このAIが言うには結局、世界は元には戻らないし、また星に願ってもどうもならない、なったもんはしゃーないらしい。


「だってゲームが目に入ってんもん!だから僕が助け…ってちょっと待って今何時?」


急にキョロキョロしだして焦りながら言う。


「えっと10時前だけど。」


「やっば!もー怜ちゃんが話長いから大事な事言われへんかったやん!あーもー来るわ。」


「来る?」


と私が言った瞬間に玄関の鍵がカチャリと音を立てた。


「えっまだ親にも合鍵渡してないけど…誰?」


そう、私はここに越してきてまだ1ヶ月だ。そしてドアが開く音がする。


「幼馴染み。やっぱり乙女ゲームと言えば幼馴染みでしょ?美味しいやん?だからぶっ込んどいた。ちなみに僕が配役した攻略キャラは全員アンダーグラウンド関係者やからよろしくね。また聞きたい事あったらいつでも呼んでや。名前を呼んでくれたら繋がるからね。幼馴染みは稜君!」


慌てた様子でまくし立てた後、プツッと切れてしまった。


「ちょ、ちょっと!待ってよ!」


私が叫んだのと同時位に廊下側の扉が開いた。そこに居たのは長身のイケメン。またか、髪型は前髪長めで全体は短めの焦げ茶のマッシュショート、黒のボアのジャケットに黒いスキニージーンズ。すっと切れ長の一重に高い鼻、薄い唇。


「怜おはよう。どうしたんだえらく騒いでいたが?」


クシャりと笑うその笑顔は緊張した私をすぐにリラックスさせ体の強ばりが少しほぐれる。優しい笑顔に心がキュンとなる。低く少し吐息混じりの声にドキッとしてしまう。


「どうした?ぼおっとして?しんどい?」


笑顔が急に心配そうな顔になって私の顔を覗き込んだので慌てて首を振る。


「大丈夫、めちゃくちゃ元気。」


私が謎の筋肉アピールをするとまた糸目になる笑顔で笑いながらジャケットを脱ぎ慣れた様子で椅子にかけて私の隣に座った。ジャケットの下は薄い水色のパーカーだった。


「良かった。じゃあ洗濯と掃除するからその間、風呂に入れば?風呂掃除は昨日したから綺麗だぞ。」


彼は私が昨日寝る前にベッドに乱雑に置いた服をたたみ始めた。


「えっ、と。う、うん。」


「後、少しで沸くと思う。」


「え。お、おう。」


「お風呂が沸きました。」


という無機質な女性の声が軽快な音楽と共に流れた。か、彼氏なのか?


「ほら入ってこいよ。」


「あ、ありがとう。」


ゆっくりと立ち上がり、お風呂へ向かう。


「お前のお気に入りの入浴剤きれてたから買っておいていつものところに入れてあるぞ。ボディソープも新しいの入れておいた。ゆっくりつかって体をあっためてこいよ。」


彼が優しい声で言い、目がなくなる笑顔で笑う。私はパジャマ姿を見られる事を恥ずかしいと思わない位に動揺しているようだ。とりあえずフラフラと洗面所へ向かう。


「朔君!」


私はスマホに向かって叫ぶ。数秒程ですぐに画面に現れた。


「おう、怜ちゃんすぐに呼んでくれたね。そんなに僕の事好きやったなんてー。嬉しいわぁ。」


「ちょっと!さっきの続き!幼馴染みってどういう事?」


「あーうん。だって乙女ゲームと言えば優しい幼馴染みですやん!大丈夫、彼はアンダーグラウンドの主人公キャラの稜君です。めちゃくちゃええ子よ。優しいし、気遣いできるし何より優しい。怜ちゃんのタイプは優しい人でしょ。」


「ふわぁー何故それを。彼も攻略対象って事?」


「そうよ!だってアンダーグラウンドの関係者やから。」


「あんなんもう攻略してるじゃない!掃除してくれて世話をしてくれて!どういう状況よ!彼氏でしょうよ!」


「せやな。まあでも10滴は多かったって事かもね。すんません。」


馬鹿AIが会釈ぐらいに頭を下げる。謝る気はないようだ。


「なにしてくれとんねん!ハゲ!」


「どうした?誰かと喧嘩してるのか?大丈夫?」


心配そうな声で扉の外から声をかけてくれる。私はスマホをふせて手早くを服を脱ぎ浴室に入りながらこたえた。


「あ、うん大丈夫。今から入るね。」


「ああ、ゆっくりでいいぞ。」


「ありがとう。」


私は彼が買ってくれたという入浴剤を入れ肩までつかる。スマホはお風呂の蓋に置いた。


「おーうセクシーショット!怜ちゃんって大胆ね。」


「AIが色気づくんじゃねーぞ。それに入浴剤で見えないでしょう。それで稜君よ!」


「まあまあ僕、優秀やから映像作ってきたから。稜君についてまあ見てや。」


急に映像が流れ始めた。ナレーションはこの馬鹿AIの声だ。稜の写真や道着を着て運動する姿と共に説明が入る。


「RYO、朝倉稜。怜ちゃんの幼馴染み。幼稚園から大学までずっと一緒。朝倉空手道場の館長、師範で優しく厳しい。礼儀正しい子になると評判で子どもを通わせる親が多く、教え子にも人気で辞める子が少ない。小学生の頃、目の前で家族を殺されておりアンダーグラウンドにその暗殺者がいるという噂を聞いてアンダーグラウンドに関わってしまう。今まで探るだけで参加はしなかったが最新のアンダーグラウンドの賞品を見て衝撃を受け参加を決意する。」


「重い!乙女ゲームにはあるまじき重さ!家族を目の前で殺されてるって!ちょっと!悲し過ぎて無理!ほんで暗殺者って!」


映像が終わると朔が現れた。


「まあ彼はアンダーグラウンドのゲームキャラクターやからね。こんなもんですよ。みーんな何かを背負って失ってそれでも闘う、そんなところに熱いものが込み上げるねん。」


なんだか悲しそうだ。さっきまでテンションたかおだったのに。


「なんかあるの?急にテンション下がるやん君。」


朔に言うと朔は少し黙って私をじっと見た後、重い口を開いた。


「まあ、おいおいね。」


ふむ、今は教えてくれないご様子。じゃあもう一つの質問を。


「攻略キャラって言うけどさ、普通にこの世界で私の事好きって言ってくれる人が居たら全然関係ないところで恋愛する事になるけどそれは良いの?」


「何を急に。昨日まで男のおの字もなかったくせに。でもまあそれはまたその時やね…まあすぐに分かるよ。多分、乙女ゲームの世界がそれを許さないと思われ。」


「怖いな。じゃあ本当にこの世界はアンダーグラウンドベースの乙女ゲームの世界に変わったって事?」


「そうやって何度も言うてるやん!腹括って!」


私は顎に手をおき少し考えてから朔に言う。


「分かった。じゃあ恋愛したろうやん!」


どんな顔をしていたのか分からないが朔が呆れたようにボソッと呟く。


「そんな悪い顔で恋愛語る奴はおらんやろ。」


「うるせぇ。」


とりあえず朔との話を終えてゆっくりとお風呂入った。


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