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偽りの空と嘘のレプリカ  作者: 雨森 雪
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プロローグ

 空色とはどんな色だろうか?

 

 晴天時の空の色を示す明るく淡い青色。英語にするとスカイブルーと呼ばれるその色を、人類が正確に把握する事はもう出来ないだろう。


 嘘はそれを嘘と知らなければ真実と同義である。そして、嘘を嘘と判断できる材料がなければ、人は嘘を嘘と断ずる事は出来ない。


 だから今日も地下都市の天井には嘘か本当か分からない空色が泰然と鎮座している。


「おや? 何か不満がありそうな顔をしているね」


 病室帰り、雪の見舞いを終えた彼に銀髪の少女はそうやって話しかけた。


「君は死にたいかい?」


 彼女はそうやって彼に尋ねる。見知らぬ美少女の聞き慣れぬ言葉に陸は瞬きを繰り返した。それを見て、彼の戸惑いを悟った彼女は苦笑して「ごめんごめん」と両手を合わせる。


「自己紹介がまだだったね。僕の名前はタナトス。この地下都市コロニー十七に六百年前から巣食う死神さ」


 タナトスはそう言って開いたデコルテからネックレスを取り出す。二本の鎖の合流地点が抜き出され、その先からは小指ほどの銀の鎌が顔を出した。


「さて、君の回答を聞こうか」


 彼女はにやりと陸に笑いかける。悪辣とした笑いだ。人を喰ったような――文字通り彼女は寿命を喰っているが――そんな笑いだ。しかし、陸は恐れずに口を開く。地上を支配し、人類の七割を殺戮した神の使徒と同等の存在を前に己が願いを口にする。


「あはははっ。それは面白いね。じゃあ、僕と一緒に来てもらおう」


 それを聞いたタナトスは堪え切れないとでもいうようにお腹に手を当てて笑い、陸の手を取って駆け出す。


「安心しておくれよ。このまま僕と歩いてて気づけば死後の世界だなんて事はないから」


 その無邪気な笑みに陸は拍子抜けしてしまう。


 素性は死神。


 名乗るは死そのものを神格化した神の名。


 青空の下、二人は駆ける。


 偽りの青と嘘つきの青。


 嘘つきで偽物で真実で本当に溢れたコロニー十七。


「さぁ、物語を始めよう。新庄陸。君の願いは確かに聞き届けた」

 梅雨越え間近、夕焼けの中、死神は彼の耳元でそう囁いた。



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