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7

 思わずあげてしまった悲鳴。案の定寝ていた男の人は目を開け、そしてバッチリ目があった。


「な、誰だ!」


「ち、違うんです!失礼します!」


 止まれと言われているのを無視して、全速力で部屋から出る。後ろから追いかけてくる足音が聞こえてくる。

 その時、眠気が来た。人間から猫に変わってしまう時に起こるあの眠気が来たのだ。


〈まずい、どこかに隠れないと〉


 近くにあった部屋に入ると、鍵をかけた。そして窓から出たように見せるために窓を開ける。全てを終えたあと、そのまま床に倒れこむ。


「この部屋にいるのか?……クソッ開かない」


 そんな声を聞きながら、私の意識は夢の世界へと入っていった。


「猫ちゃん猫ちゃん、久しぶり」


 久しぶりに糸目さんが出てきた。どことなく疲れている様子だ。


「お久しぶりです。お疲れですか?」


「そーなんだよぉ……モフモフさせて?」


頭や背中などをモフモフされる。


「そ、そんな事より!今知らない人に家の中で会ってしまって!寝てる場合じゃ無いんです!」


「あ~多分大丈夫だよ。それ僕の知り合い」


 多分じゃ駄目じゃん、という顔をしてみる。果たして猫だから伝わってるか怪しいところだが。


「怪しんだ顔してるね~……わかったわかった。今日のところは帰るよ。せっかくゆっくりできる時間が出来たから会いに来たのになぁ」


 拗ねたような口ぶりで話すと、一瞬で消える。そして私の意識が覚める。


『な、何事?』


 目を覚まして最初に気づいたのは、床に寝転がっていないということ。そして何故か隣にはさっきの男の人が寝ていた。どうやらベッドのあった部屋に運び込まれていたようだった。横を向いて寝ている男の人の微かな寝息が、聞こえてきてなんだかむず痒い。こんな距離で他人と寝るのは初めてのせいで、余計に心臓が爆発しそうだ。


〈とっても綺麗な人だな〉


 超近距離で見ているが、肌が荒れておらず、長い睫毛も艶やかでなおかつ多い。少なくとも黒が無いようだ。


〈この前見たのはこの人かな〉


 じーっと顔を見ていると、男の人も目を開けた。


「ん?どうした?寒いのか?」


 そう言って更に隙間を詰められる。より一層近くなり頭が真っ白になる。


「おやすみ」


 当たり前のように眉間に優しくキスされた。そのあと背中を撫でるとまた寝付いてしまった。そして私もキャパオーバーしてしまった。


 ・・・


 目を覚ますと、隣にいた男の人は居なくなっていた。だが、ベッドに残っている私ではない微かな甘い香りが、そこに人がいた事を示している。


〈結局誰だったのかしら〉


 あの顔立ちをどこかで見たことがあると思ったが、肝心のどこで見たかを覚えてない。色々と考え事をしながら外に出ると、いつもより城下町内が騒がしい。兵士がいつもより多いようだ。


〈何か事件でもあったのかな……あの二人組から盗み聞きしてみよっと〉


 歩いている兵士の後ろをついてまわる。


「はぁ~全く困ったもんだよなぁ。昨日の夜から王子が行方不明なんてさぁ」


「絶対エメリヒ様は何か知ってるよ。あんなにニヤニヤしてさ」


「いや、それはいつもだろ」


 そうしてハハハと笑い合う二人。どちらにも思い当たる人物がいる。


〈まさか……まさかね?〉


 頭の中に浮かんだ二人を無理やり払うと、いつもご飯をくれる店に向かうのであった。



野良猫にむやみに触らないようにしましょう


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