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 数日経ってから気づいたことがある。朝の民が行動している間は、私は猫の姿になる。そして夜の民が行動する時間になると、少しの眠気と共に就いた眠りによって人間に戻るのだ。初めは慣れなかったが、時間が過ぎればいずれ慣れた。


 その結果私の一日の活動が、ある程度落ち着いてきた。

 明け方の四時頃に就寝し昼前に起床。猫の姿で城下町を歩き回り、店先でご飯を貰う。その代わりに店の前に座って招き猫になるのだ。夕方に拠点の家に戻ってきて、少し寝る。すると次は私自身になって店で働く……という流れだ。


「お嬢ちゃんスープこぼさなくなったな」


「おかげさまで」


 最初の方は歩くだけでこぼしていたスープも、最近は持って速歩きできるようになった。ただし定食のように沢山のってるとまだこぼす。


「あんまり不器用だから最初は焦ったけど、丁寧な仕事をしてくれる良い子だよ」


 あっちにいた頃は仕事が遅いと怒られていたが、ディアナは丁寧に私にコツを教えてくれるので上達がかなり速かった。お客さんも茶化すが文句を言う人がいないので不安なことも無かった。


そして何より


「ミユキは丁寧なのが売りなんだから」


 そう言って慣れた手つきで料理を運ぶのは一人息子のカミル君だ。実年齢は高校生ほどだけど、精神年齢は大人の男の子。初日に居なかったのは、寝坊をして起きてきてなかったからである。


「お前はガキんちょだろカミル。年上のお姉さんには、さんを付けて呼ばねえと」


「おっさんうるさい」


 微笑ましい光景を見ながら今日も忙しく働く。カミル君はお父さんのクラウスにそっくりで、目元がキリッとしたカッコいい男の子だ。ただし瞳が黒いので、夜の民確定である。


「そーいやカミル、お前の彼女元気してるか」


 カミル君には可愛らしい彼女さんがいるらしく、暇があればデレる。


「最近ようやく手を繋ぐのを許してもらった。でもすぐ照れるし超可愛い……」


 こんなイケメンに好かれるなんて幸せ者だなとか、少し羨ましいな、なんてぼんやり考える。


「お嬢ちゃんはそう言う話は無いのかい?」


「そ、そんな私は無いですよ!こんな地味な人、誰も興味ないですよ~」


「そんなこと無い、自信もって」


 カミル君が横から否定をしてくる。イケメンにそう言われると少し嬉しい。


「ちょっと何時まで長話してるのー!はやく次のやつ運んでよねー!」


「すみませーん!」


 そんなこんなで、あっという間に夜は明けた。


 ・・・


 無事に怪我すること無く廃墟に戻ってきた。貯まったお金で買った懐中時計を見ると、もうすぐ寝る時間を指している。


〈ソファで寝ると、腰が痛いからなぁ……今のうちに他の部屋を見てみようかしら〉


 ずっと住んでると、恐怖心は完全に消えてしまい、今では真っ暗な状態でも歩き回れるようになった。キッチンを覗いてみたり、行ったことの無い部屋を色々見て回ると、それなりに時間が過ぎている。


 何も考えず一つの部屋を開けた。部屋には一人で寝るには十分なほどのベッドが置いてあった。


「あ、良いベッドがある……きゃっ!」


 迂闊に近づくと、そこには、この前見たフードを被った人が寝ていたのだった。


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