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番外編(4)美雪とライナルト

ついに……


「あれ、お父さんも帰ってきてるの!?」


実家に帰る前日、お母さんからの連絡に思わず声を出してしまった。私のお父さんは出張していることが多く家にいる印象が昔から無かった。学校の行事も全部お母さんが来てくれていたのでどのくらい老けているのかも定かではないそんな人。まさか家に帰ってきているとは思わなくて、一気にハードルが上がったような気分だ。冷や汗が垂れそうになる。


「あ~なんだか嫌になってきたな!」


私は明日着ていく服を夜遅くまで考える羽目になるのだった。


ーーー


ピンポーン


家のインターホンを鳴らす。隣では身だしなみを整えたライナルトが深呼吸をして目を閉じていた。


「緊張してる?」


「そりゃしてるよ!大切なことなんだから…失敗もできないし」


コソコソ話していると玄関の扉が開いた。顔を出したのは私のお母さんで、私の顔を見た後に隣にいたライナルトを見てビックリしていた。同時にライナルトも私のお母さんを見てビックリしている。小さな声で「え、似てる」と呟いたのが聞こえた。お母さんはもう一度私の顔を見てから家に入ってくるようにと言ってくれた。ついていくと靴を脱いでそのまま廊下を歩きだす。ライナルトは静かに後ろをついてきてリビングに入った。そこに私のお父さんがいた。ぼんやりとした記憶の中に揺蕩っていたお父さんの面影がようやく一つの形になった。


「お父さん、老けてないね!」


「美雪、それは帰って来て早々言うことか?後ろの彼氏君笑ってるじゃないか」


素の反応で言ってしまったのを素早くお父さんにツッコまれてしまった。後ろを振り返るとライナルトが口元を必死に隠しながら普通そうな顔をして立っている。目が完全に笑っているのがバレバレだ。それを見たお母さんも先ほどまでの神妙な表情が一気に解けてしまった。


「はぁ~美雪ったら何も変わってないわね。とりあえず座ってちょうだい」


キッチンに向かったお母さんの後ろをついていき、お茶の準備を手伝う。準備をしている間、お父さんとライナルトが何を話しているか心配になっていたが、ヒョコっとお父さんがキッチンに顔を出すと手土産に持ってきた紙袋をぶらぶら下げて嬉しそうに言った。


「これ食べながら話そうか」


一通り準備が終わると椅子に座った。しばしの沈黙ののちにお父さんが口を開いた。


「えっと…確かライナルト君だよね、美雪がお世話になってます。この子は普段からフワフワしてるから大変でしょ?」


「そんなことないですよ」


「そうだよ!お父さんもお母さんも昔の私のイメージが強いかもしれないけど、最近はかなり身軽に動けるんだから」


ワイワイと最近の話をする。最初は表情がこわばっていたライナルトも、慣れてきたのか笑うようになっていた。私も両親がどんな反応をするかかなり心配していたが、私の方からライナルトがどんな人か伝えていたから警戒心は薄れていたのだろう。鏡に手を突っ込んでいるライナルトを見て、両親は爆笑していた。肝が据わりすぎているのでは?


「じゃあライナルト君の緊張もほぐれたことだろうし、本題に入ろうか」


お父さんは突然真面目な口調になった。お母さんも真剣な顔になってライナルトと私のことを見てくる。ライナルトは大きく深呼吸をすると、両親の顔を見て言った。


「僕は美雪さんと幸せな家庭を築いていきたいと考えています。まだお付き合いをして日が浅いと感じられるのは重々承知しております。しかし僕は時間など関係なく、美雪さんを必ず幸せにします。プロポーズも本人から了解をいただきました。これからも美雪さんと一緒に同じ屋根の下で過ごしていきたいと思っております。どうか僕たちの結婚を認めてください。よろしくお願いいたします」


深々とライナルトが礼をした。私も続けて話す。


「私も結婚する気が無かったの。でもこうやってライナルトさんと共に過ごすことで真剣に結婚したいと思えました。だからプロポーズされた時は本当に嬉しかったの。私、ライナルトさんとならきっと幸せになれる。だから私たちの結婚を認めてくださいお願いします!」


二人して深々と礼をする。そして顔を上げると両親は打って変わって嬉しそうな表情をしていた。


「ライナルト君、美雪のことよろしくお願いします。絶対に幸せにしてやってください!」


「娘のことよろしくお願いします」


色々な感情が混ざって、私はライナルトの方を見た。ライナルトも私の方を見て嬉しそうに笑った。そして正面を向くと、満面の笑みと共に大きな声で言った。


「ありがとうございます!必ず幸せにします!」


そのあとは全員でこれからのことをたくさん話してお開きになる事となった。


ーーー


帰り道、ライナルトと手を繋いでのんびりと歩く。


「本当なら俺より先に美雪の家族に御挨拶するのが正しかったんだけど…本当に優しいご両親だね」


「優しいというより、天然が入っているのが正しいと思うけど」


自嘲気味に言う私を見てライナルトは朗らかに笑った。ライナルトは繋いでいる手をブンブンと揺らすと話し出した。


「本当に良かった。実は異世界の人間と結婚なんてもってのほかだ!と言われる覚悟はしてたんだ。これまで二人で歩んできた道のりが壊れてしまう可能性の方が高かったのに……本当に、良かった」


気づいたらライナルトの目元がキラキラと光っていた。泣いてるの?と聞くと、うれし涙だよと言って笑ってくれた。


「私もライナルトと夫婦になれるのは本当に嬉しいよ。ふつつか者ですがどうぞよろしくお願いします」


「こちらこそ、愛の重い人間ですがよろしくお願いします」


さっきまで泣いていたとは思えないほどニヤニヤしながらライナルトは私の手を引っ張った。いきなりのことで対応できずにライナルトの腕の中に包まれる。


「もう絶対に離さないからね、大好きだよ」


いつもなら人前で恥ずかしいからと言って腕の中から逃げていた。しかし今日は車も自転車も人も誰も通っていない。だから私は腕の中でライナルトにもたれるようにして言った。


「私も大好き」


二人の穏やかな時間がこれから始まろうとしていた。


END

プロポーズの言葉って難しいですね~!


これにてこの物語は正式に終わりとなります!

最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

登場人物たち全員が幸せに暮らせますように…

作者より心を込めて

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