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今日も間に合わせました~

廊下には誰もいなかった。それどころか城全体も静かで誰もいないようだ。ライナルトが色々と作業をすると言っていた一部に、場内の警備を減らすのも含まれていたのだろう。でもそれでは何かあった時に危ないので一刻も早く終わらせなければならない。私は急いで約束の部屋に向かった。


「わー凄い綺麗だね!」


エメリヒやクラウスなど色々な人に褒められて、つい嬉しくなってしまう。遅れて入って来たのはライナルトだった。髪の毛を固めてフォーマルな格好になっていた。余りにも美しい姿に声を出すことができなかった。そのライナルトは周りも見ずに私の方へ向かってきた。


「ミユキ」


それだけ言うと黙って私のことを見つめて動かなくなった。数十秒すると突然動き出したが、何故か壊れたロボットのように動いている。咳払いをすると周りの皆に話しかけた。


「俺は大切な人のために勇気を出した。正直お祖父様からここで追放を食らってもおかしくないと思っている。でも皆の幸せのため俺は必ず成功させたいと思う」


全員大きくうなずく。ライナルトは私に手を出してきたので私は手を力強く手を繋いだ。しばらくそのまま歩いていると一つの部屋の前に辿り着いた。ここが王様の部屋であると察する。手を握る力が一瞬だけ強くなったのに気づいた私は、大丈夫だという気持ちを込めて握り返した。ライナルトがゆっくりとノックをすると扉を開いた。


ーーー


「とうとうワシに直接会いに来たのか…って誰だその娘は!」


部屋で休まれていた王様は私を見て驚いた声を上げた。ものすごい剣幕にたじろいでしまうが、ライナルトが庇ってくれた。


「彼女は…俺の大切な人です。この人のために俺はこの制度を廃止したいと思っていました。でも今は違います。あなたはこの国の民の声を聴いたことがありますか?俺は何度か隠れてこの国で沢山の人に話を聞いてきました」


「お前は一体何をしているんだ!次期王としての自覚がないのか!」


怒りを露わにした王様の顔は何よりも恐ろしかった。それでもライナルトは怯むことなく言葉を続けた。


「このままではダメです、あなたがどうしてこの様な制度を作ったのか知っています。だから連れてきました。何時間かかってもかまいませんから存分に話してください」


次に入ってきたクラウスを見て王様の表情は般若面のようになった。クラウスは意外と落ち着いた顔をしていた。


「久しぶりです、お元気そうで何よりです。僕がディアナとあっているところを見てこのような制度を作られたのがあなたの性格上手に取るようにわかりました。私にも大切な家族がいます。私の息子は愛する人と共にいられないことを嘆いています。もう私のことを追放しようが何をしようが構いません。ですがどうかこの制度だけは廃止にしてください」


静かに、だが力強くクラウスは意見を言った。


「国民の幸せを考えるのが一番大切なんじゃないの?」


突如として扉が開いた。聞きなれない声が突然部屋の中に木霊した。全員が振り返ると、ニコニコしたエメリヒが立っていた。視線を浴びたエメリヒは自分の顔を指さして違うというように首を振った。


横に避けたエメリヒの後ろにいたのは見慣れない一人の女性だった。

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