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「」……実際のセリフ

『』……本当は声に出したいセリフ

〈〉……心の中でのセリフ


という分け方をしています

 目を覚ますと、薄暗い部屋にいた。全体的に埃が積もっているところから、この家がずっと使われていないことがわかる。ソファから飛び降りると、開いている扉の部屋を調べ始めた。


〈誰も住んでなさそうね〉


 クローゼットの中に服が残っていたり、まるでさっきまで人がいたかのような雰囲気だ。


〈やっぱり猫のままか〉


 走ると思っていた以上に速度が出るし、自分の体を簡単に越えられるほどのジャンプ力もある。ただ閉まっている部屋を開けられないのが弱点。


〈幽霊でもいたらどうしよう……なんて〉


 破られた窓から外を覗く。どうやらあの男の人が言っていたように、国の中心部分の様なところに飛ばされたらしい。どこかから賑やかな音が聞こえてくる。


〈でも何でこんなところに空き家が?〉


そう思いながら振り返ったとき


 そこに古びたマントを着た人間が立っていた。何者かさっぱりわからない。


『きゃーーーーー!』


「フギャーーーー!」


 猫らしい声をあげながら、私は逃げる。逃げながら色々なことを考えていた。


〈何あれ!幽霊かな……まさかね。それより姫野先輩は何処に行ったのだろう?あの男の人が言ってた事が本当なら、私は元の世界にも帰られないし、何なら猫から戻れないかも……。もしかして猫のままでここに住む違う猫と、結婚をして子供を産んで人生が終わるなんて事無いよね?〉


 どんどんネガティブな思考に陥ってくる。振り返ると、さっきの人が追いかけて来ていなかった。安心した私は、落ち着いて歩き出す。


〈だんだん賑やかな音が近づいてきた……わぁ!〉


 沢山の人、物、声。先程の廃れた家とは違って鮮やかな色が私をのみ込んでくる。


〈確か猫って、見える色とかが人間と違ったはずだけど、ここは私仕様になってるのね〉


 もしかしたらあの家も本当はもっと暗くて、人間だったら見えないものが見えたのかもしれない。開けられていない扉とかもあったから、あの幽霊が開けてくれてたら良いけれど。


「あ、猫ちゃんだ!」


「白猫~俺の店の前に座ってくれ~」


「ねぇお母さん、触ってきて良い?」


「白猫が見れるなんて幸運ね!」


 色々な人からちやほやされて、少しいい気分になってくる。普段は不器用で迷惑をかけていたが、猫になったことで器用になった。それだけでも十分。


「猫ちゃん、ほらご飯やるから店の前に座っといてくれよな」


 屋台のおじさんが、ミルクの入った茶碗を地面に置いてくれる。言われたように飲んでいると、おじさんの店に客が沢山の来た。


〈白猫効果絶大ね〉


 飲み終わって満足すると、再び歩き出す。よく見てみると、電気の着いていない店がちらほらとあるようだ。定休日なのだろうか?あとやっぱり黒いものがどこを探しても無い。黒髪にスーツを着ていたから、万が一こんなところで戻ったら一大事だ。


〈一通り見たから、一度戻ろうかしら〉


 さっきの人がいませんようにと願いながら、元来た道を戻る。帰りも同じようにご飯を貰ったり小さい子に触られたりしながら歩いた。


 家に戻ると、人もおらず特に変わった様子はなかった。ソファに飛び乗ると猫らしく丸くなる。


〈これは全部夢で、明日になったら戻るのよ〉


 時間も分からぬまま、ただ疲れに負けて、気絶するように寝たのだった。

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