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私が目を覚ますと、すぐ目の前にライナルトがいた。ほんの数センチ先に顔があって思考回路してしまう。裏返った声とともに挨拶をされて、私も良く分からず挨拶をした気がする。時計を見ると、もうすぐ猫になる直前だった。私は諦めてすべてを話すことを決心したのだった。


「そっか……道理で昼間にミユキに会えないわけだな。それにしてもエメリヒのやつ何してるんだよ」


ライナルトの膝にのせてもらって話しをしていた。異世界から来ていずれ帰らなければならない事実を伝えると、悲しそうな顔をした。


「それでミユキの働いている食堂についてはやっぱり教えてくれないんだね」


『今日店の人に相談してみようと思う。実は店の人とライナルトを合わせるのが少し不安なの』


首を傾げるライナルトに何も言えずにまごまごしていると、目が合ってニコリとしてくれた。


「わかった。とりあえずミユキにはいつでも会える事がわかっただけで十分だよ」


頭を撫でてくれると、あろうことか額にキスをしてきた。再び思考回路がショートしてしまう。


「猫だったらこうやって接することができるのに…。ねえミユキ、オレ頑張ってこの国の制度を廃止にしたら君に伝えたいことがあるんだ。だからそれまではこの国に残っていてくれないか?お願い」


『う……うん』


猫で本当に良かった。人間だったら赤面どころではない。立ち上がったライナルトは大きく伸びをすると、ベッドに乗っている私の視線までしゃがんでくれた。


「じゃあミユキのために俺頑張るから。帰らないでね?」


ひと撫ですると、部屋から出て行ってしまった。私も伸びをするともう一度ベッドに丸まって寝ることにしたのだった。もしかしたらライナルトはこれまでも私に何らかのアピールをしてくれていたのを気付いていなかったのかもしれない。告白を聞いてしまってから意識するようになって恥ずかしくなることが増えたのかな、なんて思いつつ眠りについた。


ーーー


「え、ライナルトがこの店に来るのか!?」


クラウスは目に見えて慌てていた。ディアナとカミル君は目をキラキラさせていた。


「もちろん来てもらうわよ!そうなったら早速準備しちゃうんだから!ミユキはそのライナルト君を呼んできなさい!」


次は私も慌てた。クラウスも同じ様に驚いている。


「あれ?もしかして私の意見は特に尊重される流れじゃないね。でも息子に会える絶好の機会だから利用させてもらおうかな」


流れるように臨時休業の看板を出しつつ迎えに行くようにと言われ追い出された。

私は諦めて一度廃墟に戻ると、そのままエメリヒの部屋へ戻った。この部屋に待機してもらっていたのだ。もし来てもらえることを許可した場合、私の予想では速攻で呼び出すことになると思っていたからだ。


「あれ、この速さはもしかして迎えに来たのかな?」


ニマニマと笑っているエメリヒを尻目にライナルトを見た。


「来て欲しいって言ってたから迎えに来たよ。行こう」


「わかった」


ナチュラルに私の手を握ると、引っ張られるようにして歩く羽目になった。振り返ってエメリヒを見てみると、やっぱりそういう関係だったのかと言いたそうな顔でこちらを見てくる。そういえばライナルトと付き合うと後が大変だと一番最初に心配してくれていたのは彼だったかもしれない。まだ違いますよという顔を表現しようとしたがうまくいかなかった。

しばらくカンテラのみの暗いトンネルを歩いて、そのまま廃墟に出てきた。


「ここで俺たちは出会ったんだもんね。こうやって手を繋いで…フフフ」


あまりにも嬉しそうに笑うエメリヒを見てこっちまで心が温かくなった。それを見たライナルトは試すように握る力を少しだけ強くしてくる。私も答えるようにほんの少しだけ握り返すと驚いたような顔をしてきたが、その後は照れたように笑って速足になった。


「ミユキはずるいよ……」


ぼそぼそとライナルトが言った言葉は私には聞き取れていなかった。


ーーー


「ここに俺に会わせたい人がいるの?」


ライナルトは怪訝そうな顔をしながら私に尋ねた。無言でうなずくと、そのまま扉を開けた。

店の中は集団面接のような机の配置になっている。横長の机に左からディアナ、クラウス、カミル君が並んでいた。ディアナは私とライナルトが手を繋いでいるのを見て「そういうことか!」という顔をしていた。


「へ~ミユキも案外やるじゃん」


何を察したのか、カミル君は立ち上がってこちらに来ると、突然私の肩を抱いた。この顔は以前店に彼女が来た時にからかっていた時と同じ顔をしていた。ライナルトが私の彼氏だと思っていたずらを仕掛けてきたのだ。


「俺じゃ駄目だったかな?」


ウインクしながら完全に悪ノリカミル君へと変貌している。両親は呆れたような顔をしている。


「俺の彼女に気軽に触るな」


肩に乗っていたカミル君の手を払いのけると、鋭い目つきで睨みつけた。そして私の体をライナルトの方へと引き寄せる。彼女という言葉に一瞬理解が遅れたが、理解すると共に急速で顔が赤くなった。見上げてみると、今まで見たことないような怒りの表情をしてカミル君を牽制していた。


「へーへーすみませんでした。そんなに睨まなくても良いよ。俺は本当に大好きな本命がいるから安心して?」


両手を上げるようにしてカミル君は自分が最初に座っていた席へと戻った。それでもずっとライナルトは私を包むようにして守り続けられていている。


「カッコ良くなったねライナルト」


一通り見守っていたクラウスはようやく声を上げた。そちらを見たライナルトは一瞬迷ったような表情を見せた後、目を見張った。


「もしかして……お父様ですか!?」


ライナルトの素っ頓狂な声が店に響き渡った。


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