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俺は大きく伸びをすると立ち上がった。腰の骨がボキボキ鳴っているのがわかる。ミユキの為に本気になってかなり日が経っていた。未だに成果が無くてイライラがたまり続けている。


そして何よりシュネーを全く触れていない。それどころか最近はシュネーとエメリヒが仲良くしているようだ。その噂を聞いてからしばらくエメリヒの顔を正面から見ることができなかった。拳が出そうで仕方がなかったから。

イライラにはもう一つ原因がある。ミユキにも会えていないのだ。考えてみるとあの廃墟でしか会ったことが無い謎の女性だった。働いているところも見たことがない。途中まで実は幽霊でも見ているのではないかと思っていたくらいだ。色々と考えていると、パンクしそうになったので一度休憩を入れることを決めた。


「よし、シュネーを触りに行くしかないな!」


真っ暗な廊下を今までにないスピードで早歩きすると、その勢いでシュネーのいる部屋の扉を開けた。月明かりから朝日になりかけた光がわずかに入る薄暗い部屋には誰かいた。その人物は本来なら俺とシュネーが寝るはずだったベッドを占領している。侵入者の顔を拝んでやろうと思って近づくと違和感に気づいた。


「あれ?」


その人物は本来ここにいるわけがない女性だったから。


「ミユキ?」


丸くなるようにして寝ていたのは、俺が一番会いたいと思っていたミユキだった。どうやってこの部屋に入って来たのか、そもそも城にどうやって侵入したのか全然わからなかったが、会えたことが何よりも嬉しかった。規則正しい寝息を聞いていると、先ほどまでのイライラが全て消えたのがわかる。そのまま音をたてずにベッドに座ってみた。


「こんなにも近くにいるのに、何でこんなに遠く感じるのだろうね」


俺の好きな人、こうやって無防備な姿で近くにいるのは初めてだった。頬に触れてみるとくすぐったそうに少しだけ顔を隠した。


「可愛い……」


じっと見ていると、何も羽織らずに寝ていたからかミユキはくしゃみをした。そのくしゃみの可愛さに頭を抱えそうになりながら近くにあった布団を掛けてあげた。


「む……すぅ」


寝返りを打った彼女は正面を向いて再び眠っている。閉じられている目が本当に美しいのを知っているのは俺しか知らないと思うと高揚感が増した。俺は彼女の顔を正面から覗くような格好になったみた。羞恥心で一杯になったが、普段は見ると顔をそらされてしまうのでじっくり見れる機会がないから絶好のチャンスだと思い耐えた。


「ゴメンね、卑怯なヤツで」


腕を曲げると、おでこに口づけをした。心臓が周りに聞こえるくらい大きな音を立てているのが自分でもわかる。覆い被さるような格好でしばらく動けなくなってしまった。心の奥底に無理やり眠らせていた熱い気持ちを抑え込むように顔をそらして目を閉じた。深呼吸をしてもう一度ミユキの顔をじっと見る。美しい寝顔を見ているだけで理性が暴れだしそうになる。


その時だった。


「え、ライナルト?」


ミユキが目を覚ましていた。至近距離で目が合ってしまい思考回路が停止してしまう。


「おはよう?」


中途半端な反応をしてしまった自分に後悔しつつ、あわてて起き上がった。今顔を見るとおでこにしか視線が行かないと予測して顔をうまく見れなかった。チラリと顔をうかがうと、ミユキは何かを考えるような顔をしている。そしてミユキは時計を見ると、俺にブレスレットを渡してきた。


「これはめて待ってて」


突然ミユキが白く発光し始めた。眩しくて目を閉じてしまう。部屋が元の暗さに戻ったのを確認して目を開けた。そこにいたはずのミユキが消えてしまって、かわりにシュネーが座っていた。辺りを探してみるが、ミユキは完全に消えてしまっている。


『ライナルト』


「ニャーオ」


どこかで名前を呼ばれた。シュネーも鳴いている。信じられなかったけれど、一つの可能性が頭に浮かんだ。


『私がシュネーで、ミユキなんです。信じてください』


「噓でしょ?本当に?」


全く信じられなかった。でも会える時間が限られている彼女の謎の生活が解決されると思うと、どこかしっくり来てしまった。


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