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ディアナの過去編です
アタシ、ディアナが今の夫であるクラウスと出会ったのは偶然だった。
この街のはずれにある廃墟は昔から亡霊が出ることでとても有名だった。友人から一緒に肝試しをしてみないかと誘われて夜にその廃墟に行くことになった。最初はみんな怖がっていたが、しばらく歩いていると怖さも無くなりお喋りするほどになっていた。その時…
どこかの部屋から唸り声のような音が聞こえた。
みんなでその音がどこから聞こえたのか探そうと決めてグループに分かれた。アタシは昔から気が強かったから一番ビビりの子とペアになった。二人になった途端、建物内が静かになった気がした。蝋燭の弱々しい光のみを頼りにして歩き出す。張り巡らされた蜘蛛の巣に引っかかるごとに友人は小さく悲鳴を上げた。
また唸り声が聞こえる。さっきよりも近い。
みんなで歩いていたところよりも明らかにボロボロになってきている。窓は割れて隙間風が吹き、家具に埃が積もっている。異様な雰囲気になっていた。
「ねぇもう帰ろうよ……」
友人はほとんどアタシに縋りつくようにして歩いていた。いや、むしろ私に引きずられていた。音はどんどん近づいているように感じた。友人は半泣きになっている。
「ごめん!もう無理!私帰るね!」
「あっ、薄情者!まったく…」
蝋燭も持たずに走って戻ってしまい、それを見たアタシはため息をつくと再び歩いた。暫くすると行き止まりについた。そこに扉が一つ。
「ここしかないよね…ええい!」
勢い良く開けると、そこは変な部屋だった。それほど広くない部屋に不自然なほど大きなベッドが置かれていた。そしてそこに見たことがないような美しい青年がいた。不気味なほど青白い顔色をした青年はこちらを見た。
「ゆ、幽霊!?」
そこで意識が途切れた。
「う……ハッ」
目を覚ますとまだ廃墟の中にいた。起き上がると、自分がベッドに寝かされているのがわかった。
「目覚めて良かった……蝋燭の火が燃え移って本当に危なかったんですよ!」
突然視界に先ほどの幽霊が入ってきた。よく見てみると足もあるし普通に話しかけてきた以上これは生きていると実感した。暗くてはっきりと見ることはできないが、本当に端正な顔をした人物だった。青い瞳に銀の髪が月の微かな光で輝いている。あまりにも美しい光景にアタシは一瞬息をするのを忘れていた。
「どうしてこんなところに居たのですか?街から離れてますし、来るのも大変だったでしょう」
アタシは肝試しに来たことと、この部屋から唸り声が聞こえていたことを話した。青年は照れたように頭をかきながら言った。
「聞こえてたのか…ちょっと悩んでたことがあってね。そうだ自己紹介もまだだったね、私の名前はクラウスと言います」
「アタシはディアナ」
手を出されたので自然と握手をする形になった。クラウスの手は、毎日皿洗いをしているアタシの手と違ってさらさらとしていた。
「クラウスさんはとっても綺麗な手ですね」
「私はディアナさんのような頑張っている人の手好きですよ。それがあなたの努力の証明なのですから」
優しく微笑みかけられて、顔が赤くなるのがわかった。部屋が蝋燭の光と月の明かりだけで助かった。これ以上明るい部屋だったらこの顔がバレて余計に恥ずかしくなるところだったから。すると、どこかからアタシの名前を呼ぶ声が聞こえてきた。クラウスはアタシの顔を見ると扉を指さした。
「お友達が来るようだね。そろそろ戻ってあげたら?」
アタシがベッドから立ち上がろうとすると先ほどの影響でよろけてしまう。クラウスはそれをさりげなく支えてくれると、そのままアタシを立ち上がらせてくれた。
「今日ここで私と会ったことは二人の秘密にしてくれないかな?」
「わかりました。クラウスさんも気を付けて帰ってくださいね」
困ったようにまた笑った。でもその笑顔はなんだかとても寂しそうに感じた。そのまま無言で立ち去ろうと思ったが、扉に伸ばしていた手を途中で止めるとアタシは言った。
「じゃあ、さようなら」
「うん、じゃあね」
ひらひらと手を振るクラウスの姿があまりにも儚く見えて、この扉を閉めた瞬間彼は消えてしまうのではないかと不安になったものの、心の奥底でこれ以上関わると厄介ごとに巻き込まれる気がして、アタシは友人たちの呼ぶ声の方へ走ったのだった。
今ちょっと試験的に時間をずらして投稿しています。
どの時間が効果的なんでしょうね~悩みます。




