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のんびり更新します
話しをした後、私は部屋に一匹残された。最初は楽しかったキャットタワーも毎日上っていると飽きてしまうものだ。
何かすることもなく、窓の外を眺めていた。
しばらく眺めていると、鍛錬をしている集団を発見した。剣を振り回しているのが良く見える。その中で指導しているのが先ほど見かけたテオさんだ。細身なのは同じではあるが、おそらく先輩が好きなのはヒョロヒョロ系であって、隠れ筋肉系ではないと予想される。
少し話を脱線してしまったので戻そう。ジッと見つめていると、何故かテオさんが唐突に顔を上げた。バッチリ目線が合うと、こちらに微笑みかけてくれた。他の騎士の皆さんもこちらを見てくる。大量の視線に驚いていたが、飛び跳ねて手を振ったりしてくれる人もいて白の恩恵を猛烈に受けているのを実感した。恥ずかしいけど尻尾をピコピコ動かしてみると、騎士の皆さんは凄く嬉しそうにもう一度跳ねているのが見えた。あの場にいる人全員どうやら黒がないのがわかる。やはり昼の民しかいないことが予測できる。
再び練習を始めていたが、私は眺めるのをやめてベットに丸まった。いつも通り昼寝をしようと思い、目を閉じていると何かが瞼の裏に浮かんでいる。
「あれ?私の体に戻っている?それに……白猫?」
いつの間にか真っ白な空間に立っていた。私は人間の姿に戻り正面に白猫が座っていた。
『こんにちは、いやはじめましての方が正解ですかね?』
猫はトコトコとこちらに近づいてくると私の膝に落ち着いた。その時に私は違和感を感じた。
「あれ?乗ってる感じがしないな……」
『ここは私とあなたを繋ぐ精神の世界です。それで今日は話しをしたくて……実は私、猫じゃないんです。あ、猫なんですけど猫じゃないんです!今回の転移を成功させるために魔力で作られたモノなんです』
衝撃発言に動揺してしまう。
「え?ごめん、もう少し説明して貰っても良いかな?」
『今回エメリヒ様が行った転移魔法において必要なのは餌なんです。発動条件の場所へ誘う必要があるので、そこまで来てもらう手段として私は生まれました。本来は役目が終わって消えるはずでしたが、あなたがガッチリと抱きしめている際に体内に含まれてしまったか何らかの誤差があったんだと思います。エメリヒ様は唱えるのではなく古風にチョークを使って書き込むタイプの人なので、恐らくその粉を吸ってしまって取り込んだのかと……』
「つまり不慮の事故ということなのかな?そもそもこれはエメリヒも知っていることなの?」
『いえ、これは本当に予想外だったので……でも薄々感づいているかもしれませんね』
あの男、一度きっちりと美月先輩に怒られるのはアリかもしれない。私はため息をつくと猫を優しくなでた。ゴロゴロと喉の音を鳴らしている。
『あなたと一緒にいると楽しいですね。ここで出会えたのも運命ですから、どうか私が消えるまで仲良くしてください。そろそろあなたが目覚める時間です。では失礼しますね』
膝から猫が消えた。景色が少しずつ歪んでいき、私は目が覚めた。