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さて、ここで問題が発生した。夜になると、見回りが歩いていて、外に出られないのだ。それにこの前歩いてきたあの抜け穴も、暗かったせいで良く見えておらず、どこにあったのかわからない。
〈ライナルトは今も変わらずあの廃墟で私を待っているのかしら……〉
さらに困ったことに、昨日たまたま扉が半開きになっているところからすり抜けようとしたら、部屋の目の前に人がいたのだ。
「すまんな、命令なんだ許してくれ」
ポイと部屋に戻されてしまう。このままでは一生出られないのではないかと考えてしまい、思わず泣いてしまいそうになる。
トントン
「入るよ猫ちゃん……いや、シュネーか?それともミユキと呼べば良いのかな?」
扉を開けて入ってきたのは糸目さんだった。つまり、エメリヒだ。私は捕まって以降、ライナルトに名前を決めてもらった。それがシュネーである。
「シュネーでお願いします……と言うか!何で今まで来てくれなかったのですか!」
「痛い痛い!引っ掻かないで!これには理由があるんだ……っとと、声を小さくしないと」
猫と会話をしている変な人になっちゃう……と言って、あわてて声を小さくした。
「実は、最近王子は、昼の民と夜の民が再び共に生きていく事を王様に提案したんだ。でも失敗に終わって……僕は王子と仲が良いからね、一緒にどうするか考えてたんだよ」
「と言うとこは、最近ライナルトは廃墟に行ってないって事ですよね?」
「そういうこと。君と僕だけだよ?王子のことをライナルトって呼び捨てにするの」
朗らかに笑うと、私の頭にポンと手を置いた。ある程度話すようになって、ライナルト自身から呼び捨てで構わないと言われてから、ずっとこう呼んでいた。改めて自分が特別なんだと言われてるようで少し照れくさい。
「あの、私、夜になったら外に出たいです。そろそろ皆に会いたいです」
「そうだな……よし、じゃあ夕方に迎えに来るよ。恐らくライナルトも書類の最終調整で忙しくて自室から動けないだろうから。じゃあ今回はゲストを呼ぼうかな」
「ゲストですか?」
「楽しみにしててね」
じゃあ、と言いながら立ち上がる。
「あ、そうだ。これを着けようと思って……」
そのまま前足に装着されたリング。歩いても支障はなく、特に気になることもない。
「これで夢の中じゃなくても、好きなときに僕と連絡が取れるようになるよ。人間になった時のブレスレットは、このクッションの下に隠しておくから、迎えに来る前に着けておくように。じゃ」
問答無用で部屋を出ていくエメリヒ。暫くすると、リングから声が聞こえてきた。
「応答せよ応答せよ」
「こちらミユキ、聞こえてます。どうぞ」
「良かった。じゃあそういう事で」
こうして無事に外に出る手段は確保できたのだった。




