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お久しぶりです
少し短めです
「ニャーオ」
「あれ?君はこの前の白猫かい?」
そう言われてライナルトに抱えられた。
いつも通り話したあとに猫になってついていくと、キッチンに着いた。そして今に至る。
〈どうしてキッチンに?〉
暫く撫でられたあと、一度床に降ろされて行動を見ていると、今まで気づかなかった事が起きた。
「よいしょ」
ライナルトが何も入っていない食器棚を横にずらすと、ポッカリと空いた空間が出現した。ゴールの見えない暗闇に、思わず身震いをしてしまう。
「よし、行こっか……おいで?」
再び抱き上げられると、私とライナルトは闇へと歩いていくのだった。
ーーー
「さ、ここが君の部屋だよ」
人が一人くらいなら楽に住めるであろう部屋に運ばれてきた。猫なのに頑張れば人間も寝られるようなベッドが置いてある。それに一度登ってみたかったキャットタワーを見つけてそわそわする。
「じゃああとは侍女に任せようか」
「「かしこまりました」」
「フギャッ」
突然あらわれた二人組に驚く。逃げる間もなく抱き上げられて部屋へと入れられた。
「明日会いに行くからね」
そう言って無情にも行ってしまった。
「じゃあ猫ちゃん綺麗にしましょうね」
「毛並みフカフカ~」
まず始めに湯船に浸かった。泡でモコモコになりながら体全体を洗われる。上がると、優しい風で乾かされる。櫛でとかれると、サラサラのフカフカになった。人間の時だってここまで綺麗になったことが無いだろう。
「よーし、このくらいね」
「じゃあ次はお洋服を選びましょ」
『え?』
見たことがないようなフリルの猫用の服が出てきた。逃げようとすると秒で捕まった。
「ピンクとか似合うんじゃない?」
「いやいや~青も捨てがたいですよ~」
何十分もかけて決まったのはピンクのフリフリ。これからこの服を着ないといけないのは憂鬱だ。
「できたか?……可愛いな!」
タイミング良く戻ってきたライナルトに褒められて頬を勢い良くワシャワシャされた。気持ち良くて目を閉じる。
「お祖父様の前でだけはこの服を着ていてくれ」
お祖父様?と思っている暇もなく抱き上げられると時計が見えた。いつの間にか三時間は経っていたようだ。それだけずっと服を選ぶのに時間が使われていたと考えると恐ろしい。人間の頃の私よりもファッションを気にしてるのでは?
そんな事を考えていると、一際大きな部屋の前へ到着していた。
「入りますよお祖父様」
堂々とノックもせずに入っていった先には、全身から威厳というイメージを彷彿させるような人が立っていた。この人がこの国の王様……。
「お前が城から逃げた理由がこの猫か?」
「そうです。城下町にて有名になっていた白猫を捕まえようと思って、それなら先に捜さなければと思いまして、この前は出て行きました」
「フム……確かに縁起の良い猫だ。この猫なら飼っても良いが、ハックション!」
王様のくしゃみが止まらない。五回くらいした所でようやく止まった。鼻が少し赤い。
「なるべくワシの部屋の近くには寄らせないようにしてくれ……ハクション!あと、先日の提案書は全て破って捨てておいた」
「許可ありがとうございます。失礼します」
部屋から出たあとにライナルトはつぶやいた。「くそ」と、どうやら折り合いが悪いようだ。そういえばこの国の制度を変えたいと言っていたが、今回の提案書は、それに関わっているのだろうか。
「今度部屋にこの猫の抜け毛を置いてやる……」
『そりゃダメでしょ』
思わず突っ込みを入れてしまった。