表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

強すぎっ!![短編]

作者: クロラ

この話は強い女の子が主人公です。もちろん主人公を見てほしいのですが、その子が好きな男の子もなかなかイイキャラをしているのでそこにも注目してほしいです。 それではご覧ください!


どこかの田舎町でのこと。

そこには、とってもかわいい女の子がいました。



ただその女の子は……




あまりに強すぎたのでした。






ピピピ、ピピピ……


「……うるさいなぁ…」


少女は体をおこし、目覚まし時計を叩いた。目覚ましは返事をしない。まるで屍のようだ。


それから彼女はぼんやりと壊れた時計をみた。



「8時……



…………あ〜〜!!」

少女は急いで着替えて、鞄を持って玄関へむかった。

しかしそれをリビングにいたおばあちゃんに止められた。


「こら、待ちなさい優美(ゆうみ)!!あなた朝食は??

だいたい女の子なんだから髪の毛くらいどうにか……」



「あー!もぅいいからおばあちゃん!私急いでるから!!

いってきまーす!!」


そういって彼女はさっさと出ていってしまった。


「全くもぅ……」


おばあちゃんは呆れるばかりである。







・・・・・・


このいかにも活発そうな少女が今回の物語の主人公、桜井優美(さくらい ゆうみ)。真っ黒なショートヘアが似合う16歳の高校一年生だ。


彼女は見た目はとてもかわいい。だが、性格ははっきりいって男だった。


なんでも大胆にことを済ませ、女性らしい繊細さなんて微塵も感じられなかった。このように寝癖すら直さない。口調だってどこか男気がある。




そして、彼女は強かった。彼女は空手部に入っていて、入部して数ヶ月後にはすでにだれよりも強くなっていた。もちろん男子を含めてもだ。


そんなこともあって、彼女は学校内でひそかに『番長』と呼ばれていたりもする。本人は気付いていないのだが。(もし気付いたら名付け親の命はないだろう。)




そんな男みたいな優美だが、彼女にも好きな人がいたりする。

そして、最近その人にラブレターをだしたとか……。






・・・・・


キーン……


「しゃー!!ギリギリセーフ!!」


優美はチャイムと同時に教室に滑り込んで来た。クラスの全員が『またか。』って感じのリアクションをしている。


もちろん先生もである。

「桜井さ〜ん、もうちょっと余裕もってね、余裕。はぁ……もう、

じゃあ出席とりまーす、愛川〜……」

先生が点呼をしているとき、優美の隣の男子が話しかけてきた。


「おい優美、また寝坊かよ、それにその寝癖……

おまえ、ホントに女の子なのか??」


「うっせーな(れん)!!

別にそんなの私の勝手だろーが!」



今優美を馬鹿にしてるのは大野蓮(おおのれん)。彼女とは所謂幼なじみの関係だ。

彼も空手をしているのだが、一度も優美に勝てたことはない。



蓮は優美に追い撃ちをかけた。


「全くさぁ……


そんなことしてると、三好(みよし)先輩に嫌われちゃうぞ。」


「なっ……」

優美は言葉を失った。

それを見て蓮はニマニマ笑う。


そう、優美は三好先輩のことが好きだった。

彼はなかなかのイケメンで、剣道部の主将である。もちろん女子に大人気の男である。


三好には彼女がいたのだが、最近別れたらしい。だから優美はラブレターを出したのだ。


そして、その返事を今日の放課後にもらう予定なのだ。



「お、そーいや今日返事もらうんだよな??

ってことは…今日はおまえの泣き顔が見れるってわけだ!!」


蓮は笑いながらいった。まるでテストで0点とった友達を馬鹿にする小学生のように。

優美はその言葉に完全にキレてしまった。


「な、なんだと貴様!!

今言ったこと忘れるくらい殴ってやろうか?あ゛??」


「あぁ、やれるもんならやってみろ!

今日こそお前を倒してやる!」


「勝ったことないクセに生意気いうな!寝言は寝て言えバカ蓮」


「そんなこと言えるのも今日までだ、このアホ優美!!」



「貴様!!」


「なにを!!」



二人が飛び掛かろうとしたそのとき、


パコーンパコーン



二人のおでこに紅白のチョークが飛んできた。神(先生)からの制裁である。



「「……痛っ〜!!」」



「そこの空手バカ二人!!

朝くらい静かにしなさい!!……全くもぅ。」


そういって先生は点呼を再開した。




二人は仕方なく言い争いをやめた。


「……でもよ、優美はあの先輩のどこがいいんだよ?

なんか俺、あの先輩嫌いだなぁ……」


蓮が優美に向かって話した。


「そりゃあだって……かっこいいし、頭いいし、スポーツ出来るし……」


優美はニコニコしながら話続けた。彼女がこんな女の子らしい笑顔を見せるのは、大好きなプリンを食べてるときと、マンガを読んでるときくらいだろう。

その表情を見て、蓮は彼女が先輩のことが本当に好きなんだなぁ、とおもった。


それから蓮は、思わず本音をこぼした。



「……なんで俺じゃないのかなぁ……」



「ん?なんかいったか?蓮??」



「あっ!いや!なんでもないんだ、ハハハ…」



「???」



彼女には彼の行動は理解できなかった。







・・・・・・


時は移り放課後、体育館裏。



優美は不安と期待で胸いっぱいだった。

今回が彼女にとって初めての告白であった。だから彼女はかなり緊張していた。


しばらくすると、憧れの三好先輩がやってきた。確かに、誰が見てもかっこよく、爽やかな青年だった。



「ごめん、待たせた??」


「い、いえ!全然待ってません……」


優美はかなりテンパっていた。それにしても、普段とはまるで別人みたいな態度である。



「それで、この手紙なんだけど……」


そういって三好は鞄から手紙を取り出した。

淡いピンク色した封筒。あの中には彼女が何日も夜遅くまで考えて書いた、思いの篭った手紙が入っている。


「あ、はい、私が……出しました……」


優美はドキドキしていた。

果たして彼はなんと返事をしてくれるのか??



そう思っていた彼女にかえってきた返事は、予想もしていないものだった。




「……これ、ホントに桜井さんが書いたものなの?」



「え?そうですけど……」


優美は慌てて返事をした。

あれは確かに彼女が書いたもの。いつもよりもずっと丁寧に、そしてかわいらしく一生懸命書いた手紙なのだ。




彼女が返事してからしばらく沈黙があった。


その沈黙を破ったのは三好だった。



「ふふふ…………ハハハハハ!!」



彼はいきなり笑い出した。

それから手に持っていた優美の手紙を破き出した。

破かれた手紙は風に吹かれ宙を舞った。




優美は余りに突然のことで、なにもすることが出来なかった。



三好は笑いながら話し出した。


「ハハハ!!まさかラブレターだったなんてね!


最初に『番長』から手紙をもらったときは、『果たし状』かなんかと思ったよ!


それにしても、『番長』も女の子みたいなことするんだなぁ!!ハハ……」




「え……?」


優美は血の気が一気に引くのを感じた。

憧れの先輩が、あのやさしい先輩が……私をけなしている??


彼女はどうしても信じられなかった。だから恐る恐る尋ねた。


「あ、あの……番長って……」



しかし三好はさらに追い打ちをかけるのだった。



「は?お前以外誰がいるの??

まさか知らなかった?自分のこと『番長』って呼ばれてるの?


みんないってるよ?」



そのとき、彼女の心の中の何かが壊れた音がした。

優美は重いっきり右の握りこぶしを握った。



「お前のこと、誰も女って見てないよ」



それを聞いた瞬間、優美は三好に飛び掛かった。

それから彼の胸倉を左手で掴み、彼を押し倒した。



三好の上に乗った状態で、優美は彼を殴った。


殴った。


殴った。



彼女は暴力をすることは極力避けていた。しかし今の彼女にはその制御すら出来なかった。




「キサマー!!言わせておけばいいやがって……



許さない!!許さない!!」



「や、やめてくれ!悪かったから!許してく……グフッ!!」


彼は何度も謝っていたが、彼女は殴るのを止めない。

彼の顔にイケメンの面影はなく、完全に不細工になっていた。



それでも、彼女は殴った。

目から涙が溢れてきたが、そんなの関係なかった。




「私はなぁ!!私はなぁ!!……



強くならなくちゃいけないんだよ!!



私は……」



最後におもいっきり振りかぶった時、誰かが彼女の手をつかんだ。


優美が振り返ると、そこには蓮がいた。



「優美!!もういいだろ?」



「うるさい!蓮には関係ないだろうが!!」


優美は蓮の手を振りほどこうとしたが、出来なかった。

彼女は驚いた。初めて蓮に力負けしていた。




「さぁ、優美。今日はもう帰ろう。部活も今日くらいはいいだろ??」



そういって蓮は優美をおこし、先に校門に向かわせた。


それから蓮は地面に倒れ込んだ三好をみた。



「次に優美を泣かせたら……

今度は俺がボコボコにしますから、先輩。」




そういって蓮はその場をさった。


二人がいなくなると、三好は余りの恐怖に漏らしてしまった。







・・・・・・


ところかわり、とある喫茶店。

優美と蓮は二人でコーヒーを飲んでいた。



優美も蓮もここに来てからなにも口にしない。



最初に話し出したのは蓮だった。



「あの先輩の前の彼女、俺の友達の先輩なんだけどさ。

その人がいうには、三好先輩は普段は優しく振る舞ってるけど、周りに誰もいないと平気でヒドイこというようなやつだったらしい。

だからその前の彼女さんは別れたらしい。」


優美は何も返事をしない、聞いてるのか聞いていないかも定かではない。



「だからな、俺が言いたいのはだな……あの先輩のいったこと、気にするなってことだ。」



やはり返事はない、彼女はただコーヒーを見つめている。



「……優美?大丈夫か?」



蓮が心配していると、優美が小さな声でつぶやき出した。

その時の優美は、普段の彼女からは想像できないくらいに弱っていた。


「……私ね、強いの、バカにされちゃった。」



蓮ははっとした。

彼はどうして彼女が強くなろうとしたかを知っていた。だから何も言えなかった。



「ねぇ、私、間違ってないんだよね?

これで……いいんだよね??」




涙を零す彼女にハンカチを差し延べるしか蓮には出来なかった。






・・・・・・


次の日、優美は学校に来なかった。



「あいつ……」



蓮は隣の席を見ながらため息をつくのだった。




・・・・・・・


その日優美は河原でずっと寝そべっていた。

空を見上げるように。


そして呟く。



「お母さん、これで……よかったんだよね?」


優美は目を閉じ、遥か昔のことを思い出した。







・・・・・・


優美のお母さんはとても優しい人だった。


小さい頃、からだが弱く、内気気味だった優美のそばには、いつでもお母さんがついていた。


いつもそばで、笑ってくれた。



でも優美は知っていた。

お母さんがいつも辛い目にあっていることを。

お父さんは優美が生まれてすぐにどこかへいったらしい。そのかわりに怖そうな大人達がよくやって来た。幼い優美にも『しゃっきん』という言葉の意味は何となくわかっていた。


優美は知っていた。

優美が寝たあと、お母さんが一人で一生懸命仕事をしていたことを。

毎晩泣きながら仕事をしていたことを。




優美はそれに気付かないフリをした。

そのかわり、お母さんといるときはとびきりの笑顔でいるよう心掛けた。

それに答えるようにお母さんは笑ってくれた。



優美にとって、それが何よりもうれしかった。




しかし、怖い大人達が家に来なくなって半年くらいしたときにお母さんは倒れた。




優美は毎日病院にかよった。

お母さんはいつでも笑っていたが、日に日にやつれていくのを優美は感じていた。




ある時、優美が病院にいくと、お母さんの周りに数人の医者がいた。それにお母さんの口に付いていたマスクも無くなっていた。


幼い優美にも、これが何を意味しているのかはわかった。



「あのね、今日は優美に話があるの」



「なぁにお母さん」


優美は泣かないように頑張っていた。

お母さんの言葉をちゃんと聞くために。




「あのね……お母さんはね、とっても弱い人間だった。」


「え?」

優美は少し戸惑った。

そんなことはない、私は知ってるよ?お母さんが一生懸命働いてたことも。お母さんが一人でがんばってたことも。



「お母さんね、弱いから何も出来なかった。優美のそばにも、あんまりいてやれなかった……」



違う!!!

お母さんは…



「だからね、優美にはそんなになってほしくないの。」



「お母さん!!そんなこといわないで!


お母さんは強いから!!

私、お母さんが頑張ってたの知ってるから!

誰よりも強いの、知ってるから……」


優美が泣きじゃくっていると、お母さんはそっと優美の頭を撫でた。




「……ありがとう。」


「お母さん……」

お母さんが涙で霞んで見える。

もう、消えてしまいそうだ。



「優美、最後に一つ、約束してくれる??」



「……なぁに?」


優美は涙を拭ってお母さんを見つめた。


最後にはっきりとお母さんを見るために。




「あのね、優美……


強い子になりなさい。」



「つよい……こ?」

優美は聞き返す。



「そう、強い子。」

お母さんはニッコリ笑った。


「どんなことがあっても、負けないくらい強い子になりなさい。


約束。」



そういってお母さんは小指を立てて優美に差し出した。



「……うん!!強くなる!!約束!!」

優美も答えるように小指を差し出した。




「指切りげんまん!嘘ついたら針千本のーます!指切った!」


そして親子共々ニッコリ笑った。




約束して数分後、お母さんは天国ヘ旅立ったのだった。







・・・・・・・


目を開けると、もうすっかり日も沈んでいた。


優美はもう一度空を見た。いくらか星が見えた。



「お母さん、私……強い子になった……よね??」



それから優美は体をおこし、家にかえるのだった。







・・・・・・・


夢を見ていた。



優美は真っ白な空間にいた。

そこには一つ、扉があった。




『桜井幸江』




優美はこの名前を知っていた。


お母さんの名前だ。




優美がそーっと扉をあけると、向かい側で椅子に座って窓の外を眺めている女性が目に入った。



「お母さん!!」



優美が呼ぶと、お母さんはそちらを向きニッコリと笑った。

優美はお母さんに飛び付いた。



「お母さん!!お母さん!!」



「はいはい、優美は相変わらず甘えん坊ね。」


そういってお母さんは優美の頭をなでる。



この温かい手の感触を優美はずっと覚えていたし、ずっと求めていた。




「お母さんね、いつもここからあなたのことを眺めていたのよ、

優美、頑張ってるみたいね」


「うん!頑張ってるよ!!」

優美は笑顔で答えた。小さい頃と同じように。




「……そーいえば優美、最近、フラれたんだってね?」

お母さんは思い出したようにいった。


「あ、うん……まぁね。」


優美は曖昧な感じで答えた。


それをみてお母さんはクスリと笑う。

「でもあの男はクズよ、付き合わないで正解だから!」


「うん!あんなのクズだったよ!」


それを聞いてお母さんは一安心する。


「優美、あなたにはいい男が案外近くにいるんからね」


「ヘ?そんな人がいるの!?」


優美はびっくりしていた。対象的にお母さんは軽くため息。


蓮君、あなたってホントにかわいそう。と思うのだった。




それから優美はお母さんに今までのことを話した。


学校でのこと、家でのこと。友達のこととか蓮のことも。


このまま一生ここにいれたら……と優美は思った。




いろいろ話していた時、お母さんが話しをしだした。



「ねぇ優美、私たちが別れる前にした約束、覚えてる??」


「うん!覚えてるよ!


『強い子になる』でしょ?」


優美が笑って答えた。



「そうよ、優美は強くなれた??」



お母さんの言葉に優美は一瞬詰まった。


正直いって、果たして自分は強くなったか疑問だったからだ。




「あのねお母さん……

私、空手とかやって努力したんだけど……


強く……なれたのかな?」


優美の言葉を聞いて、お母さんは少し肩を落とした。


それから小さくため息。



優美はそれをみて少し凹んだ。やはり私はまだ弱かったのだ。そう感じていた。



しかしお母さんは優美の考えとは別の点にへこんでいたのだった。



「はぁ、やっぱりか……




あのね優美、あなたは意味をとらえ間違えてるわよ。」



「え?」

優美は困った。そんな、お母さんは強くなれといった、だからたくさん体を鍛えて……



「あのね、お母さんがいいたかったのは、『心』の強い女の子になりなさいってことなの。」



「……あっ!」


優美は唖然とした。そうだ、冷静に考えればあの場面であの台詞はどう考えてもその意味しかない。幼かったとはいえ、そんな単純なミスをするなんて……。


「私なんて馬鹿なんだろう……」



がっくり肩を落とす優美をお母さんは優しく撫でた。



「……でも、お母さんのためにがんばったんだよね?


ありがとう。」



「お母さん……」

優美は少し泣きそうになった。



それをみてお母さんはいった。


「いい?優美、これからは『体』も『心』も強い女の子になりなさい。


どんなことがあっても、悩んだり悔やんだりしないで一生懸命頑張るのよ……あなたは一人じゃない。私がいつでもいるんだから……」



「お母さん……」


思わず涙が溢れた。

お母さんはそれを優しく拭った。



「ほらほら、泣かないのよ?



あなたは桜井優美。

優しくて、美しくて、それでもって強い女の子なんだから!!」



それを聞いた瞬間、優美はすごい勇気をもらった気がした。



私は、こんなにステキなお母さんから、こんなにステキな名前をもらったんだ。


私は、優しくて美しくて、強い女の子なんだ。




「ま、強すぎだけどねっ!」


「……もうっ!そこはいわないでいいでしょ!」


優美もお母さんも思わず笑ってしまった。




「……さぁて、いいたいことも言えたし。


優美、そろそろ行きなさい。

もう向こうは6時だから。」



「……えっ!まだいいよ!

8時にに起きてダッシュでいけば間に合うからさぁ!」


優美はもっとここに居たかった。


お母さんはそんな優美の顔に手をあて、優しく微笑んだ。



「優美。あなたは強いけど、女の子なんだから。


身嗜みくらい、しっかりしないと!」



優美はそれを聞いてはっとした。


そうよ、私はお母さんの子なんだから、みっともない真似なんて出来ない。



優美は立ち上がった。



「お母さん、ありがとう。


私、いってくる。」



「うん、いってらっしゃい。」




優美が扉に向かっていると、何を思い出したのか、いきなり振り返りお母さんの元へ駆け付けた。



「お母さん!!ずっといいたかったことがあるんだ!!」


そういって彼女はとびきりの笑顔で笑った。



プリンを食べてるときよりも、マンガを読んでるときよりも、好きな人を思い描くときよりも、ずっとずっと幸せそうな笑顔で。




「お母さん!!


私のお母さんでありがとう!!」




そういって優美はドアに向かって走った。


絶対に振り返らなかった。



何故なら彼女は優しくて、美しくて、それでもって強い女の子。




涙なんて、見せれないから。







・・・・・・


時計を見ると確かに6時だった。

起きてしまったのは少し残念だが、優美の心の中は希望でいっぱいだった。


「……さぁ、寝癖直さなくちゃっ!!」



そういって洗面台に向かった。









・・・・・・


「……あれ?起きとったんか??」


目を擦りながらおばあちゃんが洗面台にやって来た。

優美が振り向くと、おばあちゃんは目を見開いて驚いた。


寝癖を直してかわいらしい髪止めを付けただけなのに、優美はものすごく綺麗に見えた。




「あ、おはようおばあちゃん!!


どう?私も女の子だからさ、少しオシャレしてみちゃった!」



「……素敵よ。ホントに」


「ホント〜!?うれしいなぁ!!」


そういって優美はニッコリ笑った。




「……さぁて、朝ごはん準備しなくちゃね」


おばあちゃんは慌ててキッチンにむかい、袖を濡らしながらつぶやくのだった。



「あの子、ホントに幸江そっくりになったねぇ……」







・・・・・・



「オハヨー……!?」


蓮が教室に入って来た時、自分の席の隣に美少女がいることに気付いた。



それはいつもはこの時間にいないはずのない人間だった。




「よぅ蓮!!おはよう!!」


「……」

蓮は対応に困った。

口調は変わっていない。でも、今日の優美はずっと綺麗なのだ。(普段から蓮にとってはかわいいのだが。)


そんな蓮をみて優美がニマニマ笑う。

「……はは〜ん、さては蓮、私のあまりの美しさに見とれてしまったのか!?」



「なっ……!?」


図星だった。



蓮は慌てて言い返した。


「なっ、何言ってんだ!


少しオシャレしたからってかわいくなると思うなよ!この暴力女!!」


「なっ、なにー!?

蓮、おまえをぶっ飛ばす!!」


「その台詞、そっくりそのまま返してやるぜ!」




「バカ蓮!!」


「アホ優美!!」




ボコボコボコ……




「ギッ、ギブッ!!!



おまえ……強すぎっ!」




こうしていつものように二人はじゃれあうのでした。










とある田舎町。



桜井優美という女の子がいました。




その女の子は




優しくて、美しくて、それでもって強い女の子でした。




(おしまい)

読んでいただきありがとうございました!!個人的になかなかの出来と思ったのですが……どうだったでしょうか??ホントは連載でやろうかなんて思ってたんですが、一先ず短編で書いちゃいました。もしこの作品の連載読みたい!って人がいたら教えてください!すぐにします笑 それでは、また次の作品もよろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ