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俺とクマの異世界生活  作者: TATA
5/32

クマ5:騙された?勘違いと憧れと

 翌朝


「頭痛いよー、気持ち悪いよー、ベア先生魔法でなんとかならないか?」

『開口一番それクマ? 情けないクマ。もしかして夜のこと覚えてないクマ?』


 朝からベアのお説教は聞きたくない。覚えているのは村長に酒を勧められて、思いの外美味かったので飲み過ぎてしまい酔いつぶれてしまったんだな。あとはベットに横になってすぐに夢の世界だ。


「そういえば水があったよな」


 ベッドから起き上がろうと手をつくと左手に柔らかい感触が……恐る恐る手元を見ると裸のエーテルさんが恥ずかしそうにこちらを見ている。この姿でポニーテールは破壊力がありすぎる。理性を保つためとりあえず不可抗力ということでもう少し揉んでみるが人肌の温もりと確かな弾力が帰ってくる。エーテルさんも徐々に顔を赤くしているので夢ではなさそうだ。


『夢じゃないクマ、現実クマ』

「とりあえず悲鳴でも上げてみるか?」

『その必要はないクマ。やはり覚えてないクマ、自分の格好もよく見るクマ』


 言われて自分に目を向けるが何故か服を着ていない。


「えーと、どういうことでしょうか?」

『覚えてないクマ? それはよくないクマ、責任を取るクマよ。はっきり言ってユウキは変態クマ。一緒に旅するパートナーとして僕は恥ずかしいクマ、鬼畜の所業クマ』


 ベアに言われて自分の行動を思い返すがまったくもって記憶がない。エーテルさんは無言のまま抱きついてくるのでまさか本当に一線を超えてしまったのか?

 冷静に考えろ俺。何か見落としがあるはずだ。



「……謎は解けたぞ。まずベア、お前がそこまで言うなら何故止めない。そもそも鬼畜の所業だと? 俺が酔った勢いでエーテルさんに襲いかかっているのを黙って見ていたのならお前の方が変態だろうが」

『ギクッ』

「今ギクッて言っただろ。聞こえたぞ。それに俺が無理やり襲ってたなら抵抗の一つもするだろう。それなのにこの髪を見てみろ乱れた跡がまったくないぞ。それに普通は寝るときに髪を解くだろうが。まだあるぞ、俺の服が綺麗に畳まれている。誰が畳んだんだ? 一部始終を見ていたベアさんお答えいただけますかね?」


 どうだ、見事なまでの名推理だろ。


『くっ、僕の負けクマ。エーテルちゃんごめんクマ。恥ずかしい思いをさせたクマ』

「……」


 黙ったまま首を横に振り俯いてしまった。


 あれ? やっぱり俺ってば悪役になってないか?


『すまないクマ、流石に昨日の話を聞いたらなんとかしてあげたくなったクマ。とりあえず服を着るクマ』


 いかん素っ裸だった。流石に恥ずかしいので隠しながら服を着る。決して朝だから元気になっていて恥ずかしいとかではないぞ。


「それでどう言うことだ?」


 二日酔いでガンガンする頭を抑えて水を飲みながらベアの話を聴くことになった。エーテルさんも恥ずかしそうにちょこんと座っている。


『まずはじめにこれは僕と村長の計画クマ』

「な、なんだってー!! はい続きをどうぞ」

『わざとらしい驚きはやめるクマ。エーテルさんが働きに行くのは娼館だったクマ。村長さんもできればやめさせたかったけど他にあてがなかったクマ。そこで僕が冒険者になるように勧めたクマ』


 話がぶっ飛びすぎてるぞ。その流れがわからない。


『でもエーテルちゃんは普通の女の子クマ、魔法が使えるわけでもなく、剣や弓が得意なわけでもないクマ』

「そうだろうな、それで俺との既成事実を捏造して責任を取って旅に連れ出せとかありきたりなことを言い出したんじゃないだろうな?」


 ベアとエーテルさんの沈黙が全てを肯定する。


「え? まさか本当にそうなの? 」

『……』


 計画の責任者は誰だ? 村長か? ベアか? 適当すぎるだろう。


「あの、ユウキ様。もしお嫌でなければ私なんでもします。夜のお相手も精一杯努めさせていただきます。ですのでどうか私も連れて行ってください」


 いやそこまで言われると悪い気はしないのですが……


「それで本音はなんだ? 嘘をつくと魔法ですぐにバレるぞ」

「……魔導士様なら将来有望ですしお金にも困らないかと。多少の贅沢くらいなら許してもらえるかなーなんて、あと修行で私も魔法が使えるようになれば儲けものです。それに娼館で知らない男の人にいいようにされるくらいならユウキ様の愛人にしていただいた方が幸せです」


 まだ17の女の子だと軽く考えていたが俺が甘かった。おそるべし女性の本音。


『なんだか同情した僕が情けなく思えてきたクマ。それで嘘は言っていたクマ?」

「いや、魔法で嘘がバレるなんて実際できるのか? 口からでまかせで言っただけだがエーテルさんの本音はきっとあってるんじゃないか?」

「えー、嘘だったんですか? でも本当のことは話しましたよ。それで私も連れて行ってもらえますか? 私でよければ愛人でもなんでもなりますよ。あっそれと自暴自棄になって誰でもいいってわけじゃないですからね」


 もう少し夢のある話をしてくれてもいいのにと思ってしまった。


「まあこの辺りの地理なんかもよくわからないから危険に飛び込む覚悟があるならついておいでよ。ベアもいいだろ?」

『僕も構わないクマ』

「やった、ありがとうございます」


 よほど嬉しかったのか抱きつかれてキスまでされてしまった。



 朝食の席で事の成り行きを村長さんに話したが特に驚かれることもなく「良かったな」の一言で片付いてしまった。よく考えれば村長とベアの計画だったので当然といえば当然か。



 急ぐ旅ではないが早いところ大きな街に行って生活の基盤を作りたい。まずは一文無しの状態から抜け出すのが先だがなんとかなるだろう。

 エーテルさんも長年過ごした村を出るにあたって、お世話になった人たちとの別れを惜しんでいる。ふりをしているだけかもしれない。

 一応村娘スタイルから冒険者っぽく見える格好に着替えたみたいだけど別人に見えるのは気のせいだろうか?

 村人たちからは意外にも人気があったようで餞別にと色々ともらっているようだ。俺に至っては無理やりエーテルさんを連れ出す悪党との認識が芽生えたらしく、石を投げつけられながら泥棒呼ばわりされる始末である。非常に腹立たしい出発になってしまった。


『ユウキ、なんだか悪役になっているクマ』

「昨日は魔導士様ーとか言ってたのにひどい扱いだよな」

「仕方ないですよ。でも私、思っていたよりも人気者だったんですね。多少の自覚はありましたが」


 そのコメントは若干ムカつく。


 俺たちはエーテルさんの事情を知っている人には暖かく、それ以外の人には恨まれつつ見送られ村を後にした。


 しばらく歩き村が見えなくなったあたりで一度休憩を入れることにした。疲れたわけではないがこれからの方針を確認するためだ。


「それじゃあエーテルさん、近くの街のことを教えてもらえますか?」

「ユウキ様、エーテルと呼び捨てで構いませんよ」

「それなら俺も様は無しにしてくれ」

「わかりました。えーと街ですよね。1番近くの街がジー二と言います。あっ、ちなみにあの村はモーノ村です。どうでもいいですね」


 自分が育った村だろうが。愛着くらいないんか?


「徒歩ですとほぼ1日かかります。明るいうちに着くのは難しいですね」

「意外と遠いな。中継地点はあるのか?」


 まあ、よほどのことがなければ歩いて移動をしないのだろうな。そのよほどのことをしているパーティーがここにいるわけだが。


「中継地はございません。今日中に着かなければ野宿決定です。普通は馬車などで移動しますので何かトラブルが起きるかもしれません。ワクワクしませんか?」

「ワクワクしません。それよりエーテルは野宿とか平気なのか?」

「焚き火を囲んで、干し肉と焼き締めたパンをかじるなんて楽しそうだと思いませんか? 実は冒険者になるのに少しだけ憧れがあったんですよ。夜中に魔獣の襲撃で目が覚めてあっさり迎撃とかかっこよくないですか?」


 世の中そんなに甘くないと思うぞ。まあ形はどうあれ自分の将来に憧れや希望があるのはいい事だが。


「ユウキさんは今までどうしていたんですか?」

『僕たちは気がついたら草原にいたクマ。だから野営とかの経験もないクマ』


 ベアの一言で「そんなー、聞いてませんよー」とか言われるのかと思ったが予想外に冷静だ。


「大丈夫ですよ。火を起こしたりとか村では普通にやっていましたし、冒険者の方が来た時に色々と教えてもらいましたのでお任せくださいね」


 これは俺たちが来なくても村をこっそり出る準備をしていたのではないだろうか? 大きめのリュックを背負っているが今朝出立を決めたにしては準備がよすぎる。


「それより村にいた時と雰囲気が変わった気がするのは気のせいか?」

『僕もそれは思ったクマ』

「もともとこんな感じですよ。可愛く見えます? お客さんが来た時は変に声をかけられたくないので冴えない田舎娘を演じていましたが……素朴な感じでよくなかったですか? あっ、もしかしてユウキさんはおとなしい娘の方が好みでしたか?」


 そう言ってすかさず腕を絡めて密着してくる。すみませんあまり免疫がないものでどう答えていいかわかりません。


「照れなくてもいいですよ。裸を見られたのも、胸を触られたのもユウキさんだけですから。もちろん今朝のキスだって初めてだったんですよ。えへへへ」


 ごめんなさい。美人がいない村だと言いましたが可愛い娘はいました。


『イチャイチャするのは構わないクマ。でも僕がいるのを忘れたらいけないクマ。見ているこっちが恥ずかしいクマ。ところでユウキは気がついているクマ? 周りをよく見るクマ』


 ベアに言われて周りを見るが所々にポツンと立っている木と整備されているとは言い難い街道。街道から少し外れれば草むらがあるだけだ。腰の高さくらいまであるから入って行きたくはないな。空も晴天で特に鳥などが飛んでいる様子もない。


「別に普通じゃないか?」

『探査をマメに行う習慣をつけるクマ! 村からついてきている奴がいるクマ』


 慌てて周囲の探査を行うと草むらの中に人の反応を感じる。これはいかんな、野盗なんかだったら大変な事になるところだった。


「ベア、ありがとう。エーテルごめん、油断していた」

「ベアさんすごいですね」

『今は休憩中だからもう少ししたら行動を起こすクマ』


 しかしなんでまた俺らの後をついて来たんだ? まさか村を出たい人2号か?


「もしかして私のファンですかね? ユウキさんしっかり守ってくださいよ」

「何故そうなる。面倒にならないようフッてとどめを刺してこいよ」


 もう一度探査を行ったが人数は一人で間違いない。それでは行動を起こしましょうか。


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