表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒーローやってたけど、悪の組織に寝返えってみたら天職でした!  作者: 9
宿敵は魔法少女!?~魔法戦争開演~
73/79

第50話:破滅が時

 痛い、痛い、痛い

 攻撃を受けてわかった。この身体は無痛でもなんでもないのだ。ただ衝撃に強いだけ、痛みを普通に感じる。それだけではない、食いしばる歯がないのだ。急所を守る腕もない。

 ただ攻撃にさらされて、ただ過ぎて行く時間のなかで死神が鎌をもって、俺を手招きしているこが分かった。


 こんな終わりとは思わなかった。

 もう少しまともな負け方で死にたかった。でも、ヒーローなんてこんなものか、誰も自分の死に場所を選べないのだ。だって、世界は残酷に出来ているからな。

 目標をもって生き始めたのに、これじゃ……


「何やってんだよ」


 そんな声とともに魔力が断ち切られる。

 誰だ?

 この高濃度の魔力の一撃を断ち切るなんて、新次郎か?


「大丈夫、ヤス君?」


 アルル!?


「だいぶ、苦戦しているみたいだな」


 ベル!!


「何でって顔しているから、言わせてもらうけど、後方待機させたのはお前だろ? そのお前がやられたのを見えたから助けに来たんだ」


 確かに、イレギュラーが起きたときように待機させていたが早すぎる。それに、2人が勝てる相手ではないぞ。俺はこんなだしどうしたら


 チャームリンクに再び炎が灯った。

 連発できるのか?

 その事実に驚愕しながらも、さらに身体が壊れていく彼女を見た。


 逃げろ。そう叫んだが聞こえない。俺に声を発する口は無いのだ。

 どうして……どうして俺は今無力なんだ?


「変身!」


 ???


 何が起きたんだ。予想外のことが起きた。

 何をしたんだ? あの魔力がまた消えた。

 変わったのだ? 


 禍々しい悪魔の力とは違う。そこにいたのは、白い龍人とでも呼べばよいのだろうか……そう呼ぶできものだ。一度対峙したから龍の圧倒的な力を肌で感じる。

 間違いない。神々しさすらかんじる畏怖。


「大丈夫」


 アルルが俺のことを強く抱きしめながら語る。


「私たちは、ヤス君に守られるだけじゃないよ」

「泰裕……失敗したみたいだな」


 そう聞いてきたベルには頼もしさを感じた。

 明らかに変わっている。変身系のスキルだろうか?


「私たちもローリーちゃんの改造手術を受けたの……だから、強くなったんだよ」


 そう言って、アルルが俺を優しく地面に下ろすと、手を伸ばすとその腕が蛇のように唸って伸びた。

 それを嫌そうに黒色魔法少女がガードするが、その魔法の一撃を唸る蛇が食い尽くす。


「無駄だよ」

「お前の負けだ」


 そう言って、俺は2人の頼もしい背中を見ていた。

 何だろうな、この感情は……恐怖している。どうしてだ?

 身体が震える。どうしてだ?


 ベルは強い。アルルも強い。圧倒している。

 それでも身体全体が震えるのは何故だ。


 ベルの一撃に、黒色魔法少女は膝を折った。決まった。もう相手は立ち上がる気力すらないのだ。

 チャームリンクの炎が一際強く輝いた。黒色魔法少女の身体がひび割れていく。


 俺は本能で感じた。

 ねっとりとした嫌な空気。背筋を舐められたようなこの感覚。


 ベル!

 早くやれ。間に合わなくなるぞ。


 ヤバいと気づいたベルがとどめの一撃を加えようと踏み込んだ。しかし、それでは遅い。

 炎が収縮していく。広がった炎はただ一点に集まっていく。

 それを黒色魔法少女の身体すらも呑み込んで、はじけ飛んだ。


 黒い蝶が舞っている。

 地の底から湧き出すように黒い蝶が下から舞い上がっているのだ。そこは地面だ。穴何てどこにもない。でもそこから湧き出ているのだ。


 その奥から、1人の少女が歩み出る。

 眼球すら黒く染まった目。それが彼女が人間でないことを示している。

 黒いゴシックのゴスロリ衣装は元々なのだが、それをまた別の少女が着ている。どこからだしたかわからない長い傘を持っていた。

青い白い肌の少女。長い爪の少女、黒い尻尾の少女。人間ではないのだ。彼女を表す人間との差異はたくさんあった。


「ごきげんよう、塵芥ども」


 少女は優しく微笑みながら、そう挨拶した。


「…………」


 俺たちは固まっていた。生まれて始めてみた悪魔と言う存在に目を奪われていたのだ。何だ、この感情は、あれは人間よりも遥かに上位の存在だ。

 格の違いが分かるから、動けない。


「挨拶くらいしなさい」


 少女は持っていた傘で、隣にいたベルの脇腹を突く。そうすると黒い炎の爆発が起きて、ベルが吹っ飛んでいく。


「貴方たちは、魔界の貴族の前にいるのですよ」


 魔界?

 貴族?


 現代では聞きなれない言葉だ。魔王の時代の言葉だからだ。貴族制は英雄が撤廃した。


「ベル君」


 気づくとアルルが立ち上がっている。

 駄目だ。止めないといけない。でも今の俺は軟体生物だ。何もできない。手を伸ばすことすら俺にはでいないのだ。


「どうされたのお嬢さん。醜い顔をさらに醜くして、私の前では嬉しくなくても笑いなさい」

「私が笑うのは、仲間の前だけだよ」


 そう言って、アルルが駆け出していく。2本の手が伸びた。


「蛇は好きよ。でもおいたは駄目ね」


 アルルの腕は悪魔に届く瞬間。悪魔は持っていた傘を開く。そうすると傘から炎が渦のように吐き出された。

 アルルの腕が一瞬で灰になる。


「あああああああ」

「駄目って言ったのに、おいたしたから」

「アルル」


 それを見て、ベルが立ち上がろうとする。

 しかし、その頭を踏みつぶされた。


「私の前では、その頭の位置が正しいの。貴方たちは塵芥……人間なんだもの」

「だれが……」


 ベルが全身の筋肉に力を込めているのが分かった。

 でも、上がらないのだ。

 どんな力で踏みつぶしているか分からない。でも頭は上がっていなかった。


「くっ」


 頭を踏まれたベルの身体には火が付いた。燃えている。

 俺はその時、灰の臭いを感じた気がした。臭いなんて感じるわけがないのに、何故かそんな気がしたのだ。


 思い出すのは、あの日だ。

 今も鮮明に覚えている。あの日、俺の仲間は生きたまま燃やされたのだ。灰になった日だ。供養もしてやれなかった。何も残っていなかったのだ。


 何をやっているんだ俺は?

 こんどは仲間が目の前で燃やされているのに、お前はまた何も出来ないままなのか?


 止めろ。変身するな。

 誰かがそう叫んだ。

 うるせえよ。仲間を見殺しに何て出来るかよ。


 軟体生物の身体からベルトが浮き上がってくる。

 変身!

 心の中でそう叫んだ。

 何も起きない?

 一瞬そう思った。しかし、ベルトは俺に応えて眩いばかりの光を放つ。ベルトから触手のようなものが伸びて、軟体生物であるおれの身体に刺さった。


「ベルセルクフォーム」


 激痛とともにそんな電子音が鳴り響いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ