第47話:目覚めの朝
目が覚めると頭が酷く痛かった。
夢の世界に長くい過ぎた後遺症だろう。本来睡眠という行為は脳を休ませるためにあるのだ。しかし、魔王の見せる夢は脳を酷使する。その代わりに彼女は、1時間で普通の睡眠の何十倍の効果を発揮する。クールタイムを設けてくれる。その後遺症がこの頭痛だ。
ああ、頭が痛いなと思って自然と手を頭に伸ばすと普通にそこに髪があって、俺の身体がそこにはあった。
「元に戻ってる?」
元の俺の姿がそこにはあった。
「何だ、別に温泉に入らなくても戻るじゃないか」
夢の中でもう1人の俺が言っていたことを思い出して、そう呟いた。
自分の身体をまじまじと見ていた。別にナルシストだからではない。体中にあった傷が消えていた。一生残ると言われていた古傷も綺麗になくなっている。
それはまるで、俺が俺でない証明のようだった。もう人間ではない。その言葉が重くのしかかった。疎外感を感じた。この人間社会でおれは部外者なのだ。
「なるほどね……こんな気持ちを抱えて生きて来たのか?」
しかし……
「寒いな」
当然と言えば当然。俺は服を着ていなかった。
寒さを感じるなんて人間みたいで変な話少し嬉しかった。俺はこうなったことに後悔はないけれど、それでも、そう思ってしまう俺は確かにいるのだ。
「ううん」
「?」
布団の中には蘭がいた。
考えれば当然と言えば当然だ。魔王が夢を見せてくれるために、俺の寝室まで来てくれていたのだろう。まあ、色々あるけれど何が言いたいかというと、同じベットで男女が一夜をともにしたら誤解されてもしかたないよね。
しかも、男の方は裸何だよな。俺が見ても事後だと思うもん。
着替えよう。そう思った。
ここで手を出さないのは俺の善人な部分だと思う。
「おい、美涼……ま」
「ここからヒロ君の声した」
そんな時である。そんな声が響いてきたのは……
どうして、ここにいるのだろうか? どんな聴力しているんだ?
そんなこと考えている場合ではない。こんなところ見られたら大変だ。俺は冷静に鍵がかかっていることを確認する。
蘭には俺の部屋の合鍵を渡してあるので、入ってこれたのは必然だ。しかし、美涼は俺がここに住んでいることを知らないし、俺が病院に入院していると思っている。何よりも鍵をもっていない。
だから、この現場を抑えられるわけないのだ。
……そんな風に思っていた時期が俺にもありました。
壁がはじけたのだ。
うん、その姿を見たらわかる。殴って壊したなこの子?
あの……最近出番のない銀子さんが後ろでアワアワしているよ。うちの妹はちょっとばかし頭おかしいんです。人間、欠点があるのは仕方ないから俺は目を瞑ってるけどな。
「こんなところで何してるの?」
目が怖い。
「……ヒーローには色々あるんだよ」
「嘘……嘘つかないでよ」
「!」
美鈴の目からは涙があふれていた。
「どうして、ヒーローだったことを黙ってたの?」
「それは……」
「私が心配するから?」
「……そうだ。お前に心配をかけたくなかった。俺はお世辞にも強いヒーローじゃないから」
「なら、どうして、どうして、私には分けてくれないの……迷惑かけても良いんだよ」
そう言って優しく抱きめられた。
俺は今だ裸何だがな。銀子さんから凄い目で睨まれているし……
「あ?」
そんな銀子さんを見ながら、俺も美涼を抱きしめた。
「……頼む。助けてくれ」
そんな言葉が漏れた。それは心の底から洩れた弱音だった。
「はい」
そんな優しい言葉が返ってくる。美しい兄妹の⒈ページ。
「ううん」
「!」
美涼が何か見ているし、銀子さんからも怒りの気を感じる。
「おはようございます」
いたの忘れてたよ。
「どういうこと?」
めっちゃ睨んでる。さっきの良い雰囲気が台無しなんだけど。
「お姉ちゃんね」
誰がお姉ちゃんだ。
「エッチなのは駄目だと思うの」
理不尽な暴力が俺を襲う。俺の身体はスライムのような流動性を発揮することはなく、クの字に曲がって隣の部屋に吹っ飛んでいく。
「元気そうだね、ヤス君」
壁を壊して、隣の部屋に飛んでいくとローリー博士がいた。
「おかげさまで」
「そうかい、なら出て行ってくれないかな」
どうやら、ここは脱衣所だったらしい。半裸のローリー博士がそこにいた。下着姿で非常にエッチである。
あの2人のように、暴力にうったえないらしいのでここは退散しよう。
しかし……
「抜けません」
「!」
壁に身体がめり込んで抜け出せなかった。
ローリー博士が、顔は笑顔のまま……それでもぴくぴくと震えながら近づいてきた。
「良いからさっさと出て行け」
頭をサッカーボールのように蹴られて、壁から脱出できた。
しかし、そこにも修羅場のような女性陣の目線があった。
碌なことないわこれ。
「せめて、服着せて」
*
朝ごはん。
俺は何故か女性陣と離れた場所で取らされた。反省中というボードを首からつるされている。
新次郎だけ女性陣といて、あいつだけハーレムだ。
ヒーローの風上にもおけないやつである。
うちの美涼と楽しそうに食事しやがって、冗談抜きで殺しておけばよかった。冗談抜きで……
「人殺しそうな目してるぞ」
「ベル……」
親友のベルは俺と一緒に食卓を囲んでくれている。新次郎というぼっとでのカスとはやっぱり違う。
「彼は変態プレイにエクスタシーを感じているんですよ」
「そんなわけあるか、ぶっ殺すぞ」
もう1人、ちゃぶ台で一緒にご飯を食べている21にそう言い渡す。
こいつは当然、女性陣と一緒にご飯なんて食べれない。だって変態だもん。
だからこそ、俺のランクがそこまで落ちたことが悲しいのだ。
「ヒーローとは思えないセリで」
「ヒーロー何て、聖人君子なやついは1割もいないくらいだぞ。皆こんなもんだ。変な夢見てんじゃないよ」
「お前、ヒーローモードじゃないと\\本当口悪いよな」
ベルがとなりでそう呟く。まあ、事実である。ヒーローでない時の俺は素が出ているので口が悪い。
「……俺は口は悪いし、運も悪い。問題ごともしょい込むし、この前は死にかけるしで碌でもない人間だよ」
「どうした?」
半笑いでベルが聞いてくる。
「ベル、そんな俺でも手を貸してくれないか?」
「黒色とやるのか?」
「ああ、黒色をぶっ倒して、俺はさらに出世しようと思う。Aランクの悪の組織を立て続けに潰すなって良い実績になるしな」
「……それは救う気はないとそういうことですかな?」
警戒したような、そんな不穏な空気を21が放った。だから、俺はやつにこう言ってやった。
「それは、黒色の態度次第だ。お前も協力しろ。飯食ったら殴り込みに行くぞ」




