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ヒーローやってたけど、悪の組織に寝返えってみたら天職でした!  作者: 9
宿敵は魔法少女!?~魔法戦争開演~
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第27話:刮目してみよ!

 3日が過ぎた。

 魔王との修行はびっくりするくらい上手くいった。あの人は教えるのが本当に上手かった。きっと誰が教えてもこうなれた訳ではないのだろう。

 俺は目の使い方を覚えた。魔法を使えるようになった。自分には多くの可能性があったことを知った。力はもっているだけでは意味はなく、使いこなしてこそ意味を持つことがよく分かった。


 だからこそ言おう、今の俺は強いぞ。


「…………」


 めっちゃメンチ切られている。俺、絡まれてる?

 出会って3秒で絡まれた。この強者特有のオーラーが分からないかね?


「もう一度言ってみろ」


 そうその少女は凄んだ。三白眼というやつか……めっちゃくちゃ目つきが悪い。

 隣で、鳳凰院先輩がハワハワしているし、光に至っては目も合わせようともしないで、いつも読みもしない新聞を読んでいる。助けてくれよ。

 2人がいるということは、察しの通りここは生徒会だ。修行が終わったので、俺は温泉掘りを本格的に進めることにしたのだ。そこに邪魔者が現れた。


「片桐はフェイカーに負けて入院している」


 その不用意な言葉が彼女の逆鱗に触れて、今こういう状況だ。本当のことを伝えると言うのは必ずしも正解ではないという良い例だ。

 

そのせいで、少女は俺の高かった机に片足あげて立っている。


「ありえない。負けたとでも言うのか、それでお前は何だ。本部に報告もせず何をしている」

「俺は温泉を掘るのに忙しいんだ。些末事に関わっている暇は無い」

「……些末事だと?」


 その発言もよほど気に障ったらしい。

 胸倉を掴まれて、持ち上げられた。俺は筋肉質で重いはずなのに軽々と持ち上げるのは流石と言ったところだ。何を隠そう彼女も片桐と同じフェイスなのだ。

 ……本当にヒーローって碌な奴がいない。


 ヒーロー本部から新しいヒーローが派遣されてきたのだ。何も報告してこない片桐の代わりに……片桐の持っていた通信機器は情報の宝庫だと言うことで、ローリー博士がパクったし、俺の息のかかった病院に入院しているので、外部との連絡手段は断たれている。だからこそ、次のヒーローが来るのに時間がかかった。俺にとってはベストタイミングだったがな。人選は最悪だったが……


「仲間がやられたんだぞ。ふざけるなよ」


 ああ、面倒くさい。

 ヒーローってどうしてこうも、面倒くさいやつばかりなのかね?

 もっと良いヒーローに来て欲しかった


「だんまりか……噂以上の無能だな」


 そう言って、俺は地面に叩き落とされた。

 

「……ヒーロー本部から、私はこの支部を監視するように言われてやってきた、フェイスの水島花音だ」


 嵐のような女である。今さら名乗りやがった。


「私はお前から全権限を奪う権利がある。スターズの三ツ星」


 片桐の時もそうだが、ヒーローってのはいきなり現れて、好きなことをほざく。悪の組織よりもたちが悪い。ただ実力で黙らせても駄目なのだ。


「温泉掘れなくなるから、却下だ」

「黙れ、片桐のところに連れていけ、事情を聴く」

「俺は温泉を掘るのに忙しい。却下だ」

「じゃあ、場所を教えろ」

「そしたら、ヒーロー本部にあることないこと報告するんだろ?温泉が掘れなくなるから、却下だ」

「さっきから、温泉、温泉って、お前頭おかしいんじゃないのか?温泉と片桐とどっちが大事なんだ」

「温泉に決まってるだろ」


 片桐なんて、どうなっても良いからな。


「ヒロ」

「泰裕さん」


 そう言って、2人は俺をやっちゃたと言う顔でで見ていた。一発触発だから、心配でもしているのだろう。不要だ。


「使いぱしりのお嬢ちゃんよ。ヒーロー本部のジジイどもに言っといてくれ、ヒーロー三ツ星は、好きなようにやらせてもらう。指図するな。お前みたいなやつは心底迷惑なんだ。二度と寄越すなってな。さあ、とっとと帰れ」

「謝ったほうが良いんじゃないか、ぼこられるぞ」


 光が心配そうに囁く。


「どうして格下に謝らなければいけないんだ」


 光が絶句した。何か悪いものでも食べたかと言っている。

 失礼極まりないが、確かに今までの俺なら謝っていたのも確かだ。


「泰裕さん、わたくしも一緒に謝ってあげますから」


 鳳凰院先輩がお母さんみたいなことを言っている。


「こんなやつに下げるほど、俺の頭は軽くない」


 そんな言葉を踏みつけるようにして、俺はそう言い切った。ここで引いては駄目なのだ。強くなることで、俺には選択肢が増えた。ただ、従順に組織の中にいただけでは、俺は上に行くことは出来ない。だから……

 時に、相手に噛みついてでもその権力を根こそぎ奪い取らないといけない。そうしないと、俺の組織での未来は見えてこないだろう。


「私はフェイスの水島花音だぞ」

「それがどうした、俺はスターズの三ツ星だ」


 誰もしらないだろうな。だからこそ、三ツ星という名前を売らないと行けない。もうそうしう時期に入ったと俺は理解している。そのためには、フェイスくらいにビビっていてはいけない。

 フェイカーとしてしか、片桐の前に立ちふさがれなかった悔しさを忘れてはいけない。どんな事態にも揺るがない自分でいないといけない。そうでなければ、今回は誰も救うことなんてできないだろう。敵は強大過ぎるのだ。


 Aランクの悪の組織、ヒーロー本部からの妨害、そして温泉。

 この3つ全部に勝たなければならない。それは難しいことだ。

 だけど、勝つための方法を俺はもう知っている。力をどう使うか次第なのだ。


 水島花音は、全く動じることのない俺に対して、動揺しているのが見て取れた。

 それもそうだ。片桐もそうだが、水島花音も有名人である。若手のホープだ。皆の憧れと言ったところだろう。それに対して、俺は名前も売れていない、スターズと言う名ばかりの窓際族ヒーローだ。スターロードに喧嘩売れる身分ではない。


「なあ、賭けをしないか?」


 俺はそう切り出した。


「賭けだと?」

「そうだ」

「断る。お前には賭けるものなんてないだろ?私はお前を締め上げて、何でも奪っていける」


 ヒーローとは思えない発言である。


「馬鹿だな。俺の方が強いって言ってるんだよ」

「調子に乗るなよクソガキ、お前のほうが、常に前線で戦っている私よりも強いだと。父親がどれだけ有名人だろうと、お前はたかがスターズの七光りだ」


 その言葉に、光が少しむっとしたのが分かった。

 

「前線で頑張っていれば偉いのか?俺達だって、命がけでヒーローやっているんだ。舐めんじゃねえよ。ド三流が」

「今日の泰裕さん、やけに強気じゃないですか?」

「たぶん、星占いで1位だったんだ」


 2人がひそひそ話を始めたが、全部聞こえている。

 

「星占いで一位だったのか?」

「違うわい。あいつらは無視してくれ」


 この2人がいては、締まらないな本当。

 でも、そっちの方が俺らしいか……挑発するだけしたし、もう十分だろう。引き下がれない状況を作った。ここからは俺らしく行こう。ごり押しさせてもらうぞ。


「片桐と君には、俺の指揮下に入って欲しい。だから、俺と戦って負けたら俺の指揮下に入れ」

「何を言っている?馬鹿なのか?」

「俺はコレクターズと全面戦争する。そのための力になって欲しい」

「話を聞け……全面戦争だと?この街を戦場にする気か?」

「聞いてないんですが?」

「命がいくつあっても足りないぞ」

 

 二人が慌ててそんなことを言っている。


「認められないな」

「そうです。考え直してください」

「相手が悪い」

「うるさい。ヒーローが悪の組織を前にして、逃げるわけにはいかないんだよ」


 そう言いきるとともに、勢いよく生徒会のドアが開いた。


「グッドモーニング」


 現れたのはローリー博士と……もう一人、片桐だった。

 ローリー博士が連れてきたのだろう。どや顔をしている。その顔に、俺も笑顔で返した。好都合である。


「面白い話をしているじゃないか、ヤス君」

「ええ。話を聞いてたか、片桐?」

「不可能だ。コレクターズはほぼSランクと変わらない。Sランクには上限があるから、指定されないだけだ」


 良い所から聞いてるじゃないか。


 大人の事情でSランクを増やすことが出来ない。Sランクとは、ヒーロー本部の最高戦力をぶつけないといけないと認めた相手と言うことだ。これが多いということは、ヒーロー本部がいかに劣勢にいるか、世間に宣言しているようなものである。だからこそ、簡単に指定できないのだ。そのせいで、Aランクどまりで、放置されているというふざけた構図が出来上がる。

 トップヒーローが出動できるようになるまで、徹底的に無視されるのだ。あり得ないことに、その時間を稼ぐために、生贄を用意するのもやむなしという。


「だから何もしないのか?人々を見捨てて見ないふりをするのか?それでもお前、ヒーローかよ」

「お前も、フェイカーと戦わないじゃないか?ミステイクは?偉そうなことを言うな」


 それは心からの悲痛な叫びだった。剣を合わせたから分かる。お前も辛いんだろ。それが分かるから、俺は……


「そいつらもいつか俺が潰すさ」


 その言葉に、ローリー博士が悪い顔をしている。だが、如何せん、嬉しそうだ。


「だが、目下の敵はコレクターズだ。この六人でやる」


 悪の組織の人間が二人に、逃げ腰のヒーロー四人。何て面子だ。


「片桐、この大口を叩く男は強いのか?」

「水島か……来てくれたんだな」

「……お前のピンチだからな」


 俺の時とは違い、水島花音は潮らしい。

 

「弱いよ。私の前に立ちふさがることも出来ない男だ。その癖、卑怯な手ばかり使う嘘つきだ」


 この前のことを言っているんだろう。正確には立ちふさがったが、それはフェイカーとしての俺で、ヒーローの俺ではなかったな。


「男子3日合わざれば刮目してみよ、だ」


 ローリー博士の方を見ると嬉しそうに微笑んでいた。

 あれから3日、俺がどれだけ強くなったのか、見せる日が来た。コレクターズに勝つために、俺は黒色魔法少女をターゲットに、修行してきた。


「あの日の俺は弱かった。だが、今の俺は違う。勝負しろよ、片桐、お前に教えてやる。何度でも、何度でも立ち上がって、前を向いて進んでいければ、人は強くなれるってな」

「片桐が怪我しているから、勝てるとでも思って……」

「水島、黙れ」


 片桐が水島を制する。


「前言撤回するよ。お前、変わったな。強くなったのが分かる」

「お前もな」


 どうしてだろう。あの時よりも、目の前の片桐がでかく見える。

 成長したのは、俺だけではないのかもしれない。だけど……引くことは出来ない。壁を壊すぞ。味方を作るぞ。そうすることでしか、開けない未来がある。そのために、俺は強くなった。


「「勝負だ!」」


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