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ヒーローやってたけど、悪の組織に寝返えってみたら天職でした!  作者: 9
宿敵は魔法少女!?~魔法戦争開演~
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第25話:青田泰裕育成計画

「そこからどけ」


 片手で身体を持ち上げられたのが、分かった。

 このいつもの感じ……いつもここから投げ飛ばされていたっけな。

 俺のライフはゼロだ……今、投げ飛ばされたら、死ぬぞ。


「銀子ちゃん」


  冷ややかな声が響いた。


「何してるの?」

「美涼……いや、これはだな……」

「ぐへ」


 地面に落とされた。


「あの人が持ち上げられてきて、私って、箸よりも重いものもてないでしょ。か弱い女の子だから」


 持ち上げられてきてって何だよ。どうやって、自主的に持ち上げられるんだ。そんなこと出来たら、俺、エスパーじゃん。

 あと、あんたは毎日200キロのダンベルを片手で持ち上げてるだろ。その箸は、一本200キロくらいあるのか?それとも橋の話をしているのか?最後に、か弱い女の子は無理あるだろ。現実見ろ。


「ヒロ君、そうなの?」


 いや、聞くまでもないだろ。しかし、その時、俺に電流が走る。

 銀子さん、めっちゃ睨んでる。こわ……ここで違うとか言ったら俺が後で半殺しになるな。

全て察したおれは言葉を探した。


 思い出せ俺、俺は人生の苦難に立たされても、全て言い逃れてきた男じゃないか。

 美鈴に嫌われず、かつ俺が殴られない方法がきっとあるはずだ。


「…………」


 早く来てくれ、ローリー博士。

 助けてください。お願いします。テレパシーでもなんでも感知して助けてよ。


「いや、泰裕は悪くないだろ」

「蘭……クイーン?」


 いつの間にか、蘭の意識が魔王に変わっているようだった。


「お前……急に出てきて」

「何だ?文句でもあるのか?私と泰裕の会話に入ってくるなよ」


 2人が睨み合っている。俺達兄妹はそれを戦慄しながら見ているしかなかった。

 頼むから、美涼にだけは怪我させないでくれよ。

 

「泰裕は私の弟子だぞ」

「え?そうなの、銀子ちゃん?」


 何、カミングアウトしてるんだ。

 後でちゃんと説明できるんだろうな?


「弟子?だから、あんなに弱いのか」

「何?」

「こいつは才能に溢れているのに、弱いのは貴様のせいだと言ってるんだ。余が育てたら、1年以内必ず貴様よりも強くなるぞ」


 やべーよ。銀子さんぶちぎれてるよ。


「女を殴りたいと思ったのは始めてだよ」

「いつもの銀子ちゃんじゃない」


 銀子さんは、さっきから素が出ている。驚くべきことではないのだが、いつもぶりっ子でもしているのだろう。美涼がえらく困惑しているのが見て取れた。


「こいつが、私よりも強くなることなんてない」


 首根っこを掴まれて、銀子さんに後ろから抱きしめられる形になる。何とは言わないが、当たってんですけど……それとも、当ててるんですか?


「こいつには才能がないんだ。どれだけ鍛えても、どれだけ教えても、絶望的に足りないものがあるんだ」

「誰にだって、得意なこと、不得意なことがある。苦手なことを克服させるのではなく、得意なことを伸ばしてやれば、こいつは必ず強くなる」


 そう言って、銀子さんの手の中から無理やり引き離される。そして、また後ろから抱きしめられる形になった。

 当然当たっている。もうこれ当ててるんだろ。間違いないわ。


「こいつはな。才能はあるんだよ。だが、逆に才能が有り過ぎるんだ。有り余る才能は時に天才を凡夫に変える。こいつはまさにその典型だ。何をやらせても一流になるだろう。だが、超一流にはなれない。人が成長するうえで当然のようにすることが出来ないからだ」

「それの何が悪い。それは泰裕の個性だ。それに1部かけていようとも泰裕には強くなるうえで一番大事なものを持っている」

「何だと言うんだ?」

「貴様も言ったではないか、才能だ。こいつには才能がある」


 何か言ってるけど、俺は背中に意識を捕らわれて良く分からなかった。さっきから、いったりきたりしてるからな。背中が火事だよ。

 てか、マジで熱くないか?


「…………」


 美鈴の髪の毛だけがメラメラと燃えていた。直ぐ鎮火したが何やってるんだ?

 正体隠す気があるのか?2人とも気づいていたようだ。銀子さんは驚いて口をパクパクしている。


「ヒロ君は、私が育てたんだから」


 その隙をついて、美涼に奪い取られる。

 2人のお可愛い胸部とはちがう圧倒的重量に押しつぶされた。こいつ、さっき燃えてたから、体温高いし窒息しそうなんだけど。無理やり顔を離す。


「美涼……お前?」


 銀子さんが説明しろという顔で睨んできた。俺の心配もしてくださいよ。

 まあ、おかげでだいぶ落ち着いたようだ。


「因果な運命のようだな」


 魔王も落ち着いたようで、相変わらず意味深なことを言っている。

 誰も言葉にしなかったが、3人の気持ちが一つになっていた。冷静になって話し合おう。共通の目的をもった瞬間だった。


「美涼、4人分の夕飯を用意してくれ」

「いや、まだ話が終わって……」

「お願い、お姉ちゃん」

「しししし、仕方ないわね。お姉ちゃんに任せなさい。腕によりをかけて作るから、待っててね」


 チョロイな。美涼は全てどうでも良くなったようで、台所に消えて行った。


「女泣かせだな」

「後で殺す」

「…………」


 何でだよ?

 理不尽な威圧を受けたが、3人で話し合うことになった。


     *


「魔法少女の運命。温泉が命を救う……ヤス、どうしてそんな大事なことを黙っていた?」


 あんたが寝てたんだろ。


「後、お前が私の彼女の弟とはな」

「彼女?」


 いかに銀子さんでも聞きづてならない言葉に、思わず睨みをきかせてしまう。


「話が進まなくなるだろ。止めろ」

「「…………」」


 魔王の一言に、お互い私怨を捨てて、話をすることにした。

 気持ちは一緒だ。美涼を死なせるわけにはいかない。そのためには温泉を掘らないといけない。そして……


「まだ、あの子はすぐ死ぬようなステージじゃない。それよりも目下の問題は、悪の組織だ」

「悪の組織が魔力を持つものを狙っていると言う話か?私が出て行って壊滅してやれば済む話だ」

「貴様がか?」

「……何だその笑みは、私は強いぞ」

「……コレクターズは俺が潰します」

「ヤス?」


 銀子さんが俺の顔を覗き込んでくる。その顔にはお前では無理だと書いてあるようだった。


「今回は私が出る。お前の役目は終わったんだ。お前は温泉でも掘ってろ」


 銀子さんは、そうは言わないけれど、言葉を選んでくれたけど、でも……


「…………」


 銀子さんが出てくれるなら、楽して勝てるだろう。俺なんかよりもずっと強い。それが賢い選択だ。

 でも、俺の心は何と言ってる。今、心の声を聞き逃したのならば昔と一緒だ。弱いの理由に立ち向かうことを止めたと言うのならば、悪の道を選んだ意味がない。

 賢くて正しい選択をするんじゃなくて、自分が正しいと思ったことを貫かなければ、俺は……


「力を貸して欲しい」

「何?」


 きっと、これがローリー博士が言っていたことなのだろう。俺は1人ではないのだ。

 膝を付いて、手を床に着ける。そして深々と頭を下げた。


 俺に足りなかったのは……

 誰かの力をもっと借りることだ。


 どうして1人で戦ったのかとローリー博士は言った。

 きっと心のどこかで、あの日のことをまだ引きずっていたのだろう。仲間が死んだ、あの日のことを……いつしか、仲間がいても、一番大事な時に頼れなくなっていた。


「俺を強くしてください」

「多少強くなっても、限界は見えている。ベルの方がずっと見込みがある。お前はこれ以上は無理だ。ヤス、お前には当たり前にあるものが欠けているんだ」


 そう厳しく言い放たれる。


「それは何なんですか?」

「研鑽だ。普通の人間は1つの技を見に着けるのに努力するんだよ。だが、お前にはその過程が与えられていない。お前は数々の技をコピーし、自分のオリジナル技も作った。だが、その過程を経ないお前には、超一流にのみ与えられる究極とも言える必殺技を身に着けることはできないだろう。僅かな誤差なんだ。だが、それでも命がけの戦場において大きな誤差になりえる」


 研鑽。確かに俺にはなかったことだ。スキルのおかげで、大抵の技は直ぐに使えるようになるのだから、しようがなかった。


「ふふ」


 魔王は笑った。しかし、嘲るような笑みではなかった。


「あの英雄王と言われた男も、最初は器用貧乏な男でな。一流どころか、二流にもなれない男だった。だが、あいつは大事なものをもっていた……覚悟だ」

「覚悟?馬鹿馬鹿しい、感情論で強くなれるか」


 脳筋の癖に、こと戦闘においてだけ銀子さんはインテリだ。


「なれるさ。泰裕、お前は何にでもなれる。私が鍛えるからな。なんせ私は……英雄王を育てた女だぞ」

「…………」


 英雄王を育てた。幼少期から少年期は謎の多い人物だが、師匠がいたとは……

 だけど、そんな事実よりも……ローリー博士以外に「何にでもなれる」という言葉をくれたのが嬉しかった。俺が自分を信じられるようになった言葉だから。


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