第24話:俺、ラブコメ始めました!
2人の少女は、突然の来訪者に気付いてこちらを見ていた。
2人とも驚いた顔をしているな。先ほどまでの俺と一緒だ。今は無理やり表情筋を動かして、無表情を貫いている。まさか、元理事長にやらされたポーカーフェイスの修行がこんなところで役に立つとは思わなかった。
でもね、でもね。俺にはこの状況を切り抜くスキルなんてないんだ。
どうすれば良いの……どうすれば良いの?助けてローリー博士、超助けて。
……落ち着け俺、いないローリー博士に助けを求めても意味はない。
ここは冷静になって状況を整理するんだ。
少女を犠牲にするというヒーロー本部からの卑劣な指令。片桐という若手のホープであるヒーローに、為すすべなく少女を差し出すしかなかった俺だけど、黙って連れていかれるのを見ていられるほど腐ってはいなかった。カッコイイ。
悪の組織のフェイカーという仮面を利用して、ヒーローではなくヴィランとして、片桐に真っ向勝負を挑む。最初は苦戦したものの新必殺技で片桐を倒し少女を奪い返した俺。本当に頑張った。
しかし、そこに乱入してきたのは、趣味でヒーローをやっているとしか思えない、空気の読めない魔法少女。きっと万全の状態だったら俺が勝っていただろうが、連戦は辛かった。魔法少女に少女を奪い去られてしまう。絶対許さない。
意気消沈していた俺だったが、上司であるローリー博士からの喝もあって、気を取り直して家に帰って休むことにした。けれど、家を帰ってみると連れ去られた少女がいて、妹は魔法少女だった。
何を言っているか分からないって、俺も分からん。ただでさえ、複雑な人間関係が、さらに複雑になってしまった。
1つ言えることは……休んでいる場合じゃないってことだ。後、魔法少女は可愛いから許した。
「……泰裕さん」
「!」
蘭が俺に気付いたようで、そう言って駆け寄ってきた。
美鈴は俺と蘭が知り合いだったことに気付いて蘭をリリースした。まずいどうする?どうすれば良いんだ。思考がまだまとまってないんだよ。
「あ……」
俺は悪の組織らしく、手慣れた感じで蘭の口を手で塞いだ。
美鈴に俺の正体をばらすわけにはいかない。それが俺の最優先だ。
「頼む。妹には俺がヒーローであることは黙っていてくれ」
小声で蘭に耳打ちする。
そうすると、蘭がこくこくと頷いた。勝ったな。これでこの場は俺が有利だ。
「これはどういう状況かな?」
冷静になって考えると、正体さえばれなければ俺が有利な状況だ。むしろ、自分が魔法少女であることがばれるとヤバいのむこうで、焦らなければいけないのはむこうだ。
俺は美涼が魔法少女であることを知っているが、美涼はばれないように必死なはずだ。ゆえに、この状況を支配しているのは俺だ。
魔法少女から蘭を取り返す、2回戦と行こうか。さあ、どうでる?
「彼女とは友達なの。ちょっと2人でふざけてて、びっくりさせちゃった」
コイツ……涼しい顔で嘘つきやがった。こわっ
何年一緒にいると思ってるんだ。俺が騙される訳ないだろ。
「友達ね……」
「何かな?」
「嫌がってたみたいに見えたけどな」
「それは……」
無理だぞ。俺の優位は覆らない。タイマンでは負けたけど、ここで勝て取り戻す。ついでに、魔法少女の仮面も剥いでやるよ。そして、魔法少女何て辞めさせてやる。だが、それには、俺がフェイカーであることがばれてしまうリスクもある。
慎重に、しかし大胆に攻める。
「本人に聞いてるか」
「あっ」
俺はそう言って、特に意味もなく塞いでいた蘭の口から手を離した。
さあ、空気を読んで洗いざらい吐けよ。それで、俺の勝ちだ。
その時、一陣の風が吹いた。
あっと言う間に、蘭が攫われて美涼に捕まっていた。
「私が魔法少女なのを話してみなさい、タダじゃおかないわよ」
良く聞こえないが、何か耳打ちしている。
悪い顔してるな。可愛い。
「お願い黙っていて、あなたにも1人くらいいるでしょ大切な人が、ヒロ君にだけは心配かけたくないの」
「家族だから?」
「うん、ヒロ君は、私の大事な弟なの」
「弟?兄ではなく?」
「当たり前でしょ」
蘭は混乱した。
「何をこそこそ話してるんだ?」
何か大事な話をしているのが分かるが、小声過ぎて良く聞こえなかった。
「女の子には色々あるの。お姉ちゃん、デリカシーないと思うよ」
何がデリカシーだ。見え透いたこと言いやがって、俺の部屋に無断で入ってくる人間にそんなこと言われたくない。そのせいで、俺はHな本1つ買えないじゃないか。
まあ良い、蘭は俺に味方するはずだし、何を言っても無駄なんだよ。
「本当か?」
さあ、嘘だと言え、そして魔法少女であることばらすんだ。俺が魔法少女何て辞めさせてやる。お前は危険のない安全な世界で生きるんだよ。戦場に出てくるなんてあってはいけない。
「本当です」
「…………」
美涼がでかしたという顔をしている。
俺はその隙に、美涼から蘭を掻っ攫った。そして、小声で耳打ちする。
「おい、何で嘘つくんだ」
「女の子は1つくらい言えない秘密があるんだよ。あたしも美涼さんの気持ちが分かるから……」
そんなこと知るか、男だって1つ、2つ秘密抱えてるわ。女だから話せないとかありえないから……皆、いつか秘密をばらされて強くなっていくんだ。
「頼む、あいつのことを思うなら話してくれ」
そう言うと、蘭はコクリと頷いた。
「じつは、貴方の妹さんは……」
蘭が美涼に捕まった。
「何を裏切ろうとしているのかな?私って、命の恩人でしょ。後、私は妹じゃなくて姉だから、間違えちゃ駄目だからね」
また、小声で何か言っている。
おい、もう裏切るんじゃないぞ。信じてるぜ。
「やっぱり、言えません」
おい、洗脳でもしているのか、さっきからその子、手のひら返してばかりなんですけど。
再び、美涼から蘭を奪い返す。
「おい、何を裏切ってるんだ。しっかりしろ」
「もう疲れました」
「頑張れ」
「……その人は」
蘭が再び奪われる。
「駄目よ。何を裏切ろうとしてるの」
「痴話喧嘩なら他でやって」
「違うわよ。これは姉のプライドを賭けた戦争なのよ」
今回ははっきりと聞こえた。
「何が姉だ。俺が兄に決まってんだろ。蘭もそう思うよな」
「さっきから、蘭、蘭、蘭って何よ。いつ知り合ったの?」
「お前こそ、いつ知り合ったんだ。言ってみろ」
「質問に質問で返さないでくれる」
お互いが蘭の腕を引っ張って、ついに綱引きを開始した。
「痛い、痛い」
「痛いっていってるわよ。離してあげたら」
「誰が離すか、これは俺のだ」
「え?」
「私のよ」
「ええええ?」
蘭はみるみる赤くなっていく。
「本人に決めてもらいましょう」
「そうだな。勝ったら俺が兄と言うことにしよう、妹よ」
「上等よ。必ず弟にしてあげる」
「「さあ、どっち」」
全ての決定を蘭にゆだねた。
「いい加減にしろ」
蘭の様子ががらりと変わり、魔王化したのが一瞬で分かった。
俺達2人は衝撃波で吹っ飛ばされる。
美鈴は見事なまでの受け身を取っていたが、俺はそれを見ていたせいで頭を家の扉にぶつけた。頭がクラクラする。てか……いつからそんなこと出来るようになったの?
頭を押さえていると、玄関のドアが勢いよく開かれて、俺はまた吹っ飛ばされた。
片桐戦よりもダメージを受けている気がする。
今回は、美涼の胸がクッションになったので助かったが……てか、どんだけ飛ばされてるんだ。どこのどいつだよ。
「お邪魔しま……」
「…………」
その来訪者と目が合った。
……銀子さん?何で?
「ヤ~ス君」
何か怖いんですけど。めっっちゃ切れてるし……身に覚えないし、俺、何かやっちゃいました?
「あのヒロ君、いつまでいるの?」
「泰裕、余の腕を引っ張るとはどういう了見だ」
何、この修羅場?
とりあえず、眠ってしまっても良いよね。ふわふわで凄く心地良いし、主人公って大事な時に眠ってて聞いてなかったって展開が多いしさ。
きっと夢落ちエンドのはずだ!次回から魔法少女と戦っていたところから始まるぞ。
※魔法少女と戦っているところからは始まりません。




