表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒーローやってたけど、悪の組織に寝返えってみたら天職でした!  作者: 9
宿敵は魔法少女!?~魔法戦争開演~
37/79

第14話:幻夢の檻

「やあやあ、ヤス君、まだ生きているかい?」

「ローリー博士」


 三ツ星専用のヒーローマスクの画面に、ローリー博士が映し出されていた。強気な態度の理由は全てこれだ。


「終わったんですか?」

「ああ、あの親子は逃がしたよ」

「流石です」


 俺も、何もただ時間稼ぎしていたわけでも、わざわざあの親子と離れた場所を戦場にしたわけではない。変身した時からずっとローリー博士と画面を共有していた。否、このスーツは元々そういう風に出来ているというのが正確だろう。

 俺はスパイなのだから、俺の見た情報は全て悪の組織の方に転送されるように、ローリー博士に作られている。


「後は君が逃げるだけだね」

「ええ」


 何も戦って勝つ必要なんてない。俺はあの親子を逃がせればそれで勝ちなのだ。


「しかし、馬鹿だねヤス君、どうして挑発したんだい?怒ってるよ」

「……矛先を俺に向けるためですよ」

「……馬鹿だね。本当に馬鹿だ。それは自己犠牲でやっているなら直ぐに止めな」

「自己犠牲?冗談言わないでください。俺は悪党ですよ。俺は自分のためにしか戦いません」

「だったら……」

「だからこそ、自分がやると決めたことを貫き通します。それで死んだなら、そこまでの男だったってことです」


 楽に勝てるなら、それに越したことはない。でも、現実問題、この世界には俺より強いやつらが腐るほどいる。だからこそ、無理をしないといけない時がある。たぶん、そうしないと、俺は成長しないし、道半ばで死んでしまう。


「じゃあ、貫き通しな。僕はいつだって君の背中を押そう」

「ええ」


 ローリー博士のお墨付きもいただけた。


「来るよ」


 ローリー博士の言葉とともに、上空に飛んでいたドラゴン3体が降下を始めとともに、大きく息を吸い込んだ。

 その体勢は分かっている。ブレスだ。ここで撃ったら全部燃え尽きるぞ。


「最終通告だ。三ツ星君、私の仲間になるんだ。私は君が生きていれば良い、多少身体が吹っ飛んでも構わないんだよ」

「それは脅しのつもりか、だったら答えはNOだ」


 中指を立てて宣言する。


「愚かな」

「馬鹿ですね」

「死ななければ分からないか」


 フードの集団や、21が俺のことを非難する。


「吹き飛べ」


 たった一言。しかし、非情な言葉だ。

 ドラゴン3体から、ブレスが発射される。


「ヤス君、そのスーツは炎熱耐性が低いよ」

「分かってますよ」


 直撃を受けたらただでは済まない。

 俺は再び『セカンド・アイ』を発動させる。


 逃げるなら場所は決まっている。下だ。俺は吹き飛ばしたマンホールの方まで駆けだした。

 『セカンド・アイ』はそのスピードを速めるため、そしてもう1つ意味を持つ。

 間一髪でマンホールの中に逃げ込んだが、生き物のように炎が迫ってきた。それを止めるために石化能力を発動させる。それは敵がマンホールに入ってくるのを防ぐためでもあった。


「くっ」


 マンホールの下は汚い下水が流れていた。といっても凄く浅いので地面に激突した。鼻を塞ぎたくなるような悪臭。

 それでも、荒い息を吐きながらマスクを外す。外したマスクから煙が上がった。『セカンド・アイ』の短いスパンでの連続使用など初めてではないが、それでも能力を使い過ぎた。当分力は使えないだろう。 


 追ってこないことを祈る。死んだと思って欲しいが、あの程度で死んだとは思ってくれないだろう。早く逃げなければならないのに足が重い。

 身体が動かない。『セカンド・アイ』の後遺症だ。身体が熱すぎる。窯でゆでられているような熱さだ。


 不意に下水に倒れる。汚くて臭くて最悪な気分だった。何とか身体を持ち上げると、水面に映った自分の顔が映っていた。


「何だこれ?」


 髪の毛が逆立ち。金獅子の鬣のように変化している。『セカンド・アイ』を解いたはずなのに、目の色がグリーンに変色し、生まれ持った魔力などないはずなのに、バチバチと放電現象が起きている。それは俺の魔力性質によるものだ。、『セカンド・アイ』を発動された時、現れるのを知っている。

 それはほんの一瞬のことで身体に起きた変化は急激に元に戻っていく。


 俺は再びマスクをつけた。


「ローリー博士」

「おお、ヤス君生きていたかい?」

「俺……」


 言葉に詰まった。何と言えば良いか分からなかった。化け物に代わってきていると言って、何か対策があるのだろうか?

 俺の能力は変異能力ではない。一度完全に変わってしまったら、元には戻らない。


「ヤス君?」

「……逃げるためのルートを教えてもらえますか?」

「ああ、分かったよ」


 俺は……今は生き残る方が最優先と、それっぽい理由を付けて黙っていることにした。怖かったからだ。いざ、化け物に変わりだすと怖かった。自分の自我すらもなくなってしまうのではないかと、そう思うと向き合うことが出来なかった。

 高熱にやられているからかもしれない。


「こっちだヤス君、君を僕のいるアジトまで誘導する」

「お願いします」


 ローリー博士の言葉を聞いて、下水道を行く。身体は動かないので、スーツの補助機能で動いている。精度はだいぶ落ちるが、身体を動かさなくても勝手に動いて行ってくれる。

 また、神通力によって、下水道の水を浄化して飲むことにした。また、スーツの中にも水をミストに変えて、循環させることによって上がりきった体温を下げた。


 これで敵と邂逅しても最低限の戦いを出来ると思っていたが、最悪な形で捕まった。

 さきほどから、同じ道をぐるぐる回っているのだ。


「ローリー博士?」

「ああ、幻術だ」


 アジトまでもう一歩のところまで来たのに、どうやら魔法をかけられたらしい。それも幻覚魔法。別名、幻術だ。

 簡単に言えば催眠術のようなものだが、幻術は機械に対してすら干渉して、現実を捻じ曲げる。


 ただ、そんな幻術にも効果範囲と言う弱点がある。さらに、幻術は常にかけ続けなければならないのだ。一度かけたら終わりではない。常に効果を発揮し続けるように、術者は近くで俺に幻術をかけているはずだ。

 ならばどうする?


 下水道に向けて、雷の弾丸を撃ち込んだ。


「正解だ、ヤス君」


 電撃は水を伝っていく。その先に敵が必ずいるはずなのだ。効果は目に見えて現れる。幻術が崩れ出した、一本の狭い道だと思っていた下水道は、大きなホールのような空間に入っていたらしい。

 幻術は一瞬でも解けたらその効力を失うのだ。


「舐めたことを」


 黒いフードが1人。そこに現れた。


「何だ1人か?」


 余裕たっぷりにそう発する。余裕なんて本当はない。それでも、余裕のあるふりをした。相手の数を確認するためだ。


「1人かだって、舐めないで欲しいな。君なんて、私1人で十分なんだよ」


 びっくりするくらいチョロイやつ。でも、コイツ強いな。対峙して分かる。ベストな状態なら俺に分があるけれど、この体調だったら勝てるか分からない。


 黒いフードはそのフードを取った。


「その姿は?」

「……チャームリンクは、所有者以外にも力を与える。私の身体も眷属として変わってきている」


 サタンの部下だった、ベルやアルルも悪魔のような姿に変身していた。何故、そうなったのかは分からないと言っていたけど、これも魔法少女の力だったという訳か?

 しかし、目の前の少女の姿は何だ?複数のチャームリンクのせいだろうか、その姿は様々な生き物が混ざったようで、非常に歪な姿をしていた。


 一番気味が悪いのは、肩に悪魔の顔のようなものが出来ている。


「ローリー博士?」

「ああ、ヤス君……僕も見ているよ。あれには複数の悪魔の力が混ざり合っている。でも、器がそれに耐えられていない。複数の悪魔の力が付いていてもあれでは……力も発揮できないし、元に戻れないんだろうね」


 ベルたちは、自由に変身していたけれど、今度の敵は最初からフードで身を隠し、最初から変身していた。その理由がこれか……


「君には分からないだろうな。魔法と言う奇跡を生まれ持って持ち合わせている君には?」


 それは勘違いだ。俺の魔法はスキルにより、後発的に得たものだ。だけど、そんなケースはほとんど確認されていないので、勘違いされても仕方ない。

 魔法はスキルと違い、研究がほとんどされていない。スキルの研究対象は億単位でいるが、魔法の研究対象は非常に少ないからだ。だから、この力がそんな素晴らしいものか、俺は知らない。もしかしたら、俺の身体も変わってきているから同情しているのかもしれない。


「俺には確かに分からない。だから、君のことを否定しない。だけど、君のことは哀れだと思うから、そこを通すなら、ボロぞうきんにするのは止めてやるよ」

「は?どういう意味かな?」

「力に溺れてる君じゃ、俺には勝てないって意味さ」

「勝てないだと?」


 カッコイイヒーローならこういう時どうするのだろうか?

 俺には分からない。そもそも俺はヒーローではないから……


「ヤス君!」


 ローリー博士が何か叫んでいる。敵が攻撃をしようとしているからだ。肩の悪魔の顔が開いて、口から何か出ている。


 なあ、フェイカー?

 お前ならどうする?


 ヒーローらしく、ただ敵だから倒すか?それで救われる人たちがきっといるんだから、それが正しい選択だ。

 でも、本当の俺は……ヒーロー本部の三ツ星ではなくて……悪の組織の一員だ。正しくある必要なんてないじゃないか?


「ヤス君!」


 本当に刹那の一瞬だった。ローリー博士の言葉を聞き、黒い風の刃のようなものを躱す。それは下水道のいたるところを切り裂いた。


「変身」

「フェイカ―だと……」


 少女の身体は力なく崩れ落ちた。

 勝負は一瞬でついたのだ。変身した俺の拳が少女の鳩尾を捉え、彼女は力なく気を失った。


「ローリー博士、彼女アジトに連れて行って良いですか?」

「駄目って言っても、連れてくるんだろ?」

「はい」

「……君らしい」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ