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ヒーローやってたけど、悪の組織に寝返えってみたら天職でした!  作者: 9
その名はフェイカー~偽物のヒーロー~
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第3話:第2のスキル覚醒

 目が覚めるとそこには、いつもの天井があった。当たり前だ、ここは俺の部屋なのだ。


 もしものために用意した大きめのベット、親父が買ってくれたが使ってない勉強机、漫画のつまった本棚。少年漫画はもちろん、少女漫画までラインナップされている。俺のバイブルである。

 部屋で目覚めると言うことは、悪の組織に入った気がするが、あれは夢だったのだろう。話が美味すぎるはずである。残念な気もしたが、同時に安堵感にも包まれた。やはり、悪の組織に入ると言うのは人生のハードルが高過ぎる。


 良かった、良かったと伸びをすると、けたたましい音が鳴り響いた。


「誰の携帯だよ」


 勉強机を見ると、見たこともないメカメカしいベルトとスマホが一台置いてあった。

 スマホの画面には、「ローリーちゃん」と映し出されている。ローリー、どこかで聞いたことある名前である。思い出せない。


意を決して、スマホに出てみる。


「グッドモーニング、ヤス君。ローリー博士だよ」


 朝から糞高いテンションで、ローリー博士の声が響いた。背筋が寒くなり、昨日の記憶の一部が鮮明に思い出される。悪の組織のNO3だ。何かされた気がするが思い出せない。


「何で?」

「モーニングコールだよ」


 そう言うことを聞いているんじゃない。


「俺、何で自分の部屋で寝てるんですか?」

「僕が、お姫様抱っこで運んであげたんだよ。わざわざ住所まで調べてね。感謝して」

 

 ローリー博士が俺を、あの小さい身体では絶対無理だろう。


「これがその時の写真だよ」


 そう言って、ローリー博士はSNSで画像を送信してくれた。


「僕って有能でしょ。改造手術も成功させたんだよ。褒めて褒めて」


 改造手術?俺はそこで、昨日の悲劇を思い出す。そう言えば、この糞女に改造手術させられたのだ。この恨み100倍にして返さなければ俺の気がすまないぞ。

 大人げない?知らんな。相手は悪の組織だ。慈悲何てかける相手じゃない。老若男女関係なくぶん殴ってやる。しかし……


「成功した?」


 その言葉が引っ掛かった。


「そうだよ。僕って凄いでしょ。ヤス君は、1億人に1人しかいないトリプルホルダーになったんだよ」

「トリプルホルダー!!!」

「大きな声でうるさいな」


 俺が、大声を上げるとローリー博士が非難の声を上げる。それは正直申し訳ないと思うけど、トリプルホルダーというのは天文学的な確率で生まれてくるスキルを3つ持っている人間である。俺がそんな存在になった?何かの間違いだろ?

 宝くじの1等が当たるよりも確率的には低いはずだ。


「ローリー博士……あなた天才だよ」

「……もっと褒めるがよい」


 改造手術された恨みは、もはやどこかに消えうせた。俺は現金な人間なのである。だが、1つ問題が残っている。3つ持っていても、ゴミのようなスキルでは意味がないのだ。


「一体、どんな能力が目覚めたんですか?」

「……さあ、僕は潜在能力を解放しただけだから、スキルを人工的に与えたわけではないんだ。……でも、スキルを持っていたのに目覚めていなかったと言うのは、それだけ負荷の大きい強力なスキルだってことだよ」

「今のスキルよりも強力?」

 

 俺、もしかしたら最強になれるかもしれない。人生バラ色待ったなし。


「そう言えば、ヤス君のスキルって聞いてなかったね」

「「俺のスキルは……」

「ヒロ君、学校の時間だよ」


 そんなとき、その声が部屋の外から響いた。


「ヒロ君?」


 ローリー博士が、不思議そうに質問するが、何か返事する前にその声の主は部屋の中に、勝手に入って来た。


「は?」


 そこには下着姿の女の子がいた。何を言っているって、俺も何が起きたのか分からない。美涼、いつからお前そんな子になったんだ。痴女に育てた覚えはないぞ。


「美涼、お前、服を着ろよ、服をよ。恥じらえ」

「……何言ってるの? 服は着ていると思うんだけど」

「俺です。うちの妹がおかしいんです」

「ヒロ君、誰と電話してるの?」


 いきなり露出狂に目覚めた美涼のことは無視である。俺はローリー博士に状況を説明した。もちろん、美涼に聞こえないように小声でである。


「ヒロ君、それは君が普段そういう目で女の子を見ているから、見えないはずのものが見えるんだよ。スケベだな。お母さん悲しいよ」


 誰が、お母さんだ。誰が……うちの母親は男作って出て行ったので、デリケートな部分に触れないで欲しい。どうして、俺も連れて行ってくれなかったのか、当時は枕を濡らしたものである。

 まあ、当時はそう思ったが、今になって思えばコブつきの女なんて男は嫌がるものだし、置いてかれても仕方なかったと思っている。だから、本当は大して気にしていないのだが……ローリー博士にいじられるといらってするんだよな。


「ねえ、ヒロ君、さっきから誰と電話しているの?もしかして、桃ちゃん?」

 

美涼は美涼で面倒臭いことを言いだした。そんな時である。


「教えてあげよう、スキルだよ、ヤス君」


 ローリー博士が答えを教えてくれた。


「スキル?」

「そうだよ。目覚めたスキルの1つだね。視覚強化系のスキルのようだから、鏡を見て目の色がいつもと少しでも違うならスキルで間違いないよ」


 俺は、美涼を完全に無視して家の洗面台まで駆けだした。ドアと鍵を閉めて洗面台で自分の顔を確認する。いつも見慣れた俺の顔であったが、目の色がいつもと違っている。目が赤い。

 もちろん、充血しているわけではないぞ。


「目が赤いです。俺の新しいスキルって透視能力ってことですか?」

「ヤス君、それは分からないよ。視力強化系の能力で間違いないだろうけど、視力強化系の能力は能力だと思っていた能力が、副産物のおまけだったりするからね。透視能力は能力のほんの一部かもしれない」

「……ローリー博士、銀子さんってどこに行けば会えますか?」

「呆れたよ、ヤス君。何、さっそくエロいことに使おうとしてるんだい。乙女のパンツは安くないんだよ……でも、面白そうだから教えてあげる。その代わり、僕のことは見ちゃダメだからね」


 誰もお前のことなんて見たりしないよと思ったが、それを言うのは控えておこう。

しかし、そんな俺への天罰だったのか、目に激痛がはしったのはそんな時だった。頭の中で不協和音が響き渡り耳鳴りがした。立っていられないほどの気持ち悪さで地面に倒れる。


「銀子ちゃんはね……」

「ぐあ、あが」

「どうした、ヤス君?」


 俺の尋常ならざる様子をスマホ越しにでも感じたのか、ローリー博士がいつもと違う声音で、心配そうな声を漏らすが返事できる余裕がなかった。

 痛みがおさまったのは数秒後のことである。何が起きたかは分かっている。


「ローリー博士、どうやら副作用が起きたようです」

「……やっぱり、そうなのかい。心配させないでくれよ」

「すいません」

「大丈夫なら良いんだけどね」


 強力なスキルほど肉体にかかる負荷が大きいのだ。それが今のように、何かしらの変調として体にフィードバックされる。それを副作用と呼んでいる。しかし、妙である。


「妙だね。透視スキルごときで副作用が起きるなんて話は聞いたことがないよ」


 ローリー博士も気づいたようだ。透視スキルなんて珍しくもない。世界中探せば同じスキルの人間が100人はいる。割と有名なスキルなのである。100例も確認されれば、必ずではないが研究が進んでいてもおかしくなく、透視スキルは研究が進んでいる側のスキルだ。肉体への負荷の少なさも証明されている。


「おそらくだけど、ヤス君のスキルの本質は透視じゃないんだろうね。透視は副産物だと考えるのが自然だ。ふふ」

 

 ローリー博士は嬉しそううに笑った。


「楽しくなってきたよ。透視スキルが副産物として発言するスキルなんて、歴史上10件も確認されてないよ。やっぱりヤス君は僕のモルモットとして優秀だ」


 こいつ、今、モルモットとか言わなかったか?


「ヒロ君、どうかしたの? 大丈夫?」

 そうこうしていると、美涼がドアの向こうにやって来た。


「ローリー博士、そろそろ」

「そうだね。スキルが1つ覚醒したのも確認出来て、改造手術の経過は順調なようだし、僕も眠いからこれくらいにしようか」


 そう言って、ローリー博士は欠伸をした。朝から、眠いとは不規則な生活が垣間見える。


「ヤス君、最後に今もっているスマホと、一緒に置いてあったであろうベルトは、必ず肌身離さずもって行ってね」

「ベルト?」

「とっておきの君の戦闘用スーツさ。三下ヒーローのちゃちなスーツとは性能が段違いだから、変身したら世界が変わるよ。じゃあ、おやすみ」


 言いたいことだけ言って、ローリー博士は通話を切った。ベルトについてもっと聞きたかったが、切られては仕方ない。それに、今は対処しないといけないこともある。


「おはよう。美涼」


 洗面台のある、風呂場に続く脱衣所のドアのカギをを開けて美涼と対面する。怒った顔半分、心配そうな顔半分という微妙な表情をしている。


「おはようじゃないよ。私のこと完全に無視してさ。うめき声をあげるは、変なこと言うは、今日は朝からどうしっちゃたの?」


 いつもと同じ制服姿である。どうやらスキルの発動は痛みとともに、終わったようである。

しかし、制服越しでも分かるその双丘を下着状態とは言え、先ほどはっきりみたことを思い出すと、色々と背徳感があった。

案外エッチな下着を着けているんだなとか、思ってしまうのは健全な男子高校生としては仕方ないのだろうが、俺はそういう風に彼女を見たくなかったので、出来ればこの記憶を消し去りたい。


 それは、彼女が戸籍上は義理のキョウダイであって、たった1人の大事な家族だからだ。

 血のつながっていない家族。そんな都合の良い関係の俺達が現在2人暮らしをしている。


 何故、こんな関係なのかと言えば全て親父のせいである。悪の組織に両親を殺され、自身の命も狙われていた美涼を、親父が間一髪のところで助けたのだ。それ以来、すっかり親父に懐いた美涼を、何を血迷ったか親父が養子にした。自分の息子も碌に面倒見ないくせに、養子にしやがったのだ。あのバカ親は……

 ヒーロー活動のせいで、お袋に男を別に作られ捨てられた親父が、養子をとる何てお笑い以外の何物でもないが、ヒーローという社会的地位を利用して、養子にしてしまったのだから仕方ない。

 

 その後、俺の失敗を糧に真面目に子育てするかと思われたが、現在は2人で暮らしていることから分かるように、親父はヒーロー活動を免罪符にして家には碌に帰ってこず、育児放棄しやがった。子供はペットではないのだ。

 もしかして、ヒーロー脳の馬鹿なので、子供が勝手に育つと言う幻想でも抱いているのかもしれないが、現実問題、そんなわけがなく、俺が妹として美涼の面倒を見てきたのだ。

 本人はそうは思っていないようであるが……


「怒らないから、お姉ちゃんに話して見て」

「お姉ちゃん?」


 俺が黙っていると、聞き捨てならないことを言いだした。最近、反抗期なのかマウントをとろうとしてくるのだ。


「俺が兄だって、昔から言っているだろう」

「私が姉だよ」

「小学生の時、雑巾を縫ってやったのは誰だ?飯を作ってくれたのは誰だったかな?」

「それを言うなら、掃除に洗濯をしてあげたのは誰でしたっけ?」

「そんな雑用は、妹の仕事だ」

「それ言って良いなら、最近、ご飯を作る頻度は私の方が多いんだけど」

「俺が教えてやったからな。つまり、俺の方が上だと言う理屈がなりたつ」

「墓穴掘ったね。赤点取って、泣きついてきたとき勉強を教えてあげたのは私だったよね」

「ぐぬぬ」


 こいつ、俺よりもちょっと勉強が出来て、全国模試で一桁順位だからって調子に乗りやがって、人の弱みを突くなんて、将来碌な人間にならないぞと、ヒーローであるが故のマウントをとってやりたいが、悪の組織に入ったのでマウントも取れない。俺は社会の底辺に落ちたのだ。


 何か欠点はないかと悪の組織の一員らしく分析してみたが、胸が大きいだけでなくクビレもしっかりあり、美涼はスタイルが良いのだ。さらに、顔も可愛いときてやがる。あれ、こいつ完璧超人じゃないか?

 料理は壊滅的だったが俺が教えてやったので出来るようになったし、歌もへたくそで絶望的な音痴だったが、俺が教えてやったら改善した。運動も苦手だったが、俺が教えてやったら人並み以上に出来るようになった。


 結論、俺は人にものを教えるのが上手いで良いんじゃないだろうか?まあ、俺が教えるのが上手いのは生まれ持ったスキルに起因しているだけなのだが……


 ちなみに、俺と美涼が兄と姉論争でいつも喧嘩しているのは、誕生日が同じ日だからである。出生時間が分かればいいのだが、俺は病院で生まれていないらしいので、正確な出生時間が分からないのだ。


「今日は、お前が姉の日でいいよ」


 折れてやるのも兄の務めである。大人になって心にもないことを言う。


「やった」


 美涼は、ピョンピョンと飛び跳ねた。ピンク色の髪が綺麗に靡いている。まだまだ子供である。成人するまでは、俺が面倒を見てやらないと思っている。

 何を隠そう、俺の死ねない理由は彼女だ。俺が死んだら彼女は天涯孤独になるだろう。両親は悪の組織に殺され、新しくできた家族も死んでしまう。それって凄く可哀想ではないか?

 家族なら、家族の不幸は自分の不幸と一緒だと俺は思う。

 

 美涼には、損得勘定抜きに、ヒーローや悪の組織の関係ない、どこか別の世界で幸せになってほしいと願う。今の時代無理な話なのは分かっているが………たった1人の家族なのだ。

 親父? あんなやつは知らんな。


「じゃあ、悩みがあるならお姉ちゃんに何でも話してみて」

「姉がうざくて、困っております」

「うざ?私のことそんな風に言うのは、ヒロ君だけだよ。私は完璧美少女で通ってるんだからね」

「…………」


 自分で言うな。自分でと思いながら無視することにした。


「最近、私のことスルーし過ぎじゃない。もっと構ってよ。すねるよ」


 可愛い態度に思わず抱きしめたくなるが、一線を越えるわけにはいかないので、やはり無視して、朝食を食べることにした。早く飯食わないと学校に遅刻するからな。


「うっ」


 食卓に移動すると、嫌でも目に付くポスターの数々、それは親父だったり、シールド5だ。シールド5が何かといえば、新規参入した5人のヒーロー集団である。ちなみに、シールド・ブルーは俺だ。


 自分のポスターを貼っている痛い人だと思わないで欲しい。全て美涼の趣味なのだ。この女は昔からヒーロー好きで、父さん以外はその時々で、押しのヒーローも変わり、毎回グッズを集めている。  

 ちなみに、美涼は父さんの正体がヒーローなのは知っているが、俺がヒーローなことは話していない。無駄な心配をさせないためだ。


「この趣味の悪いポスター、いい加減外さないか?」


 俺は、大嫌いなレッドのポスターを剥がそうとする。


「駄目に決まってるでしょ。それによりによって何でレッドなの?私レッド押しなんだよ」


 レッド押しなんて、男の趣味が悪すぎる。ダメンズが好きなんじゃないだろうな。


「ブルーを押しなさい」

「ええ……ブルー?私、ブルーはあんまり好きじゃないんだよね」


 喧嘩売ってんのか、コイツ?


「ブルーは人気ヒーローだろ?」

「ブルーは確かにミーハーな女子に人気があるよ。でも、ヒーローとしての熱い思いを感じないんだよね。玄人はブルーを押さないね。そこい行くとレッドがこの街ではナンバー1……」


 はあ、玄人ってなんだよ?とツッコミを入れたかったが、レッドの話をしだしたので、美涼をまた無視して朝食を食べ始めた。これ以上聞いていると、飯が不味くなる。だから、レッドは嫌いなのだ。

 やっぱり、あいつだけは銀子さんに殺されて良かったな。うん? 何か忘れているような?


 食卓を見ると、味噌汁に卵焼き、ヒジキ、漬物、鮭の塩焼き、サラダ。なかなかの朝食が用意されていた。

 味噌汁を啜りながら、テレビでも見ようとリモコンを操作すると、ちょうど、ニュースキャスターが興奮気味に話していた。何かあったのだろうか?


「昨日未明、新進気鋭の若手ヒーローであるシールド5が悪の組織に敗れたことが分かりました。ブルーは行方不明、レッドとイエロー、グリーンは意識不明の重体でしたが一命をとりとめ、回復に向かっているようです。1日でも早くブルーが見つかることを祈るばかりです」

「嘘……」


 食器の割れる音がした。その方向を見ると美涼がショックで固まっていた。本来なら割った食器を片付けて、励ましてやるところなのだが、俺も余裕がなかった。どうやら、俺は行方不明と言うことになっているようである。

 心臓が信じられない速度で脈打っている。


 ブルーが行方不明なのは、あの後、改造手術を受けたので、ヒーロー本部に何の連絡もしていなかったためだ。

 適当な言い訳を考えなければならない。だって、銀子さんにはボコボコにされたけど、動けなくなるほどの重傷は追ってないのだ。目に分かる酷い傷はない。折れた骨すら元に戻っているぞ。何でだ?


 

 もともと持っていたスマホは戦闘で壊れてしまったが、新しいデバイスをローリー博士からもらっているので、自分のアカウントと同期させる。報連相は大事である。

便利な時代になったものである。アカウントに同期させれば、あらゆるデータがクラウド上に残っているので、新しいデバイスがそのまま、元のスマホ同様に使えるようになっている。

 戦闘でスマホを良く壊す、ヒーローのための新サービスである。


「うっ」


 ヒーロー本部に連絡をしようと、スマホのアカウントを同期させると、不在着信が100件を超えていた。そのうちの9割以上が同じ相手からの着信である。

 怖いよ。怖すぎるよ。


 その9割以上の着信を残したのは、シールド・ピンクである。メッセージの数も半端じゃなかった。


 これは、本当にヤバい。俺は急いで美涼の割った食器を片付け、ついでに励ましつつ朝食を済ませて、服を着替えた。もちろんローリー博士のベルトを着けるのを忘れない。ベルトは、ずっしり重くて重量感があった。


「俺はもう行くから、美涼も元気出せよ。死んじゃった訳じゃないんだからな」


 それだけ言って、勢いよく玄関を飛び出すと既に遅かった。


「生きていたんですね、先輩」

 

 一人の少女が、そんな掛け声とともに俺の胸に飛び込んできたのはその時だった。


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