5分前より物書き達へ
バーランド・ラッセルが言った。世界は5分前に始まったと。
世界が5分前にそっくりそのままの形で、
全ての実在しないデータを住人が「覚えていた」状態で出現したなら、
それは5分前に世界が始まったのかもしれないということ。
この仮説は確実に否定する事が不可能と言われている。
ならばこの仮説を正しいとするならば、
この世界が終わるのは5分後でもいいわけだ。
そう、ちょっとしたキッチンタイマーのように。
ならばさらに思考実験。その10分で終わる世界を観測するのは誰か?
誰も居ないならばその10分は(観測できる中では)永遠であるのだ。
そう、永遠に終わっただけの世界。真っ暗闇。
永遠に続く世界、デウスエクスマキナ(機械仕掛けの神)だけが観測している。
そうして終わった世界を見て、さて、神はどうするか?
永遠に終わった真っ暗な世界を眺め続ける?それともまた10分前を再生する?
いいや決まっている。そのデータを流用してさらに10分後の世界を作るのだ。
そう、神が満足するまで10分づつ世界は伸ばされる……
これ、何かに似てるな、と思わないかい?
そう、小説、広く言うなら物語。
アニメ、映画、マンガでもいい。
プロローグから世界は始まり、1話づつ世界は進み、
エンディングに向かって少しづつ少しづつ伸ばされていく。
つまり作り手は神であり観測者であるのだ。
だがしかし、絶対の存在ではない。
5分前に始まった世界を提供しただけだ。
物語の中の人間はそれを観測できはしない。
物語は物語の中だけで進んでいく。
さぁ、筆を執りあなたの時計を動かそう。
貴方の世界がまた動き出す――