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神装の守護者  作者: 湊川
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救援

 グレイウルフ達のいる方向へ()ける。


 この森に一人で入るような人物ならば基本的にボスに出くわしても離脱できるはずだとは思うが、ウルフ達に囲まれても動かないところを見るとそれも怪しい。


 動かずとも余裕で撃退できるのなら良いが、今まさに絶体絶命という可能性も十分にあるだろう。


 ゲームの常識が当てはまるのかはわからないから、エルネリアには想像もつかないような状況である可能性もあるのだが。


 5頭の(した)()ウルフが動いたようだ。


 一斉に飛びかかり、そして(まと)めて弾き飛ばされた。


 が、2匹は倒せても、3匹は気絶させただけで倒し切れていない。


 ウルフの集団など片手間(かたてま)一掃(いっそう)できる実力がなければ単独でグレイウルフには勝てないから、やはりこの先の人物は危険な状況である可能性が高い。


(見えた!……って、危ない!!)


 視界に(とら)えたのはグレイウルフと、右脚を(かば)うようにしながら立ち、今まさに魔法の詠唱を始めた冒険者風の少女。


 グレイウルフがそれに反応して腕を振り上げる。


 このタイミングでは詠唱は間に合わない!


 即座に弓を引くが、それを射る前に――


「打て!」


 少女が叫ぶと、風の魔法がグレイウルフの鼻先を打った。


 エルネリアの想定していた魔法の構成スピードと比べて非常に速いことに驚かされる。


 詠唱というのは魔法の構成を補助してくれるものだが、その代わりに時間がかかり、かつ決まった形の魔法しか発動できないというのが欠点である筈だ。


 異世界の魔法についてはともかく、魔法を受けたグレイウルフが仰け反った事により、エルネリアがその場に辿(たど)()くだけの時間の猶予が生まれた。


「…………ヘルミーナ…………お救い下さい…………」


 どうやら少女は抵抗を諦めたのか、両手を胸の前で組んで神に祈りを捧げているようである。


 聞いたことのある女神の名前が耳に付いたが、まずはグレイウルフを彼女から引き離すために左手の盾を引き、思い切り殴りつける。


「ギャオォッ!!!」


 グレイウルフが声を上げて吹っ飛んで行く。


 同時に右手の通常アイテムである長剣をしまい、神霊級アイテムの武器を取り出した。

 女神ヘルミーナから授かった長剣【聖剣ディアルマ】である。


 グレイウルフを手早く倒せ、尚且(なおか)つ周囲に影響のない武器という条件で(いく)つか候補を考えていたのだが、ヘルミーナの名前を聞いたのでその中から何となく選んでしまった。



「女神、様…………!!」


 

 何やら不審な言葉が聞こえたが、まずは少女の状態を確認する。


 ざっと見たところ、右の太腿(ふともも)あたりに深い切り傷を負っているようだ。


 これが原因でグレイウルフから逃げられなかったようだが、即刻(そっこく)命に関わる重症ではない。


 グレイウルフならば倒すまでに十秒程度しかかからないから、先にそちらを処理するのが得策だと判断する。


 ついでに、気絶中のウルフを魔法で仕留めておくのも忘れない。


「もう少し我慢しててね。今、片付けるから……!」


 そう言ってグレイウルフを吹き飛ばした方角を見れば、ちょうど衝撃から立ち直って走り出した所だった。


 魔獣系モンスターは基本的に脅威(きょうい)であると感じた相手を優先的に狙うため、ターゲットは完全にこちらに移っている。


 正面から迎え撃って頭から返り血を(かぶ)るのは嫌なので、瞬時に右側に回り込んだ。


 そのまま、首筋に剣を振り下ろす直前に聖剣の特殊能力を発動させると、刀身を延長するように光の刃が展開され――


 グレイウルフの首をさっくりと斬り落としてしまった。



「……………………。」



(…………???)



 威力が強すぎる。


 表情には出さないが、困惑してしまう。


 確かに相手は格下で、聖剣ディアルマは長剣というカテゴリーで言えば最上級の武器であるが、一刀両断は流石にありえない。


 グレイウルフが倒されたのを見て安心した少女が気絶してしまったようなので、抱き止めて治癒の魔法をかけながら考える。


 MMORPGのボスというのは、基本的に複数人で袋叩きにしてやっといい勝負ができるといった感じで、HPが馬鹿みたいに高いのだ。


 流石のエルネリアも、一撃の威力に特化していない今の装備ではワンパンは不可能だった筈。


 ここまで戦闘についてはゲームと変わらなかったが、何か異変はあったかと考える。


 ……よく見てみると、聖剣ディアルマの特殊能力で展開されている光の刃が少し大きいように見える。


 これはディアルマの性能がゲーム時代より更に強くなっていると考えるべきか。


 試してみたいが、事情も素性も知らない少女の(そば)で検証するのは(はばか)られるので、保留にしておく。


 とりあえず、少女が目覚めるのを待って話を聞くしかないだろう。


 怪しまれない程度にこの世界についても聞ければ良いのだが……。


 手持ちにあった敷物を出して少女を寝かせ、グレイウルフの死体を回収する。


 自分も敷物の端に腰掛けつつ、周囲を警戒するのだった。

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