永遠亭の惚れ薬
どうしても霖之助と結ばれたいんですね、魔理沙は…本当にかる〜〜くガールズラブ要素です。この作品は、上海アリス幻楽団様制作の、東方プロジェクトの二次創作です!
幻想郷の、穏やかな春の日。博麗神社には、憂鬱な顔をした魔理沙と、真剣な顔をした私が縁側に座っていた。魔理沙は涙ぐんでうつむいている。
「やっぱり…だめかな…」
私はそれを聞いて魔理沙の背中にもたれた。
「いいえ。そんなことがあるはずないわよ。霖之助さんは、いつも魔理沙のことを想ってくれていたのだもの。きっと…きっと、本当の気持ちを言葉にするのが恥ずかしかったのよ。落ち込まないで」
話は数時間前にさかのぼる。
「霊夢ー…」
蝉の声がうるさい夏の博麗神社に、魔理沙がやってきた。私は気持ちよく飲んでいた冷えたお茶を足元に置き、返事をする。
「ここにいるわよ。今日も暇つぶし?」
私が座っている座布団の隣にストンと腰掛けた魔理沙は、何と無く青ざめて見えた。
「いや、今日は香霖のことで、ちょっと…」
「あら、どうしたの?霖之助さんがどうかした?…ああ、これ。お茶とおせんべい」
知らず知らずの内に、口調が柔らかくなっているのが、自分でもわかる。魔理沙の相談にのる時は、いつもこうなる。魔理沙が話し始めた。
「香霖の様子がちょっとおかしかった。この前、いらない道具を集めて香霖堂に行ったら、香霖がそれを見てすごい感動してた。その時は珍しい物でも入ってたのかと思う程度で、帽子ごと預けておいたんだ。で、帰ろうとしたら、香霖が呼び止めて…もう暗いから、今夜は家に泊まっていけって言った。本当に嬉しかったよ。だからお礼に煮込み料理を作ってあげたら、これにも感動してくれて…それから、お風呂入った後に香霖の仕事場を覗いたら私の帽子を丁寧に直してくれてた。それで私の決心がついたんだ。好きって言おうって…きっと香霖も私のことが好きなんだなって思って…」
私はここまで聞いて尋ねた。
「決心がついたなら、なぜここに来たの」
魔理沙は顔を背けた。顔全体は見えなかったが、肩が震えているのが見えた。
「それが…それが、その翌朝に言った。『ずっと好きだった』って…そうしたら…」
顔が再び私の方に向いて、胸にもたれかかってきた。
「こ、断られた…えぐっ…なんであんな態度をとってくれたのか…えぐっ…わかんないんだぜ…」
私は思わず魔理沙を抱きしめた。
「夢であってくれたら…」
それしか言葉にならなかった。
そしてこの状況。
時間が何時間も、どこかのメイドが時間を止めたように、重い空気を乗せて、ゆっくりと過ぎ去っていく。私の心の中には何も思い浮かばない。涙が全身で暴れているようだったが、外には出てこなかった。せんべいの量も、お茶の量も減っていない。そんな空気の中で、魔理沙がつぶやいた。
「〜〜えぐっ…」
「…え?」
嗚咽交じりの上に、蚊の鳴くような声なので、よく聞き取れない。魔理沙はもう一度言った。
「永遠亭」
一瞬、その言葉が何を意味してるのか、わからなかった。魔理沙が途切れ途切れにつぶやく。
「永遠亭の…蓬莱人。あの医者。えぐっ…惚れ薬」
私は黙って魔理沙の手を引き、迷いの竹林へ飛び立った。
少女移動中ーーー
昼でも薄暗い竹林の中に、ひっそりと永遠亭は佇んでいた。箒を塀に立てかける魔理沙を待って、私は蓬莱人の医者…永琳を探した。しばらく敷地内を歩き回っていると、縁側から声がした。
「あら?どんな御用ですか?永琳先生なら、今日は面会は無理ですけれど」
月の兎…鈴仙だ。私は気力の無い魔理沙をさりげなく支えながら聞いた。
「どうして?今、緊急で薬が欲しいの」
鈴仙は恥ずかしそうに答えた。
「それが…師匠が薬の失敗作をそこらに置いておいたままだったらしいんです。それを姫様が飲んじゃって…緑色だったから、お茶と間違えたんですよ」
「効果は?」
「姫様が増殖されました。本物には違う服を着てもらっています。それで、姫様が今、師匠を叱りつけています。あの調子じゃあ、明日までお説教では無いですかね?」
私はため息をついた。
「全くのんきなものね。まあ、お話をありがとう」
魔理沙を半ば引きずるようにして永遠亭から出た私は、魔理沙に聞いた。
「…無理だったわね…そう、確かパチュリーも薬を扱ってたわ」
「そうか…じゃあ、行くぜ…えぐっ…」
人前にいる時は、魔理沙は元気なふりをしているのだ。だが、今見ると、顔は涙でぐっしょりで見るも哀れな姿だった。
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