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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

現実はつまらない方がいい。

作者: おポチ

 毎日学校に通って、いるのかいらないのかわからない知識を頭につめこむ毎日。

 だらだら楽しく遊ぶだけの友人。

 テレビやケータイ、インターネットには情報があふれていて、その他、娯楽にも事欠かない。

 幸い我が家の親はお給料の減額はあったもののリストラにもあわず、衣食住も足りている。そのうちこのまま惰性で高校を卒業、大学受験もなんとかなって、卒業後は適当な会社に入って人生の伴侶を見つけて結婚して子供がうまれて…とか、ありきたりの人生が続く、はずだった。

 その時その時を、それなりに楽しく過ごすはずだった。

 不満はないけれど、先がなんだか見えていて、これといって明確な目標のなかった私は、ただその曖昧なもやもやを「現実ってつまらない」という一言で表していた。


…だからって! ネット上の生活とか、災害とかの非日常とかが面白いといいたかったわけじゃない!


というか、実際体験してみると、面白いとか言ってられません。

「こっちを睨みつけるぐらいなら、まだ余裕ありそうだな。さっきまでの大声はどこいったんだ? ほら、もっとこう、動いて美味しそうアピールがんばれよ、活餌ー」

いやほんと余裕ございませんですよ!

 現状、私、何故か、崖の上から縄1本で縛られてぶら下げられております。

 風が強くて寒いし、縛られた所は痛いし、ああ、なんか縄みしみしいってる切れそうこんな所から落ちるのやだああああ!!

 どうしてこうなったー!!! 誰かたすけてーーー!!!






「お、奴さんがおいでなすったぜ」

空の遠くの方を、パーティの剣士が指す。

みるみる間に小さな点が現れ、段々大きくなってきて…あ、あっれ、ちょっとなにアレ、大きすぎやしませんか?

……ドラゴン…?

「やった、久々の大物だ。四本足だな。」

「おお、しかも一角種だ、高く売れるぜ!」

「テメェら、仕留めてから駄弁れ!」

順に、剣士(ギメル)僧侶(アレシャ)狩人(ラート)魔法使い(ミケルド)

 どこぞの大型モンスター狩猟ゲームを彷彿とさせるようなごっつくてむさいおっさん4人がこのパーティ。

ここ2時間で最早急展開すぎて、泣き叫ぶのも疲れました。もうただでさえ鈍い頭も動きませんよ。


というのも、いつものように人の少ない図書館で、一人でまったり読書していたら、次の瞬間こんな山の中に出てたんですよ。

で、魔法使い(ミケルド)が「活餌は召喚するに限る。運ぶ手間ないし」とか状況を説明してくれて、他の3人が出てきたのが貧相でも女だから犯っちゃおうとか言い出して、身の危険を感じて逃げようとしたけどあっさり捕まって縛られて。

とりあえずもういつ獲物が出るかわからないから遊んでる場合じゃないと、崖に吊るされて…今に至る。


轟音というより最早振動に近いレベルの咆哮が体を打ち据える。み、耳痛い。

「予想以上にでかくねぇかあいつ?」

「もう発見されてる。やるしかねぇだろ。いけ、狩人(ラート)!」

「あいよ」

矢が放たれる。が、ドラゴンは翼を捻り、旋回して回避した。

「っち、もう一度」

それより早く、ドラゴンの喉元がちかっと光り、次の瞬間私は吹き飛ばされました。

崖の下から地面に戻れたとはいえ、縛られた状態で受身などとれるはずもなく、息がつまりました。背中が痛いです。

僧侶(アレシャ)!!」

 剣士の慌てた声に意識を必死に向けると、そこには竜に銜えられた僧侶の姿。


    ばっくん。もぐもぐ。ぺっ。

 くそぉ、これ以上好き勝手させるk

    ひゅん。ぐちゃっ。

 ひっ、助けてくr

    ごしゃっ。

 がおおおおお。


 凄惨すぎて、脳が見たものを認識するのを拒否しているんだと思う。

あっという間に、僧侶、狩人、剣士は挽肉も真っ青な事態になってしまいました。

そして、魔法使い(ミケルド)が、呪文を唱えようとした時、ドラゴンの吐いた炎に焼き尽くされました。

 え、あ。 …次、わ、私…?

うっかり目を合わせてしまった。ドラゴンが涎を垂らしながらのしのしとこちらへ歩いてくる。

逃げようにも、腰抜けてるし歯の根が合わないぐらい震えてしまっていて動けない。

 大きな顎が開き、血生臭い息が頬を撫でる。

 …うん。私、死んだわ。父さん母さんごめん。




 気づけば、私は図書館の床に倒れていた。

 なんで助かったのかはわからないけど、心底安堵した。ああ、怖かった。

 というか、落ち着いて考えると、現実に大きな空飛ぶトカゲ(ドラゴン)とかいるわけないし!

 きっと夢を見たんだ。夢オチってやつなんだ。ちょっと体が痛いけど、気のせいだ。


 家に帰って風呂に入ろうと鏡を見て顔がひきつった。


 逃げたときに捕まり、縛られていた腕には痣がくっきり。

 岩肌に擦った傷が、露出してた部分にいくつもできていた。

 見えないけれど、背中も青くなってるんだろうな…。

 …あれは夢だ。夢だったんだ。夢だったってことにしとこう。


 教訓。現実はつまらない方がいい!

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