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第9話 豚の脇腹

 いやー、それにしても、右を見ても左を見ても、太った人ばかりだ。


 小太りから、力士レベルまで様々な太っちょ達がひしめき合っている。


 道行く人たちはまず、オレを見て残念そうな顔をした後、相棒の二人を見て喉を鳴らす。


 いやもう、慣れたよ。皆、食いしん坊なんだ。


 門を抜けてからまっすぐと続く大通り。道の左右には屋台が沢山出ている。


 お店の九割は飲食店だ。そう、皆食いしん坊だから!


 太っちょ達がお行儀よく順番待ちをしているのを眺めていると、皆、大抵二十個から三十個食べ物を注文する事に気づいた。そう、皆大食漢だから!


 大通りから左右に伸びる道の幅もかなり広めだ。


 そりゃそうだ。太っちょと太っちょがすれ違う時に、道が狭いとすれ違えないもんな。そう、皆―― いやもうええか。


 それにしても、この道を歩くって事だけでもちょっとした危機だ。


 何故なら、この大通り、沢山の太っちょ、肉の塊がゆっくりと移動している。少しでも立ち止まろう物なら足元が見えない太っちょさんたちに押し潰されてしまうのだ。


 先程から、あわやって場面が二度ほどあった。それからは、二人ともオレの肩と頭の上に乗っけて移動している。


 押し潰される危険は減ったけど、今度は逆に食べたそうな視線がブーくんに集まっている。


 ブーくんもそれに気づいたのか、少し震えている様だ。


 そんな視線に気がつかない振りをしてやっと宿屋を見つけた。


 ベッドの絵柄とジョッキの絵柄が描かれてる看板がぶら下がっていた。


 油が注されてないドア開けると、ふくよかなおばさんが出迎えてくれた。


「はい、いらっしゃい。ようこそ、豚の脇腹へ」


 すごい名前の宿だな……。柔らかそうだけど。


「一人と二匹なんですけど泊まれますか?」


「その二匹も同じ部屋で寝るのかい? 部屋を汚さずに綺麗に使ってくれるなら二階の角の一人部屋を使ってもいいよ。一泊二食付きで五十銅貨だよ」


 ん? 銅貨? それより、忘れてたけどオレ達、無一文だったな。それに紙幣価値もわかってないし……。どうしようか。


 今晩はベッドで寝たいので、なんとかここへ泊まりたい。ここも、門番のおじさんと同じようにスキルで切り抜けられないかと思い。スキルを使っておばさんのギフトリストを見てみた。



 ---------------------------------------------------



 徳        293P


 ギフトリスト

 1 お肉     10P

 2 お肉      5P

 3 お肉      7P



 --------------------------------------------------- 


 いやホントに、ここの人たちはお肉大好きだな。いや、オレも好きだけどさ。偏りすぎっていうかさ。


 早速、一番優先順位が高いお肉を選択して、背負袋の中から取り出すように見せかけながらスキルを使った。


 ギフトと小声で呟くと同時に、さっきおじさんに渡したお肉とよく似たお肉が現れた。


 よく似てるけど、さっきのお肉より更に大きい気がする。


 そのお肉を、おばさんによく見えるように持ち上げながら、これを宿代として受け取ってもらえませんかと言った。


「あら! それは銅印ブタじゃないの! しかも、大きなブロック肉! そうだねえ、これなら十日間食事付きでここに泊まっていってもいいわよ」


 なぬ! そんなに泊まれるのか。結構な値段するんだな。それのちょっと小さい物を門番のおじさんに渡したけれど、ちょっと過剰だったかな。でも、今後の関係がより良いものになるのなら文句はないんだけどさ。


 食事の二食は、おばさんの旦那さんが起きてる時ならいつでも作ってくれるんだって、時間とか決めてないらしい。それでも、ある程度の時間には沢山人が来て食事を取っていくみたいだけどね。そりゃあんまりバラバラに来られると困るわな。


 良い物をくれたサービスって事で、相棒二人の食事代をタダにしてくれた。おそるべし、銅印ブタ!


 この日は、もう疲れていたので外出はせず、宿の自室でこれからの事を考える事にした。


 一人前のサンタクロースになる為と言われ、無理やりこの世界に旅立たされたものの、唐突だったし、これからの事はノープランだ。


 異世界定番のギルドがあるなら登録して稼ぐっていう手もあるし、他にもこのスキルで皆を喜ばせて、還元ポイントでオレも成長する事で一人前のサンタクロースに一歩でも近づくっていうものありだと思う。


 よし、これからの事は明日考えよう! おわり!


 面倒くさい事は明日にまわして、食堂で夕食を食べてブーくんを抱き枕替わりにして眠った。


 意識が遠くなっていく中で、歯ぎしりと寝言でブヒブヒ言ってるのが聞こえたような気がした。

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