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第18話 いつかのクリスマス

 風が冷たくなって、店の外に出るのが嫌になって来た頃、ふと気が付いた。


「あぁ゛~、さみぃー。もう冬か……ん? おぉ! 冬と言えばクリスマス! オレの出番じゃんか!」


 正直、自分の職業忘れてたな。


 この街には、クリスマスなんて考え方がない事は、既に調査済み。


 だから、今年! 今年からクリスマスの存在を広めるんだ。


 やったるでー。



 〇 〇 〇 〇




 三角の屋根の天辺に腰かけた人影がいた、全身赤色の服装でポケットに手を入れてガタガタ震えている……オレだ。初仕事に逸る心を抑えきれずに、外に出ていたら、身体が芯まで冷えてしまった。


 ステータス画面には、22時00分と表示されている。




 そろそろ始めますか。


 店の中に居た二人に声を掛ける。


 そろそろ行くよ。


 コッコさんは、すくっと立ち上がると敬礼を返した。


 ブーくんは、ブッ! と一鳴きしてヨロヨロと立ち上がった。口の周りは涎まみれだ。熟睡していたらしい。


 二人とも、赤いサンタファッションになっていた。ねぇ、それどこから持って来たの?


 まぁいいか、オレも仕上げにでっぷり太ったおじいさんに変身した。イメージはサンタクロースのおじいさんだ。向こうの世界のクリスマスも今日なのかな?


 そんな事を考えながら、屋根の上をこそこそと移動する。


 街は酒場以外は静まり返っている。


「プレゼント喜んでくれるといいなぁ」


 呟きながら、一軒目の家の煙突を三人で覗き込んだ。一応確認してからじゃないと、暖炉に火が入ってたら三人とも丸焼きになっちゃうからね。


 オレ以外は、美味しい匂いさせちゃうかもしれないけど……今の話なし。オレが碌でもない事考えちゃったからか、コッコさんは顔色悪くなっちゃってトサカがへにゃりと萎れてるし、ブーくん涙目。


 オレは二人の言いたい事はほどんど分からないのに、二人はオレの考えてる事まで分かるのか? 普段も? あぁ、クリスマスマジックか。


 

 〇 〇 〇 〇



 煙突内部を、そろりそろりと降りて行く。


 身体を支えるために両手両足で突っ張ってるんだけど、これ力加減が難しいな。力入れすぎたら煙突壊しちゃいそうだ。


 下まで降りて、ふぅっと息を吐きながら、次はブーくんだなと上を見上げるとすぐ真上にブーくんのお尻があった。


 むぎゅ。


 ……こらこらこらこら!


 オレが合図してから、次にブーくんが来る予定だったじゃないか!


 なんでもう来ちゃってるの!?


 顔の上に乗ったままのブーくんを掴んで床に降ろすと、ブーくんは恥ずかしそうに上目使いでオレの方を見ていた。


 彼としては、早く降りて来てしまった事よりも、オレの顔にお尻から着地してしまった事が恥ずかしかったらしい。


 まぁ……、いいよ。許すよ、柔らかかったし……。


 オレとブーくんが何ともいえない空気を醸し出していると、上からコッコさんがふんわりと降りて来て、オレの頭の上にうまい具合に着地した。


 さて、初めての他人の家拝見のコーナーだ。


 家主に無断で、お家に上がりこむのは緊張するな……。


 ブーくんはしきりに鼻をフゴフゴいわせて、何かの匂いを嗅ぎ取っている。


 こらこらこら、勝手に晩御飯の余り物をつまみ食いするんじゃない。


 コッコさんがブーくんのお尻を突いて注意してるけど、ブーくんは、うっとおしそうにしっぽでピシピシとやり返して抵抗している。


 いやいや、ブーくんが全面的に悪いですからね。ここ知らない人の家だからね。


 もっと遠慮しなさい!


 家の中を忍び足で進み、何度目かのドアを開けた所で、子供部屋を見つける事が出来た。


 どんな寝顔なのかな? と気になって覗き込んでみると、ブーくんに負けないぐらい涎をダラダラ垂らして寝ていた。無茶苦茶気持ちよさそうだ。


 でも、見た目はやっぱり太った子供、性別は……どちらでもいけそうな顔してるわ……。


 女の子なら、お人形さんとかあげたいんだけどな。


 さて、スキルを使って……。


 この子は、何が欲しいのかな?


 ---------------------------------------------------



 種 族:人間

 固有名:ヒカクテーキ=ジョッセイ

 性 別:女

 年 齢:6歳

 称 号:良く食べよく寝る子

 職 業:

 出身地:ポテリーナ

 拠 点:ポテリーナ

 状 態:肥満 

 大 事:お母さん、お父さん、メアリーちゃん、お肉 セルライト

 固 有:もたれかかる

 スキル:衝撃吸収



 徳        127P


 ギフトリスト

 1 お菓子     7P

 2 お菓子     3P

 3 お肉      4P



 --------------------------------------------------- 



 食べ物ばかりじゃんか。いやわかってましたよ。逆にそうじゃないと不安になるよ。食欲ないの? 病気なの? ってな!


 それにしても、この子、女の子だったのか。変わった名前だな、はっきりしてほしいよ! まったく。


 人形とかプレゼントしたかったけど無理だな……。


 オレの能力だと、このリストにない物は具現化する事は出来ないから仕方ないか。


 


 枕元に、飴ちゃんの詰め合わせを綺麗なラッピング付きで置いておいた。メリークリスマスと書いた、メッセージカードも置いておく。


 意味なんてわからなくてもいい。ただセットで覚えてほしいんだよな。


 隣の部屋のベッドには、ぐーぐぅといびきを掻いてる豚が二匹いた。


 失礼。さっきの子のご両親でした。


 両親には、銅印ブタでいいかな。リストはお肉で埋まってるし。


 生のお肉をリボンで縛っただけで、枕元に置いた。





 次の家はと……。


 ここか。肉屋だな。


 流石に肉屋だからか、肉は望んでなかった。甘いお菓子がリストに載っていたのでバケツに入ったプリンを二つ枕元に置いておいた。


 朝起きた時何かわからなくて、混乱するかもしれないけど。甘い匂いがするから、まぁだいじょうぶだろう。


 きっと我慢できなくて、顔からバケツにインしたり、手をスプーン替わりにして、むさぼり食べるんだろうなー。見たいなー。


 ってこらこら! ブーくん! ダメだよ、それはお肉屋さんの分だよ!


 ブーくん本人はかなり我慢してるつもりなんだろう。口の中に唾液がちゃぷちゃぷ言うぐらい溜まってるよ。凄いな……それこぼさないでね。コッコさんは自分の羽を広げて弟の涎が床にこぼれ落ちないようにしてる。


 それって……、オレだけかな。凄い愛情を感じるんだけどな。


 転生する前の世界で、オレが子供だった頃。鼻水を垂らしてたんだ、その時に、鼻水垂れてるぞっていって自分の親指で鼻水を取ってくれたじいちゃん、元気してるかなー。


 さて、子供はっと、いたいた。


 ん? 手に棒状の何かをしっかり握りしめて寝てるぞ。


 なんだこれ? 焼き鳥!?


 この子寝てるのに、焼き鳥を離さないのか!


 とんだ食いしん坊だ!


 なっ! そう思うだろ二人とも!


 そんな気持ちを込めながら、二人を振り返ると、コッコさんは全くですという表情で頷いていたが、ブーくんがいない。どこいった?


 見つからないので、子供へのプレゼントを決めようと、子供へと向き直ると、焼き鳥の先っぽのお肉を器用に取り外そうとしてるブーくんを見つけた。


 ブーくんは控えめに、ブッブッと鼻息を漏らしながら、作業を続けている。


 一つだけならいいよね。って声が聞こえてきそうだけど、それ泥棒と一緒ですからねブーくん。


 あーぁ、食べちゃったよ。コッコさんは、弟が仕出かしてしまったミスを見て、弟の替わりに頭を下げていた、何度も何度も、いやもういいよ。この子供には、大目にプレゼントする事にするよ。


 リストを見ると全てお肉だったので、銅印ブタを二ブロック出して、一つは枕元に、もう一つは枕と入れ替えた。


 頭部の体温で、ドンドン脂がとけて、大好きなお肉の油まみれになれるぞ! うけけけけけけ!








 









 って夢を見たんだけど、二人ともどう思う?


 オレはさっきまで見ていた夢の内容を、二人に聞かせて感想を求めたが、ブーくんは前足を使わずに後ろ足だけでお腹を地面にこすりつけながら前進する技に夢中で全然聞いていないし、コッコさんは身振り手振りで、意見を伝えようとしてくれていたが、二割ぐらいしか伝わってこなかった。


 なんなんだろう。手が羽だからかな?


 関係ないか……。



 

 誰かオレに、理解力のプレゼントしてくれないかな……。







 ちょっと遅めの、メリークリスマス!


 いや、なんか言わないといけない様な気がしたんだ。


いやこれ、どいひー。

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