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第六話 いざ、過去へ

まいど、らくだです。いよいよマリア達の初仕事!

 荒木から報告を受けたマリアは、部屋の隅に置いてあるファックス型の機械のカード差込口に、巡視員に与えられているカードを通した。すると機械から用紙が一枚出てくる。巡視員はこの機械から仕事の詳細を受け取るのだ。

「この紙に邪馬台国の異変についての詳細が記されているのですね?」

 マリアの後ろから紙を覗いていた小次郎が訊く。

「イエース」

 マリアはニッコリと頷いた。

 そこにはこう記されていた。


 ――報告書 (西暦247年)当時の九州一帯を治めていた邪馬台国が、何かの原因で南九州を治める狗奴国に滅ぼされ、邪馬台国の女王卑弥呼、並びに侍女の壱与が殺されました。今のところ歴史変動の波はそれほど大きくありませんが、近く歴史に大きな歪みをもたらすと推測されます。至急原因をつきとめ、事態の収拾にむかってください。


「殺された人、何ていう名前デスか? 漢字読めまセーン」

「ヒミコとイヨだよ。まったく……大丈夫かよ、こんなのがカシラで」

 武蔵が心配そうな顔で言った。

「しょうがないデース、ワタシ日本に来たのこれが始めてダヨ」

 マリアは膨れっ面で咎め、武蔵の肩をしたたかに叩いた。

「痛……こいつ、バカ力女め!」

「バカとは何デスか! バカと言ったほうがバカ デース!」

「二人ともやめてください」

 呆れて小次郎が割って入る。

「喧嘩をしている場合じゃないでしょう」

 小次郎はまるで学校の先生のように二人を叱った。

「ス、スミマセン」

 マリアと武蔵は声を揃えて反省した。

 小次郎は溜息をつき、言った。

「とにかく、我々は邪馬台国が滅びる以前の時代に行き、そこで何が起こったのかを突き止めるべきですね」


 任務を受けたマリア一行が向かったのは、『タイム・ゲート』を開くための部屋”ステーション・ホール”。内部は、訳の分からない機械で埋め尽くされていて、意外と狭い。

「服装は、転送後に自動的に当時の物に替えられます」

 係りの職員の男が説明した。

「ではお二人ともお入りください」

 職員は武蔵と小次郎を促した。

「お、おう」

「初仕事ですね、緊張します」

 武蔵と小次郎は心配そうに頷いて、部屋に入った。

 と。

「ちょっと待ってくだサーイ!」

 呼びとめたのはマリアだった。

「何です?」

「ワタシも行きマース! 昔の日本見てみたいデス」

 マリアは職員に訴えた。

「巡視員がついて行っちゃいけないなんて規則はありまセン」

「し、しかし……」

「ノー・プロブレム! ワタシは平気デース」

「………」

 職員は困って考え込んでしまった。

「おい、あの女何言ってんだ?」

 武蔵は小次郎に問いかけた。ステーション・ホールの中では、外の会話は聞こえない。

「多分、私達について行くと言っているのでしょう」

 小次郎はげんなりとして答えた。

「冗談じゃねえ! あんなのがついてきたら余計ややこしくなる」

 武蔵は吐き捨てた。

「私も、そう思いますが……」

 小次郎も同意するが、どこか諦めムードだ。

「う〜ん……分かりました」

 やがて職員はマリアの気迫に圧されるかたちで承諾し、「それではこれを腕に着けて行って下さい」と、綺麗な装飾が施されたブレスレットをマリアに渡した。

「何デスか、コレは?」

 マリアがそれを手に取り、珍しそうに眺めながら訊くと、職員は「タイム・ゲートを作り出す装置です」と答えた。これがあると、自在に過去の空間にタイム・ゲートが作り出せるのだと言う。

「身の危険を感じたら、すぐに返ってきてください」

「分かりマーシタ、アリガト」

 マリアは礼を言って、職員の頬にキスをした。

 職員は見る見るトマトのように赤い顔になり、まるで夢を見ているような生気の抜けた顔になった。

「さ、行くデース」

「げ、やっぱり来やがった!」

 ホールにマリアが詰め入ってきて、武蔵が悲鳴をあげた。

「三世紀の日本、楽しみ〜」

 マリアはルンルンと鼻を鳴らした。

「仕様がない……諦めましょう」

 小次郎は楽しそうなマリアを見て苦笑した。

『それでは転送を開始します』

 ホール内に職員のアナウンスが響いた。

『場所は西暦246年の北九州です、邪馬台国が滅びる一年前になります。準備はよろしいですか?』

「おう!」

 と武蔵。

「いつでも」

 これは小次郎。

「OK〜」

 マリアもブレスレットを左手に着けて答える。

『では、転送を開始します』

 職員が言うと、ホール内が一瞬にして白い光に包まれた。

 全員が眩しさに目を瞑る。

 そして、光が収まったとき、三人は見知らぬ場所に立っていることに気づくのだった。


                                    * 


 鼻をくすぐる草の香りに武蔵が目を開けると、そこは広大な草原であった。遥か遠くに山脈が見えるだけで、下は延々と草の海だ。

「みんな、居るか!?」

 呼びかけると、まず小次郎が答えた。

「ここです」

 足元から声がした。そして、草の中から小次郎がむくりと体を起こす。

 武蔵は彼が立ち上がるのに手を貸した。

「これが、当時の服装ですか」

 小次郎は言って自分の服の袖を引っ張った。生地は麻と動物の皮で出来ている。肌触りがよく、柔らかいので動きやすい。

「刀は持っているな」

 武蔵は自分の腰の物と小次郎の物を見比べて安堵した。

「彼女は、何処でしょう?」

 小次郎は辺りを見渡した。マリアの姿はない。

「近くに居るはずだが」

 武蔵も言って彼女の姿を探す。

「居ましたよ!」

 小次郎が声をあげる。

 案の定、マリアは近くの草の中に倒れていた。気を失っているらしい。彼女もやはり、武蔵たちと同じような服装をしていた。しかし、彼女はズボンの代わりにスカートを穿いていて、その丈がまた短い。小次郎は、目のやり場に困っていた。

「ったく、面倒かけさせやがって」

 武蔵は内心安心して駆け寄った。しかし、近寄った武蔵はマリアを見て息を呑んだ。マリアの髪の毛が黒くなっている。

「う……うぅん」

 マリアは二人の声に反応して喉を鳴らし、そして目を覚ました。目も黒い。

「あ、コジロー、ムサシ……グッモーニン」

 マリアは微笑んで身を起こした。

「おまえ、髪が黒くなってるぞ。それに目も」

「え?」

 武蔵の指摘に、マリアは上着の内側から手鏡を取り出し、自分の顔を映した。とたんに歓喜の声をあげる。

「ワオ! まるで日本人みたいデース」

 髪や目をくしたのは、当時の人々に違和感を与えないための、センターの配慮だろう。マリアは、はしゃいで飛び起きた。その勢いでスカートが捲れ、下着が見える。武蔵と小次郎は慌てて目を伏せた。

「ん〜?」

 マリアは武蔵たちの反応に、始めて自分の下半身を見た。そしてさらにはしゃぐ。

「アハハハ、セクシー・ドレース」

 言いながらクルクル回転する。スカートが余計ヒラヒラして、小次郎は後ろを向いた。

 と、小次郎の隣で、何かがドシンと音を立てて倒れた。

「はぁ、武蔵!」

 倒れたのは武蔵だった。小次郎は倒れた武蔵を見て悲鳴をあげる。

「どーしマシタ?」

 異変に気づいたマリアが駆け寄る。

 見ると、倒れた武蔵は、鼻血を流しながら白目をむいていた。

「こ、これは……」

 小次郎は、その様子を見て、どっと疲れを覚えた。

「ナルホド」

 マリアは頷いて、こう明言した。

「ムサシは意外とスケベ デスね〜♪」

武蔵はスケベ!? 次回をお楽しみに!

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