第五話 異変
どうもCIPHERでっす(^o^)/楽しく書かせて頂きました!
世界時空管理センター各地で、問題が発生した。−中国支局−
「大変です!」
監視員が叫んだ。
「どうした。」
歴史監視部の長が返す。
「時空に大きな歪みが生じました!」
監視員は忙しそうにキーを打ち込みながら答えた。
「歪みだと?何が起きた!」
「現在、出来る限りの調査をしております。」
中国支局監視部の監視員十五名が、一斉にキーを打ち出した。
「大きな歪み……。歴史を変えてしまうほどの歪みか?」
部長が眉をしかめて呟く。
「これは!?」
監視員が思わず、と言った感じで叫んだ。
「調査が完了しました。」
別の監視員が真剣な顔で言う。
「A.D.193年。『劉備』ロストしました。」
「ロスト……だと?原因は!」
部長が訊いた。
「それが……、良く解らないのです。」
「解らんとはどう言う事だ。」
部長の問いに、監視員が首を振る。 それも解らないと言う事だろう。
「ただ、」
また別の監視員が口を開いた。
「ただ、解ることは、何者かが巧みに隠蔽しているのではないかと。」
「隠蔽だと?何が起こっているのだ!!」
−ヨーロッパ支局−
「オイオイ。冗談じゃない。」
監視員が呟いた。
「どうしたんだ?」
別の監視員が訊く。
「面倒だなぁ。ギリシアの英雄様が消えちまった。」
世間話でもする様に、重大な事を口にする。
「何だって!?」
「ウルサイぞ!」
部長が怒鳴った。
「いえね部長。」
監視員が
「大変な事が起こりましたよ。」
脳天気に答え、キーを叩き始めた。
「お前の“大変”は当てにならないからな。」
部長は疑いの目を向ける。
「ホントに大変なんですよ。『ヘラクレス』の反応が消えました。」
キーを叩きながら、監視員が言う。
「何だって!?すぐに調査を開始しろ!」
「もうやってますよ!」
監視員全員が一斉に答えた。そして、日本支局
「破阿!」
小次郎の横薙が閃いた。
「!」
ガキッと音を立てて武蔵が受ける。
そして小次郎を押し返すと、間髪入れずに右手に持った木刀を、斜めに振り下ろす。
小次郎は体勢を崩しながら、自分の木刀で弾き上げると、すぐに峰を返して、己の脇腹目掛けて繰り出された、武蔵の左の木刀を受ける。
そして一足跳び退き、体勢を立て直す。
武蔵も構えを直した。
そのまま、二人は暫く動こうとしない。
不意に武蔵が木刀を下ろし、構えを解いた。
「ふう。この様に思い切り動いたのは久方ぶりだ。」
「まったくです。」
言いながら小次郎も構えを解く。
二人が蘇ってから、すでに三日が経っていた。
その間二人は、エージェントとしての心得やら、職員の顔合わせやらで自然とストレスを溜めていた。
今日は、ストレス発散も兼ねて、二人で木刀打ちの稽古をしていたのだ。
「エージェントと言っても、あまり仕事は無い様ですからね。」
「他の者が仕事をしているのだろう。」
考えてみれば、二人は未だ“新人”なのである。
新人の二人には、まだ仕事は回ってきていなかった。 と、そんな話をしていると、
「何!?」
牧野の声が響いてきた。
牧野は自分に掛かってきた電話をとった。
その電話を掛けてきた主の言葉が、牧野を驚かせ、思わず叫んでしまった。
「どう言う事です。」
牧野は、ディスク用の電話が映し出した、立体映像に説明を求めた。
「だから、言った通りですよ。」
映し出されたのは、日本支局局長、荒木の温和そうな顔だった。
「言った通りって、『劉備』も『ヘラクレス』も、我々日本支局の管轄外でしょう。何故私が調査をしなければならないんですか!?」
局長に対して牧野は怒鳴った。
「まあまあ、落ち着いて。」
荒木は牧野を宥めると、
「それがね、中国支局もヨーロッパ支局も、調査は行ったようだよ。 それで判明した事なんだけどね。どうやら、『劉備』と『ヘラクレス』の失踪前に、日本人と思われる男が居たそうなんだ。」
と、説明する。
「日本人……。そいつは妙だ。」
牧野は顎に手をやり、真剣な顔で言った。
「そうでしょう?悪いけれど、牧野君に調査をお願いしたいのですよ。」
荒木は命令ではなく、“お願い”をする。 こう言われると、牧野は断れない。
「解りました。それでは、すぐに調査を開始いたします。」
「宜しくね。」
牧野は敬礼をしながら、電話を切った。
「はあ。」
牧野は溜め息をついた。
「どうしマシタ?」
マリアが牧野の顔を覗き込む。
いつの間にか、マリアと武蔵小次郎の三人は、牧野の叫び声に集まっていたのだ。
「なぁに、少々厄介な仕事が入っちまってな。」
そう言いながら牧野は、ヨレヨレのワイシャツとくたびれたネクタイを直し、上からコートを羽織った。そして、手櫛でさっと髪を直し、
「それじゃあ、行ってくるぜ」
と言いながら颯爽と部屋を出ていった。
「眉目は良いのだがな。」
武蔵が呟き、牧野の背中を見送る。
「エージェントとして蘇り、既に三日。仕事らしい仕事が無い様ですが?」
牧野を見送ると、小次郎はマリアに訊ねた。
「ハイ。新人にはナカナカ仕事が来ないデス。」
マリアが悲しそうに言う。
「やはり。その様な事だと思いましたよ。まあ、仕方の無い事です。」
小次郎はフォローを忘れない。しかし、
「これだけ何も無いと、退屈だな。」
武蔵が言ってしまう。
「sorry。ごめんなサイ……。」
「おいおい。落ち込むなよ。」
武蔵が慌ててマリアを励ます。
「この世界の事を学ぶのも楽しき事です。」
小次郎が武蔵に助け船を出した。
「そうだ。知らぬ事だらけだからな。」
「おい、御三人方。」
突然男の声が、三人の会話に割って入った。
「ハイ?何デスか?」
マリアが男に訊ねる。 男はマリアと同じ巡視員だ。
「局長から電話だぞ。」
「ハーイ!O.K!ありがとデス。」
マリアは男に感謝の言葉を言うと、自分のディスクに行き、電話をとった。
すると、たちまち局長の立体映像が現れる。
「おぉ。」
武蔵が驚いて一歩退く。
「いつ見ても馴れませんね。」
小次郎も眉をしかめた。
「ガハハハッ。この位で驚いては困るよ。」
荒木は二人の反応に楽しそうに笑う。
それにつられる様に、マリアの機嫌も治った様だ。 一仕切り笑うと
「所で、」
荒木が切り出した。
「マリア君達の初仕事だ。」
「仕事デスね!?」
マリアが思わず叫んだ。待ちに待った初仕事だ。
「そうだよ。退屈だっただろう?本来なら、僅か三日で仕事が来る事は無いのだけれどね。」
荒木が説明を始める。
「色々と問題が生じてしまってね。ここだけの話」
立体映像の荒木が、手の平を口の横に当てて、内緒話をする様に身を屈め
「エージェントが一人、逃亡してしまったのだよ。」
日本支局の体面に関わるからだろうか。
荒木は他の人間に聞こえない様に、声のトーンを落として言った。
「其奴を捕獲、若しく斬るのが仕事か?」
武蔵は腰の刀に手をやり、低い声で荒木に訊いた。
小次郎も、冷静な顔をしてはいるが、そっと刀の柄に手を置いた。
「いやいや、そんな物騒な仕事じゃないよ。」
荒木が明るい声に戻って言った。
「君達の初仕事は、邪馬台国の調査だ。ちょっとした仕事だけれどね。やってくれるかい?」
「what?ヤマタイ国?」
マリアが訊く。
「そう、邪馬台国だ。大昔の日本だよ。」
荒木が答えた。
「調査……ですか。」
小次郎が腑に落ちない様子で呟いた。
「少し気になる事があってね。もちろん、異変があればその場で対応してもらうよ?」
荒木が説明の補足をする。
「まあ、何にせよ、動かぬより良かろう」
武蔵がニヤリと笑う。
「そうですね。」
小次郎も同意した。
「二人はやる気のようだね。マリア君はどうだい?」
荒木はマリアを見やりながら言った。
「of course!もちろんデス!がんばりマス!」
マリアはそう言いながわ敬礼する。
「うんうん。」
荒木は満足そうに頷くと、
「頑張ってくれ給えよ。」
そう言って電話を切った。
さあ、次回はどうなるか! らくださん、ターッチ!!