第十話 邪馬台の支配者
どぉもー(^o^)/ CIPHER2連続で登場! ま、理由は深く考えず。行ってみましょう!
「コジローがいないヨー!」
この日の朝が、マリアの叫び声で始まった。
「何だぁ?」
武蔵が不満そうに起きてきた。目をこすりながら、欠伸を噛み殺す。
「大変だヨ!コジローがいないヨ。」
武蔵の様子などお構い無しに、マリアが武蔵の襟首を掴む。
「お前!離しやがれ!」
「コジローが……」
マリアの手に更に力が籠る。
「良い加減にしろ!」
武蔵がたまらず叫んだ。
「どうした!」
伊日留が走り込んでくる。
後ろには那癸が居る。二人とも、何があったのかと心配そうな顔をしている。
「何でもねぇ。小次郎が居ないってんで、マリアが取り乱してるだけだ。」
武蔵が面倒臭そうに二人に説明した。
「何でもなくないヨ!」
「ぐっ」
武蔵の襟が更に締まる。武蔵の顔がドンドン青ざめていく。
「オイ那癸!二人を引っ剥がすぞ!」
「うん!父ちゃん!」
伊日留親子に引き剥がされ、少し冷静になったマリアと武蔵が、向き合って座っている。更に伊日留親子が二人の間に座った。
「で?一体どうしたんだ?」
伊日留がマリアに説明を求める。
「起きたらコジロー消えてた。」
マリアが難しそうな顔をしながら答える。
「それだけか?」
伊日留が呆れ顔で更に訊く。
「ソレだけじゃなくて、何カ……。何カ違うヨ!」
マリアがまた取り乱してた。
「何が違うんだ馬鹿馬鹿しい!小次郎も餓鬼じゃねえんだ。一寸姿が見えないだけで心配してどうする。」
武蔵がマリアに言い聞かせる。
「でも……。何カ違うんだヨ。」
マリアが泣き出しそうな顔になってしまう。
「オイオイ、泣くなよ?」
武蔵が上半身だけで退け反る。
「泣かないヨ。ただ、何カ、上手く言えないだけダヨ。」
マリアは上手く言葉に出せなくて、焦ってしまっているようだ。
「マリア姉ちゃん。何か悪い予感でもするのか?」
那癸がマリアに何となく訊いてみた。
「YES!悪い予感!ソレ言いたかったデース!」
那癸の言葉が、自分の言いたかった事と一致して、マリアは大喜びで叫んだ。
「本当に悪い予感がしてるのかよ?」
マリアの様子を見て、武蔵がボソッと呟いた。−卑弥呼宮−
「あの男、怪しい者ではないと申すのか?」
卑弥呼が壱与に訊いた。訊いたと言うにはあまりにも強い口調である。
「はい。あの者は、私を狗奴国の刺客から守って下さったのです。」
壱与は、卑弥呼のこういう態度に馴れているのだろう。
卑弥呼の目を真っ直ぐに見返して言った。
「ほぉ。壱与を救ったと?」
卑弥呼の年老いた顔に、意地悪そうな笑みが浮かんだ。
「はい。」
壱与はそれに気付いてはいるが、何の反応も示さずに答える。 それを見て卑弥呼はニヤリと笑うと、
「可笑しいではないか。」
と、壱与に言い放つ。
「えっ?」
壱与が反応した。目で
「それは何故?」
と問う。
「可笑しいであろう?何故あの男は、この卑弥呼宮の敷地内に入ってきたのだ?」
卑弥呼は尚もニヤニヤと笑っている。
「そ、それは、道に迷われて……。」
壱与は小次郎に言われた理由を口にする。
「道に迷ったと?更に可笑しい。」
「何がそんなに可笑しいと?」
壱与は耐えかねて訊いた。
「解らんか?この宮殿に入るには、見張りの兵士と2メートルもの柵を越えなければならないのだぞ?道に迷っただけで、入り込むのは不可能であろう。」
卑弥呼が勝ち誇った様に捲し立てる。
「しかしそれは……」
「何じゃ。言うてみい!」
壱与が言い掛けたのを、卑弥呼が遮る。
「いえ……。何でもありません。」
壱与は目を伏せ、消え入る様に呟いた。
「しかし、あの小次郎と言う男。何か裏がありそうじゃのう。」
卑弥呼がニヤニヤと笑いながら言う。壱与には反論する事が出来なかった。
「もしや、狗奴国の刺客ではあるまいな。」
卑弥呼が突然、突拍子もない事を言い放つ。
「そんな!それは……」
「無いと言い切れるのか!」
またも、壱与が言い切る前に卑弥呼が遮った。
「しかし、小次郎さんが刺客なら、仲間を斬る必要はなかったでしょう。」
壱与は、今回は引き下がらずに卑弥呼に言った。
「それはどうかな?狙いは其方ではなく、妾かも知れんぞ?むしろその方が自然ではないか?」
「それは……」
確かにそうなのだ。
壱与は卑弥呼に仕える巫女の一人に過ぎない。
その壱与に刺客を向けるよりは、女王である卑弥呼に刺客を差し向けるのが自然である。
壱与は何も言えなくなってしまった。
「そうじゃのう……。厳しく糾弾せんといかんなぁ。」
卑弥呼が、意地悪そうに言う。
「糾弾なんて……。小次郎さんが何か悪いことでもしたのですか!?」
流石に壱与が反論する。 が、
「この戯けめが!!」
卑弥呼に一喝されてしまい黙り込んでしまった。
「何故、女王である妾ではなく、其方なぞに刺客が放たれるのじゃ!」
突然卑弥呼がヒステリックに怒鳴り出す。
「それは……」
以前から怒鳴る事はあったが、特に最近は酷い。
あまりの剣幕に、壱与は何も答えられない。
どうして良いか解らず、ただ目をキョロキョロさせるばかりだ。
「何じゃ!言うてみよ!狗奴国から其方に刺客が放たれる訳を!」
更に卑弥呼はわめき続ける。
「それは……。」
卑弥呼に怒鳴りられ、それしか言えない。
「何故言えぬ!それは、壱与、其方が妾に代わって女王になろうと言う噂が真実だからであろう!」
「決してその様な!それは只の噂に過ぎません!」
卑弥呼の発言に驚きながら、壱与が慌てて言う。
「嘘をつくな!もう良い!退れ!」
そう言いながら卑弥呼は、首に掛けた匂玉を壱与に投げつける。
神聖な匂玉を投げつけると言う事は、それだけ苛立っている証拠だ。
こうなったら手が付けられない。 壱与は小さな声で
「はい」
と呟くと、あまり音を立てない様に、ユックリと室を出ようとする。
それすらも気に入らないのか、卑弥呼が
「疾く退らぬか!」
と言い放つ。
その声を背に受け、壱与は室を出ていった。
壱与が室を出ていったため、室内は卑弥呼一人になった。
「壱与め。妾に代わって女王になろう等、思い上がりおって……。」
卑弥呼の顔は醜く歪んでいる。
「このままでは済まさぬぞ……」
歯噛みをしながら、卑弥呼が呟いた。
結局は壱与に対する嫉妬であった。
女王ではあるが、年老いてしまった卑弥呼。
しかし、壱与は若く美しく、鬼道に通ずる力も、卑弥呼に匹敵するものがある。
「さて、あの小次郎と言う男。どうしてやろうか……。」
クククッと卑弥呼が笑い出す。邪悪な笑いであった……。
卑弥呼ってば意地悪ババァですねぇ(-_-;) そんじゃまぁ、次に期待って事で!