【機体解説】ゼロード用イノセント / リジー用ミリアポッド【裏方の機体たち】
ミリアポッド(リジー機)
開発コード:EMX04
頭頂高:14.5メートル
フレーム:多脚型
動力:通常型リアクター
武装
E粒子ランチャー
レールガン
E粒子ブレード
その他装備
増加粒子タンク
自動追尾式補助アーム
レーザートーチ
電子戦装備
工作用アタッチメント
強化型操縦支援AI
概要
パンドラ隊工作隊長、リジー・オタッキーが使用するカスタム・ミリアポッド。
工作隊へ配備された通常型ミリアポッドを基礎として、リジー自身が機体制御、火器管制、姿勢補正、電子戦システムなどへ独自の調整を加えている。
標準機が装備するリニアキャノンとE粒子ライフルは撤去され、代わりにE粒子ランチャーとレールガンを搭載。標準武装のうち、E粒子ブレードのみが引き続き装備されている。
大型火器は通常腕部と補助アームへ分担して保持する。補助アーム側の火器は操縦支援AIによる自動追尾に対応しており、リジーが機体の移動や工作作業、電子戦へ意識を向けている間も、独立して敵を捕捉できる。
E粒子ランチャー、レールガン、増加粒子タンクを同時に搭載した状態では、機体重量は通常型ミリアポッドを大きく上回る。高速機動や追撃には向かないが、四脚フレームの安定性によって重量と砲撃反動を受け止め、一定範囲を長時間守り続ける重装防衛機として機能する。
本機の追加武装は恒常的な装備ではない。拠点防衛、艦艇護衛、要所封鎖などの火力を必要とする任務でのみ装着され、通常の工作任務や移動任務では、E粒子ランチャー、レールガン、増加粒子タンクを取り外す。
重装備を外した状態では、工作隊共通規格のレーザートーチ、電子戦装備、補助アームを活用する、本来の工作支援型ミリアポッドへ戻る。
●E粒子ランチャー
高密度のE粒子を圧縮して発射する大型粒子兵器。
大型CS、機動要塞、艦艇などの重装甲目標に対する攻撃のほか、複数の敵が接近する経路への制圧射撃に使用される。
威力が高い反面、粒子消費と発射時の熱負荷も大きい。リジー機では増加粒子タンクを装備することで、通常型ミリアポッドでは困難な長時間の粒子砲撃に対応している。
通常腕部と補助アームのどちらでも保持できるが、レールガンと同時に使用する場合は、片方を自動追尾式補助アームへ預ける。
●レールガン
電磁力によって実体弾を高速射出する大型火器。
粒子防御を持つ敵や、E粒子ランチャーでは効率よく破壊できない構造物に対して使用する。発射時の反動は大きいが、四脚フレームを踏ん張らせることで、安定した射撃が可能。
E粒子ランチャーと異なる性質の攻撃を同時に行えるため、敵は粒子防御と実体弾防御の双方を要求される。
移動しながらの精密射撃は苦手だが、拠点防衛では地形や構造物へ脚部を固定し、固定砲台に近い精度で使用できる。
●E粒子ブレード
通常型ミリアポッドから残された近接兵装。
敵に接近された場合の自衛手段として使われるほか、障害物や大型部材の切断にも利用される。
リジー機は重装備状態での格闘戦を想定していないため、敵を積極的に追いかけて斬る兵器ではない。砲撃位置からの離脱経路を確保するための、最後の防御手段として扱われる。
●増加粒子タンク
通常型ミリアポッドが持つ大型粒子タンクへ、さらに追加される外装式タンク。
E粒子ランチャーの連続運用、自動追尾式補助アーム、電子戦装備へE粒子を供給する。
防衛戦では長い戦闘時間を想定しているため、瞬間的な出力よりも総容量を重視している。重量と被弾時の危険性が増すことから、通常の工作任務では取り外される。
●自動追尾式補助アーム
工作隊所属機に共通して搭載される補助アームを、リジーが火器運用へ対応させたもの。
本来は大型部品の保持、瓦礫の除去、機体修理、レーザートーチによる切断や溶接などに使われる。
リジー機では強化型操縦支援AIと接続され、保持したE粒子ランチャーまたはレールガンを独立して照準できる。機体正面とは異なる方向へ射撃できるため、接近する敵への対処や、複数方向の同時警戒に優れる。
完全な無人兵器ではなく、攻撃対象と射撃許可はリジーが指定する。AIはその範囲内で目標の追跡、射撃姿勢の維持、味方を射線から外す処理を担当する。
●レーザートーチ
工作隊所属機の共通装備。
装甲板や構造材の切断、溶接、損傷した機体の救出、閉鎖された隔壁の開放などに使用される。
出力を上げれば兵器としても使用できるが、射程が短く、戦闘用レーザーほどの照準性能も持たない。リジー機においても、主用途は工作と応急修理である。
●電子戦装備
通信解析、妨害電波、敵設備への侵入、味方機との情報共有などを担当する工作隊共通装備。
リジー機では操縦支援AIと密接に接続されており、取得した敵の位置情報を自動追尾式補助アームへ送ることができる。
敵基地の制圧や設備奪取では、火力によって防衛部隊を抑えながら、同時に電子的な侵入を行う。
●強化型操縦支援AI
リジーが最も重点的に改良しているシステム。
リジーはアニムスキャナーへの特別な適合率を持つパイロットではない。そのため本機は、操縦者の反応を直接機体性能へ変えるのではなく、AIが入力を解析し、歩行、姿勢制御、照準、反動吸収、補助アーム操作を補完する方式を採用している。
リジーが行う調整も、機体の反応速度を無理に高めるものではない。AIの判断精度、予測処理、火器管制、作業手順の最適化を積み重ねることで、操縦者と機体の間にある能力差を埋めている。
このAIは非常によくしゃべる。機体状態、敵の接近、推奨射撃角度、部品温度、作業工程、整備時期などを絶えず音声で報告し、状況によってはリジーの操作へ訂正や提案を行う。
記録上、AIに人格や自我が発生したと判断できる挙動は確認されていない。会話に近い応答も、リジーが改良した言語処理と状況判断機能によるものである。
ただし、リジー自身がAIへ頻繁に話しかけ、返答を前提として作業しているため、傍目には機体と会話しながら操縦しているように見える。
運用形態
防衛仕様では、E粒子ランチャー、レールガン、増加粒子タンクを搭載した重装移動砲台として運用される。
追撃や格闘戦には向かないが、拠点、輸送艦、作業中の工作隊、避難経路など、動かせない対象を守る任務では高い能力を発揮する。
通常任務では追加装備を外し、補助アーム、レーザートーチ、電子戦装備を中心とした工作仕様へ移行する。追加装備を常用しないことで、移動性、作業性、部品寿命を確保している。
ギンの一口メモ
「ゼロード機は、パイロットの鋭い反応へ機体を合わせたもの。リジー機はその逆で、足りない部分をAIが先回りして埋めている。
見た目は大砲とタンクを積み上げた重たいミリアポッドだけど、内部で一番手が加えられているのは制御ソフトだよ。
AIがよくしゃべるのも、リジーにとっては状態表示の一種らしい。本人も同じくらいしゃべり返すから、格納庫の外から聞いていると、どちらが機体でどちらが整備士なのか分からないけどね。
自我があるかって? 確認されている限りは、よくできた支援AIだよ。少なくとも、ゼロード機みたいに説明のつかない動きはしていない」
イノセント(ゼロード機)
開発コード:EMS01
頭頂高:15メートル
フレーム:標準型
動力:通常型リアクター
武装
レールガン
マシンガン(実弾式/E粒子式)
コンバットナイフ
複合シールド
E粒子ブレード(選択装備)
その他装備
高機動ジェットパックユニット
肩部複合センサーユニット
オプションジョイント
外付け粒子タンク(粒子兵器使用時)
概要
パンドラ隊の防衛隊長、ゼロード・スラッグが使用するカスタム・イノセント。
別部隊で腕利きのパイロットが使用していた中古のイノセントを母体としており、受領時には過去の操縦記録を保存するため、アニムスキャナー周辺の長期学習領域が初期化されていなかった。
その後、パンドラ隊工作隊長のリジー・オタッキーによって、ゼロードの反応速度、瞬間判断力、精神波出力に合わせた改造と再調整が施された。
標準機のリニアキャノンと肩部機銃を撤去し、主武装としてレールガンを増設。両肩の機銃が占めていた部分には、量産型ストラウスと同規格の複合センサーユニットが搭載されている。
さらに背部複合ユニットを高機動ジェットパックへ換装し、重いレールガンを保持した状態でも、高速移動と急激な位置変更を行えるようになった。
リジーは装備の増設だけでなく、レールガン制御、ジェットパック、照準補助、アニムスキャナー感度に至るまで、ゼロード個人の操縦特性に合わせて調整している。
高機動と高火力を両立する一方、レールガンとジェットパックの組み合わせによって重量配分と操縦感覚は標準機から大きく変化している。一般兵が扱いやすい汎用機ではなく、ゼロードが瞬間的な判断によって機体の長所を敵へ押しつけるための、アンバランスでピーキーな機体である。
ゼロードはパンドラ隊の防衛隊長だが、本機に特別な指揮管制装置が追加されているわけではない。後方から部下を指揮する機体ではなく、自ら前線へ出て敵を食い止め、味方が行動する時間と空間を作るための隊長機となっている。
機体の一部には、隊長機を識別するための青紫色の塗装が施されている。
なお、この識別塗装と、後述する異常状態で発生した青紫色のオーラは別のものである。
●レールガン
標準型イノセントのリニアキャノンに代わって搭載された、本機の主武装。
電力によって実体弾を高速射出するため、粒子供給量や粒子攪乱の影響を受けにくい。通常型イノセントの装備としては高い一撃の威力を持ち、一般的なコマンドスーツだけでなく、重装甲機やプラズマリアクター搭載機に対しても有効打を狙える。
機体に対して砲身と弾倉が大きく、取り回しや重量配分に問題を抱える。撃ち切ったレールガンを投棄し、マシンガンやコンバットナイフへ即座に持ち替える運用も想定されている。
ゼロードは遠距離狙撃だけでなく、高機動で敵へ肉薄し、回避困難な距離からレールガンを撃ち込む戦法を得意とする。
リジーによって発射制御、照準補助、機体側の姿勢補正がゼロード向けに調整されている。シミュレーター上では、リジーが出力を通常設定より十三パーセント引き上げた調整も行っているが、これは競技用の仮想設定であり、実機の常用出力ではない。
●マシンガン
レールガンの弾数が尽きた場合や、近中距離で複数の敵と交戦する場合に使用する副武装。
任務に応じて、通常弾を使用する実弾式と、外付け粒子タンクから供給を受けるE粒子式を使い分ける。
実弾式は粒子補給を必要とせず、長時間の哨戒、防衛任務、粒子攪乱下での戦闘に向く。
E粒子式は追加の粒子タンクを必要とするが、火力と装甲への有効性に優れている。プラズマリアクター搭載機との交戦や、短時間で高い火力が必要な作戦で選択される。
●コンバットナイフ
標準型イノセントと同系統の近接戦闘用実体兵器。
レールガンとマシンガンを失った場合にも使用でき、粒子タンクの残量に左右されない。装甲の隙間、関節、センサー、推進器などを狙うほか、敵機の武器や作業アームを破壊するためにも使われる。
ゼロードが戦闘中に意識を失った事件では、機体はレールガンとマシンガンを使い切った後、自らコンバットナイフへ持ち替えて最後の敵を無力化している。
●複合シールド
標準型イノセントから引き継がれた防御装備。
実体装甲によって銃弾、破片、近接攻撃を防ぐ。ゼロード機では、自機だけでなく僚機や輸送対象を守るために使用されることが多い。
機体の緊急防衛AIにも、パイロットが反応できない場合にシールドを展開し、指定された対象や自身を保護する機能が存在する。
ただし、ゼロードが意識を失った状態で行われた一連の戦闘は、単純なシールド展開や自動後退だけでは説明できないと判断されている。
●E粒子ブレード
任務に応じてオプションジョイントへ追加できる選択式の近接兵装。
本機はプラズマリアクターを搭載していないため、使用時には外付け粒子タンクが必要となる。
コンバットナイフより高い切断力を持つが、粒子を消費するため常設装備とはされていない。重装甲機との近接戦闘が予想される場合や、粒子兵器の使用環境が整っている作戦で装備される。
●高機動ジェットパックユニット
リジーが増設した高出力ジェットパック。
レールガンを搭載したことで増加した重量を補い、空中での高速移動、垂直上昇、急制動を可能にする。
標準型イノセントの汎用的な飛行装備より出力が高い反面、重心の変化が大きく、操縦者の入力に対する機体の挙動も鋭い。ゼロードの反応速度と瞬間判断を前提とした装備であり、機体をピーキーにしている主要因の一つである。
機体が損傷した状態でも、推進剤や圧力が残っていれば姿勢変更へ利用できる。プラズマリアクター輸送戦では、損傷したジェットパックの残圧まで使い切り、敵の攻撃を回避しながら反撃へ転じている。
●肩部複合センサーユニット
標準機の肩部機銃を撤去し、代わりに搭載された索敵・射撃支援装置。
量産型ストラウスが使用するものと同一規格であり、レールガンによる長距離射撃、移動目標の追跡、弾道計算を補助する。
標準機より直接迎撃火力は減っているが、遠距離から敵を発見し、レールガンの射線を確保する能力は大きく向上した。
アニムスキャナーと照準補助装置にも接続されており、ゼロードが敵の動きを認識してから発射するまでの時間を短縮している。
●外付け粒子タンク
E粒子式マシンガンやE粒子ブレードを使用する作戦で追加される粒子貯蔵装置。
通常型リアクターでも神経触媒として必要な微量のE粒子は生成できるが、兵器として消費する量までは供給できない。そのため、粒子兵器を使用する場合は母艦や基地で充填された粒子タンクを装備する。
粒子タンクを搭載しない場合でも、レールガン、実弾式マシンガン、コンバットナイフによって戦闘を継続できる。
機体の不自然な挙動
本機には、通常の制御AIやアニムスキャナーの長期学習だけでは完全に説明できない挙動が、複数回記録されている。
初期には、ゼロードが操作するより先に左肩を引いて攻撃を回避する、味方へシールドを向ける、ゼロードが一瞬意識を失った間に瓦礫の陰へ退避する、といった挙動が確認された。
この段階では、前任者から引き継いだ操縦傾向、ゼロードの無意識入力、制御AIの危険予測が原因と考えられていた。
その後の哨戒任務では、ゼロードが約九分間にわたって意識を失っていたにもかかわらず、機体が残敵五機を撃破。損傷した僚機を守り、部下が行動可能であることを確認した後、自力で母艦へ帰投した。
機体には、レールガンの射撃、武器の投棄、マシンガンへの持ち替え、ナイフによる攻撃、帰投経路の選択といった命令が記録されていた。しかし、それらの命令を出した入力元を示す欄だけが空白となっていた。
外部からの遠隔操作や未知のプログラムは確認されず、無人状態で同じ状況を再現する試験を行っても、機体は一歩も動かなかった。
調査中には、ゼロードが機体へ礼を言って背を向けた後、駆動ロック中のレールガン固定アームが動き、空になったレールガンを普段の格納位置へ戻す挙動も確認されている。
軍は本機を一時隔離したが、調査は結果を公開しないまま中止された。機体は通常運用へ復帰する一方、アニムスキャナーが蓄積した操縦傾向、制御AIの長期学習値、異常戦闘時の記録領域については、初期化が禁止された。
自我に類する精神波応答
後に発生したプラズマリアクター輸送戦で、本機の異常挙動に関する統合解析が行われた。
戦闘中、ゼロードはリジーと輸送艦を守ろうとして、アニムスキャナーの制御限界を超える精神波を機体へ流した。その結果、機体は青紫色のオーラを発生させ、通信と通常の操縦記録が途絶する異常状態へ移行した。
この状態でも本機は敵味方を識別し、味方を攻撃せず、敵機のコックピットも狙わなかった。武器、脚部、スラスターを順番に破壊して敵を無力化し、味方機を庇いながら機動要塞クラーケンを撃破している。
解析の結果、暴走を引き起こしたのは機体ではなく、ゼロードが流した過剰な精神波だったことが判明した。
機体側に発生していた自我らしき反応は、過剰な精神波を受け止め、ゼロードの神経系を保護し、彼の意識的な判断が失われた状態でも敵味方識別と他者保護を維持する役割を果たしていた。
軍はこの現象を、
「自我に類する自己維持・他者保護性を持つ精神波応答」
と分類している。
これは人間と同じ人格や感情の存在を証明するものではない。しかし、単なる故障や無作為な制御異常ではなく、本機が「誰を守るか」「どこへ帰るか」「何を攻撃しないか」を選択していたことは、統合解析によって認められている。
輸送戦後、明確な自律戦闘や武器を片付ける挙動は確認されていない。
学習領域は異常なく残っているものの、自我に類する応答が力を使い切って休止したのか、現在も沈黙しているだけなのか、すでに消失したのかは判明していない。
現在も、ごくまれにゼロードの認識より先に攻撃を防ぐような挙動が見られる。ただし、これらはゼロードの無意識入力、長期学習による制御補正、危険予測AIでも説明可能である。
ギンの一口メモ
「標準機のリニアキャノンと肩部機銃を外して、レールガン、ストラウス用のセンサー、ジェットパックを載せたカスタム機だ。
遠距離から慎重に撃つ機体に見えるけど、ゼロードはジェットパックで距離を詰めて、回避できないところからレールガンを撃つ。普通のパイロットが真似をすると、撃つ前に姿勢を崩すか、近づいたところを斬られるだろうね。
リジーの調整もかなり極端だよ。機体を万人向けにするんじゃなく、ゼロードと機体の癖を互いに噛み合わせている。二人が使う限りは強いけど、量産機の改造例としては参考にしにくい。
機体に本当の心があるかって?
それは、まだ誰にも断言できない。ただ、この機体がゼロードを受け止め、味方を避け、守る相手を選んだことは事実だ。
返事をしないからといって、何も聞いていないとは限らない。整備中に悪口を言うのは勧めないよ」




