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大学デビューと揶揄されても

 2限目の講義が終わってすぐ学食に向かったからか、空いている席はそこそこあった。俺はその中でも入り口から一番遠い、端の方にあるテーブル席を選ぶ。一緒に来た友人は昼食を買いに行っている最中で、さしずめ今の俺は場所取りをしているわけだ。俺はリュックの中に入れていたタッパーを取り出す。さらにコンビニで売られているものよりもっと小さいサイズのおにぎりもテーブルに置いた。


「おまたせしました」


 すると、友人が盆に乗せたカレーライスを持ってやって来た。友人が席に着くと、俺もタッパーの蓋を開ける。中に入っているのは、鶏肉と玉ねぎとブロッコリーを炒めたものだ。味付けもケチャップに塩コショウとシンプルにしている。


「いただきます」


 友人は丁寧に手を合わせてからスプーンを持ち、カレーを口に運ぶ。俺も肉野菜炒めもどきを食べ始めた。


公助(コウスケ)、そのタッパーに入っている料理は、何て名前ですか?」


 すると友人はそう尋ねてきた。


「俗にいう『名もない自炊料理』だから、特には……」


「『ナモナイ』ですか。面白い名前です」


 友人は「ナ」にアクセントをつけて、何かそれっぽい呼び方をする。


(カエデ)がそう思うなら、それでいいか……」


 友人こと楓は何と言うか不思議キャラと言うか、この敬語もデフォルトで、相手が同い年や年下であっても、こんな感じで話すのだ。出会ってまだそんな経っていないが、この話し方には慣れた。


「自炊すれば、食費もカロリーも抑えられるからな」


 俺はそう言って、おにぎりをゆっくりと噛みしめる。正直に言えば、この量とボリュームでは物足りない。だが、この出っ張っている腹――太ももとテーブルにすっぽり入り込むくらいの大きさ――、こいつをどうにかしたいのだ。


「ハア……」


 目の前にいる楓は中肉中背の一般的な背格好で、それと比べれば俺はもはや「球体」だ。この事実に、ついため息が出てしまった。




――さて、少しすれば楓もカレーを食べ終わる。


「次の講義まで、まだ時間がありますね」


 楓はそう言って、折り畳み式の携帯電話、いわゆるフィーチャーフォンを眺めていた。


「そのケータイ、不便じゃないか?」


 俺は楓にそう尋ねる。


「はい、凄く不便です」


 すると楓は、当たり前のようにうなずいた。不便だと思っているのにそのまま使っている楓を見て、やはり不思議な奴だと思ったりした。


 そんなことを考えつつ、周りに目を向けると人が増えてきていることに気付く。空いている席を探している人もチラホラ見られた。


「そろそろ行こうか……」


 俺達がずっとここにいたら邪魔になりそうだ。そう思って俺は慌てて立ち上がる。その時、ドスンという音と共にテーブルが動いた。俺の腹が、テーブルの下の部分にぶつかったのだ。


「つっ……」


 痛くはないが、そんな変な声が出てしまう。しかも周りの視線が、俺の方に集まっていた。あまりの恥ずかしさに、自分でも顔が真っ赤になっているのが分かった。早くこんなみじめな外見とはおさらばしたい、本気でそう思った。


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