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第5話「死神と試験本番」

 試験当日。


 クロハは緊張した面持ちで、死神課に向かった。

 俺も一緒だ。


「緊張してるか?」

「していない」

「嘘だろ」

「……少ししている」


 クロハの手が、少し冷たい。

 珍しく緊張しているのが分かる。


「大丈夫だ。練習したんだから」

「ああ」

「俺もついてる」

「……ありがとう」


---


 試験会場は、白い空間だった。

 机と椅子が並んでいて、学校の教室のようだ。


「よし、行ってこい」

「ああ」


 クロハは筆記試験の席についた。

 俺は廊下で待機だ。


---


 ガラス越しに、試験の様子が見える。


 クロハは真剣な表情で問題用紙に向かっていた。

 時々首を傾げたり、天井を見上げたりしている。


 難しい問題でもあるのだろうか。


---


 一時間後。


「筆記試験終了です」


 クロハが試験室から出てきた。


「どうだった?」

「……一問、分からなかった」

「どんな問題?」

「『人間のカップルがイチャイチャする場所として不適切なものを選べ』」

「……」

「選択肢が、A.公園、B.カフェ、C.映画館、D.葬儀場」

「Dだろ」

「私はAだと思った」

「なぜ」

「公園は子供もいる。イチャイチャは教育に悪い」

「……まあ、一理あるけど」

「違うのか」

「葬儀場でイチャイチャする人はいないよ」

「……なるほど」


 クロハは少し落ち込んでいた。


「まあ、一問くらい大丈夫だろ」

「……そうか」

「他はできたんだろ?」

「たぶん」

「なら大丈夫だ」


---


 次に、生活シミュレーション。


 試験官が、様々な場面を再現した。


「まず、レストランでの注文をしてください」


 クロハは練習通りにこなした。


「ハンバーグをください」

「お飲み物は?」

「水でいい」

「……『水でいい』ではなく『お水をお願いします』と言ってください」

「……お水をお願いします」


 敬語で減点されそうになったが、なんとかクリア。


---


「次、電車の乗り方です」


 模擬の改札機が現れた。


 クロハはICカードをタッチして通過した。


 ……逆向きに。


「出口じゃなくて入口から入ってください」

「……」


 やり直し。

 今度は成功。


---


「最後、エレベーターに乗ってください」


 模擬のエレベーターが現れた。


 クロハはボタンを押して、エレベーターに乗った。


「降りる人が先です。待ってください」

「……」


 また減点。


 クロハは段々と表情が曇ってきた。


「大丈夫だ。細かいミスだ」

「……」

「合格ラインは超えてるって」

「……そうか」


---


 結果発表。


「生活シミュレーション、75点。合格です」

「……ギリギリだ」

「合格は合格だ」

「……」


 クロハは少しホッとした顔をした。


---


 最後に、関係性確認の面接。


 これは、俺も一緒に受ける試験だ。


 面接官は……シロガネ課長だった。


「鈴木誠一だな」

「はい」

「クロハとの関係を述べよ」

「……同居人です」

「それだけか」

「……」


 俺は言葉を選んだ。


「大切な人です」

「どのように大切なのか」

「一緒にいると楽しい。幸せです」

「……」


 シロガネは俺を見つめた。

 白い目が、何かを見透かすようだ。


「クロハが見えるようになったら、何をしたいか」

「一緒に外を歩きたい。カフェに行きたい。季節を感じたい」

「それは、お前の願いか」

「俺の願いであり、クロハの願いでもあります」


 シロガネは黙って頷いた。


---


「クロハ」

「はい」

「この人間と、これからも共に過ごすつもりか」

「……はい」

「後悔はないか」

「ありません」

「なぜだ」

「……」


 クロハは俺を見た。


「彼といると、生きている気がするからです」

「生きている? お前は死神だ」

「分かっています。でも、彼といると、心が動くのです」

「……」

「三千年生きてきて、初めてです。こんなに心が動くのは」


 シロガネは長い沈黙の後、小さく頷いた。


「……そうか」


---


 面接が終わった。


 結果は……


「合格だ。おめでとう」


 シロガネが言った。


 クロハの目が、大きく見開かれた。

 俺も、ホッと息をついた。


「……本当ですか」

「嘘は言わない。お前は合格だ。顕現許可の最終審査に進める」

「……ありがとうございます」


 クロハは深くお辞儀をした。


---


「誠一」

「なんだ」

「受かった」

「ああ、受かったな」

「嬉しい」

「俺も嬉しい」


 クロハは少し笑った。

 珍しく、はっきりとした笑顔だった。


「あと一歩だ」

「ああ。あと一歩だ」

「最終審査を通れば……」

「外に出られる」

「一緒に」

「一緒に」


 俺たちは顔を見合わせた。


 あと少し。

 もう少しで、クロハと一緒に外に出られる。

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