表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/50

第47話「死神と写真」

「写真を撮ろう」


 ある休日、俺はそう提案した。


「写真?」

「二人の写真だ。あまり撮ってないだろ」

「……そうかもしれない」

「記念に残そう」


---


 クロハは少し不安そうな顔をしていた。


「どうした?」

「……私は、写真に写れるのか」

「え?」

「死神だ。もしかしたら、写らないかもしれない」

「……」


 確かに、考えたことがなかった。

 死神は写真に写るのだろうか。


「でも、クロハは顕現権を得て、人間に見えるようになっただろ」

「ああ」

「だったら、写真にも写るんじゃないか。たぶん」

「たぶん、か」

「試してみないと分からないけど、たぶん大丈夫だと思う」

「……」

「人に見えるなら、カメラにも見えるはずだ」

「……なるほど」


 クロハは少し納得したようだった。


「試してみよう」

「……分かった」


---


 俺はスマホを構えた。


 クロハが隣に立つ。

 銀髪が風に揺れている。


「撮るぞ」

「ああ」


 カシャ。


---


 画面を確認した。


 ……写ってる。

 ちゃんと、クロハが写ってる。


「写ったぞ」

「本当か」

「見てみろ」


 クロハは画面を覗き込んだ。

 自分の姿を確認して、目を丸くした。


「……写ってる」

「だろ? 顕現権のおかげだな」

「ちゃんと写ってる」

「よかったな」

「……」


 クロハは少し嬉しそうだった。


「もっと撮ろう」

「いいよ」


---


 色々なポーズで写真を撮った。


 並んで立っているやつ。

 手を繋いでいるやつ。

 クロハがピースをしているやつ。


「ピースとは何だ」

「記念撮影の時にやるポーズだよ」

「なぜやるのだ」

「……習慣かな」

「よく分からないが、やってみる」


 クロハはぎこちなくピースをした。

 ……可愛い。


---


 撮った写真を見返していると、クロハが画面を覗き込んできた。


「この機能は何だ」

「フィルターだよ。写真を加工できる」

「加工?」

「ほら、こうすると可愛くなる」


 俺は犬の耳が付くフィルターをかけてみた。

 クロハの頭に、ふわふわの犬耳が乗っている。


「……何だこれは」

「可愛いだろ」

「私は犬ではない」

「分かってるよ」

「なぜ犬の耳が生えるのだ」

「可愛くするためだよ」

「……理解できない」


---


 次に、キラキラ光るフィルターをかけてみた。


「……なぜ光るのだ」

「綺麗に見えるだろ」

「私は元から光っていない」

「盛るんだよ」

「盛る?」

「実際より可愛く見せること」

「……」


 クロハは困惑した顔をしていた。


「人間は変なことをするな」

「そうか?」

「現実と違うものを作り出して、何が楽しいのだ」

「楽しいんだよ」

「理解できない」

「まあ、死神には分からないかもな」

「……」


 クロハは首を傾げていた。


「でも、お前が楽しいならいい」

「俺というより、みんなやってるよ」

「みんな変なことをしているのか」

「そういうことになるな」

「……人間界は不思議だ」


---


「アルバムを作ろう」

「アルバム?」

「写真をまとめて、本にするんだ」

「……いいな」

「二人の思い出が残る」

「作りたい」

「フィルターなしの、素のクロハでな」

「当然だ。犬耳は不要だ」


---


 後日、アルバムを作った。


 これまでの写真を選んで、順番に並べる。

 カフェでの写真、海での写真、花見の写真。

 色々な思い出が詰まっている。


「できた」

「見せてくれ」


 クロハはアルバムをパラパラとめくった。


「……」

「どうだ」

「……いいな」

「だろ?」

「たくさんの思い出だ」

「これからもっと増やそう」

「ああ。増やしたい」


---


「リビングに飾ろう」

「飾る?」

「一番いい写真をフレームに入れて」

「……これがいい」


 クロハが選んだのは、二人で海を見ている写真だった。

 夕日を背景に、手を繋いでいる姿。


「いい写真だな」

「ああ。一番好きだ」

「加工なしの、素の写真がいいな」

「当然だ。変な耳は付けるな」

「分かってるよ」


---


「誠一」

「なんだ」

「写真は、時間を止めるのだな」

「え?」

「今の瞬間を、ずっと残せる」

「……そうだな」

「死神には、そういう概念がなかった」

「そうなのか」

「でも、今は分かる。大切なことだ」

「……」

「お前との時間を、全部残したい」

「……俺もだよ」


---


「お前の魂、輝いている」

「写真のおかげか」

「思い出を共有したからだ」

「そうか」

「これからも、たくさん写真を撮ろう」

「ああ。撮ろう」

「ただし、変な加工はするな」

「分かったよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ