表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/50

第42話「死神とクリスマス」

 12月25日。

 クリスマスの日だ。


「誠一、今日はクリスマスだな」

「ああ」

「人間界では特別な日だと聞いた」

「そうだな。恋人と過ごす日だ」

「……恋人」

「俺たちのことだよ」

「……そうか」


 クロハは少し照れたように頷いた。


---


「私は、恋人らしいことをしてみたい」

「恋人らしいこと?」

「ああ。調べた。クリスマスには、恋人同士がすることがあるらしい」

「へえ、何を調べたんだ」

「まず、手を繋いで歩く」

「それは普段からやってるな」

「次に、イルミネーションを見る」

「今日行く予定だ」

「それから……キスをする」

「……」

「そして、一緒に夜を過ごす」

「……」


 クロハは俺をじっと見つめた。


「全部やりたい」

「……分かった」


---


 夜、イルミネーションを見に行った。


 駅前の広場には、巨大なクリスマスツリー。

 色とりどりの光が、夜空に輝いている。

 周りにはカップルがたくさんいた。


「綺麗だな」

「ああ。綺麗だ」


 クロハは目を輝かせて、イルミネーションを見つめていた。

 光が銀髪に反射して、キラキラと輝いている。


「死神の世界には、こういうものはないのか」

「ない。光を飾る習慣がない」

「そうか」

「人間は、なぜ光を飾るのだ」

「……綺麗だからじゃないか」

「それだけか」

「それだけでいいんじゃないか」

「……なるほど」


---


 俺たちは手を繋いで、イルミネーションの中を歩いた。


「誠一」

「なんだ」

「周りの恋人たちを見ろ」

「……」


 確かに、周りのカップルは色々なことをしていた。

 腕を組んでいる人。頬にキスしている人。抱き合っている人。


「私もやってみたい」

「え? ここで?」

「ああ」


 クロハは俺の腕に自分の腕を絡めてきた。

 密着する形になる。


「こうか」

「お、おう」

「あのカップルは頬にキスしていたな」

「お、おい、ちょっと……」


 クロハは背伸びして、俺の頬にキスした。


「!」

「これでいいか」

「い、いや、良いけど、恥ずかしいから……」

「なぜだ。周りもやっている」

「いや、そうだけど……」


 俺は顔が熱くなった。

 周りの人がチラチラこっちを見ている気がする。


---


 帰宅後、ケーキを食べた。


 買ってきたクリスマスケーキ。

 いちごとクリームがたっぷり乗っている。

 中には、チョコレートムースの層も。


「美味しい」

「だろ?」

「このスポンジ、ふわふわだ」

「クリスマスケーキは特別だからな」

「イチゴも甘い」

「旬だしな」

「クリスマスはいいものだな」

「そうだな」

「毎年やろう」

「もちろん」


---


「プレゼント交換をしよう」

「プレゼント?」

「クリスマスは、恋人同士がプレゼントを交換するのだ」

「……」


 俺は用意していたプレゼントを取り出した。

 小さな箱だ。


「開けてみろ」


 クロハが箱を開けた。

 中には、ピアスが入っていた。

 小さな銀色の、星の形のピアス。


「……綺麗だ」

「似合うと思った。クロハの銀髪に合うかなって」

「……ありがとう」


 クロハは早速ピアスを付けてみた。

 銀色の星が、耳元でキラキラと輝く。


「どうだ」

「すごく似合ってる。可愛い」

「……そうか」


 クロハは少し照れたように微笑んだ。


---


 クロハもプレゼントを差し出した。


「私からもだ」


 俺が開けると、腕時計が入っていた。

 シルバーのシンプルなデザイン。でも、高級感がある。


「これ、高そうだな」

「三ヶ月かけて貯めた」

「三ヶ月!?」

「お前から貰った生活費を少しずつ貯めた」

「……」

「迷惑か」

「迷惑じゃない。すごく嬉しい」


 俺は時計を付けてみた。

 腕にぴったりフィットする。


「似合うか」

「似合ってる。格好いい」

「……よかった」


 クロハは安堵したように息をついた。


---


 夜も更けて、俺たちはソファで並んで座っていた。


「誠一」

「なんだ」

「恋人らしいこと、全部やったか」

「……まだだな」

「何が残っている」

「キスと、一緒に夜を過ごすこと」

「……」


 クロハが俺に寄りかかってきた。

 銀髪が俺の肩にかかる。甘い香りがする。


「キスしよう」

「……いいよ」


 俺はクロハの顔を両手で包んだ。

 紫色の瞳が、俺を見つめている。


 そして、唇を重ねた。


 柔らかくて、温かい。

 ケーキの甘さがかすかに残っている。


「……っ」

「……」


 唇が離れて、また重なる。

 今度は少し深く。舌が触れ合う。


「……誠一」

「……」

「もっと」


 クロハが俺の首に腕を回した。

 体が密着する。柔らかい胸が俺の胸に押し付けられる。


「……っ」

「お前の心臓、うるさい」

「そりゃそうだろ」

「私のもうるさい」

「……」


 俺たちはしばらく、抱き合いながらキスを続けた。


---


「一緒に夜を過ごす、というのは」

「ん?」

「こうやって一緒にいることか」

「……まあ、そうだな」

「他に何かあるのか」

「……い、いや、今日はこれでいいんじゃないか」

「そうか」


 クロハは俺の腕を抱きしめて、目を閉じた。


「今日は楽しかった」

「俺もだよ」

「来年もやろう」

「もちろん」

「再来年も」

「ずっとやろう」


---


「サンタクロースは本当にいるのか」

「え?」

「人間界では、サンタがプレゼントを配ると聞いた」

「……いるかもしれないな」

「本当か」

「夢があっていいじゃないか」

「……そうか」


 クロハは少し考え込んでいた。


「死神がサンタになれないか」

「え?」

「子供たちにプレゼントを配る死神」

「それは……ちょっと怖いかもしれない」

「そうか」

「でも、俺にはプレゼント配ってくれたよ」

「……そうだな」


---


「お前の魂、今、すごく輝いている」

「クリスマスのおかげか」

「私と一緒だからだ」

「……そうだな」

「メリークリスマス、誠一」

「メリークリスマス、クロハ」


 俺たちは二人で、温かいクリスマスの夜を過ごした。

 来年も、再来年も、ずっとこうしていたいと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ