第4話「死神と試験勉強」
一週間後。
クロハの元に、死神課から通知が届いた。
「来た」
クロハが封筒を持って、俺の前に立っていた。
紫色の瞳が、少し緊張しているように見える。
「開けろよ」
「……」
「怖いのか?」
「怖くない」
「じゃあ開けろ」
「……」
クロハは封筒を見つめたまま、動かなかった。
「俺が開けようか?」
「……いや、私が開ける」
クロハは深呼吸して、封筒を破いた。
中から、一枚の紙が出てきた。
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『人間界顕現許可申請に関する通知
クロハ殿
貴殿の申請について審査した結果、以下の条件を満たした場合に限り、許可を与えることとする。
一、人間界適応試験の合格
二、魂管理レポートの提出
三、上記条件を満たした後、最終面談を実施
試験は三日後に実施する。詳細は別紙を参照せよ。
死神第七課課長 シロガネ』
「……試験か」
「どんな試験だ?」
クロハは別紙を広げた。
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『人間界適応試験 概要
試験内容:
第一部 人間界常識テスト(筆記)
第二部 人間界生活シミュレーション(実技)
第三部 対象人間との関係性確認(面接)
合格基準:
各部70点以上、合計240点以上
備考:
対象人間(鈴木誠一)の同席を認める』
「俺も参加できるのか」
「そうらしい。関係性確認の試験があるからだ」
「なるほど」
俺は少しホッとした。
クロハ一人で試験を受けるより、一緒にいられる方が安心だ。
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試験に向けて、俺たちは勉強を始めた。
「人間界常識テストか……どんな問題が出るんだ?」
「過去問がある」
クロハは薄い冊子を取り出した。
「死神のための人間界常識クイズ100問」と書いてある。
「死神用のテスト問題集があるのか……」
「ある。需要は少ないが」
「そうだろうな」
俺は問題集をパラパラとめくってみた。
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『問題1:人間が朝に行う挨拶として適切なものを選べ。
A. おやすみなさい
B. おはようございます
C. いただきます
D. さようなら』
「これは簡単だな。Bだ」
「ああ。これくらいは分かる」
『問題15:人間が食事の前に言う言葉として適切なものを選べ。
A. ごちそうさま
B. いってきます
C. いただきます
D. ありがとう』
「Cだな」
「分かる」
基本的な問題は大丈夫そうだ。
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しかし、後半になると問題が難しくなってきた。
『問題67:日本における一般的な結婚式の形式として誤っているものを選べ。
A. 神前式
B. 教会式
C. 仏前式
D. 冥界式』
「Dだ」
「冥界式……死神の世界の結婚式か?」
「ある。だが人間界にはない」
「そうだろうな」
『問題82:人間が体調不良の際に行う行動として不適切なものを選べ。
A. 病院に行く
B. 薬を飲む
C. 魂を調整する
D. 安静にする』
「……Cか」
「そうだ。人間は魂を調整できない」
「当たり前だ」
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問題集を最後まで解いた。
クロハの正答率は……
「85点か」
「合格ラインは超えている」
「でも、間違えた問題もあるだろ?」
「……ある」
「どの問題?」
クロハは少し恥ずかしそうに目を逸らした。
「問題48だ」
「どんな問題?」
『問題48:人間のカップルが公共の場で行う愛情表現として一般的なものを選べ。
A. キス
B. 手を繋ぐ
C. 抱き合う
D. 魂を融合させる』
「答えはBだ」
「私はAだと思った」
「……まあ、Aもありっちゃありだけど」
「そうか」
「一般的にはBだな。日本では」
「なるほど」
クロハはメモを取っている。
真剣に勉強している姿が、なんだか可愛らしい。
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次に、生活シミュレーションの練習。
「実技試験ではどんなことをするんだ?」
「分からない。だが、人間界での生活を再現するらしい」
「買い物とか、外食とか?」
「たぶん」
俺たちは、想定される場面を練習することにした。
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場面1:レストランでの注文。
「俺がウエイター役をやるから、注文してみろ」
「分かった」
俺はテーブルを挟んでクロハの前に立った。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか」
「……」
クロハは黙っている。
「クロハ?」
「……何を頼めばいいのだ」
「メニューを見て、好きなものを頼むんだよ」
「好きなもの……」
「例えば、ハンバーグとか、パスタとか」
「では、ハンバーグを」
「かしこまりました。お飲み物はいかがなさいますか」
「……水でいい」
「お水ですね。少々お待ちください」
俺は演技を終えた。
「こんな感じだ。分かったか?」
「分かった。難しくはない」
「よし」
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場面2:コンビニでの買い物。
「コンビニで買い物するシミュレーションだ」
「コンビニ?」
「あの、24時間営業の店だよ」
「ああ。前に見たことがある」
俺は棚に見立てたテーブルを用意した。
「欲しいものを取って、レジに持っていく」
「分かった」
クロハはテーブルから「商品」を取った。
「レジに行く」
「はい、いらっしゃいませ。……えーと、150円です」
「……」
クロハは財布を取り出した。
「お金を払う」
「ああ」
「200円出して、お釣りをもらう」
「50円のお釣りです。ありがとうございました」
「ありがとう」
クロハは頷いた。
「これでいいか?」
「完璧だ」
「よし」
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