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フィオナ王女の冒険譚  作者: アイヒカ
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プロローグ

はじめて投稿いたします。


空想の世界を描いてみました。楽しく読んで頂ければ幸いです。


ー約500年程前


 ここは魔王城、玉座の間。

 壁や柱には繊細な石細工がされ、豪華に装飾されているが、派手さはなく重厚感があり、魔王の威厳たるを感じさせる。

 玉座に踏ん反り返って座るのが魔王クロードレイ。黒髪で目つきが鋭く、レベルの低いものであればその目線だけで平伏してしまうほどだ。

 そんな魔王に臆することなく、面前に立つのは大賢者ミハエル。


「魔王クロードレイ、あの者がどこにいるのか分かるか?」


 大賢者ミハエルは魔王クロードレイに問うた。


「おそらく、冥界だろう。そこで魂の眠りにつくはずだ。」

「そうか・・。ならば案内をお願いできないか?」

「任せろ!俺様がほれ込んだミハエルの頼みだからな。案内してやる。」

「こ、こんな時に何の冗談を!?」


 そう、魔王クロードレイは大賢者ミハエルに夢中だった。

 なにしろ、ミハエルは金髪碧眼の美しい女性だった。長いサラサラの髪に、晴れ渡る空のように透き通った青い瞳、桜の花びらのような唇。魔王曰くミハエルに見つめられたら大抵の男は惚れてしまう・・らしい。


 いや、それだけで彼の魔王を惚れ込ませた訳ではない。


「はは、本当のことさ。まあ、お前が言う人類と魔物との共存。その理想が気に入ったのさ。そのせいで、あいつを暴走させてしまったがな。だから、俺様もあいつを追わなければならないのさ。」 


 驚くミハエルを魔王クロードレイはまっすぐに見て言った。

 まっすぐ見て、ミハエルの瞳を見つめて言った。

 魔王クロードレイは高鳴る胸の鼓動を感じる。

 あれ、これもしかしていい感じ・・?

 などど考えていた魔王クロードレイだったが、遮る声が2つ。


「ま、魔王様!いつも勝手なことを!あなた様がいない間、我々はどうしたら・・。」

「ミハエル!君が行くなら僕も一緒に行こう!」


 話に割って入ったのは、魔王の側近アンデットのヤークと勇者バルトだ。


「すまない、バルト。あの者が眠りにつくとしても、500年後に復活する。私はどうしても放っておくことが出来ないんだ。」


 やれやれと勇者バルト。バルトには分かっていたミハエルが一度決めたら決して曲げないことを。行くと言ったら一人でも行くと言うのだろう。


 だが、しかし、だ。


「この世界には君が必要なんだミハエル。そして僕にとっても・・、君は大切な存在なんだ。行くというなら僕が代わりに行こう!」


 え!?なになに、僕にとって大切な存在って何?どゆことー?っとつっこみたい魔王クロードレイ。


「ありがとう、バルト。だが、あの者に対抗できるのは私の魔力だけだ。必ず、帰ると約束する。」

「俺様がついているからな。勇者よ、安心して待っているがいい!」


 ふふん、勇者め。貴様の出る幕などないのだ。と心の中で叫ぶ。

 大体、あいつは爽やか風イケメンでいかにも勇者って感じが鼻に突くんだよな。

 俺様も生まれ変われるなら、爽やかなイケメンになんて!

 そんな心の声が聞こえたのか否か。バルトはポツリと呟く。


「それが、一番心配なんだけど・・。」


 そんな声を無視して、魔王クロードレイはすくっと立ちあがり、大きなマントを翻してそそくさと旅立とうとする。自身の側近であるヤークに向き直り、一言。


「ヤーク!俺様は貴様を一番に信頼している。皆が困らぬよう、そこのお留守番勇者といろいろと取り決めしておくように!」

「魔王様!そんな無茶ぶりを!」


 かわいそうなようだが、ヤークはそんなことを言いながらいつも魔王クロードレイの尻拭いをしてきた。ヤークが纏っているローブは上質なもので魔王クロードレイがいかにヤークを特別視し、それを与えたものかが見受けられる。


「戻ってきて文句言わないでくださいね!」


 ぐすっと、泣きべそをかきそうではあるが、骨なので涙はでない。

 どうやら覚悟を決めたらしい。


「ミハエル!」


 勇者バルトがミハエルの手を取った。


「これを持って行ってほしい。守護の髪飾りだ。君の危機を一度だけ守ってくれる。」


 ミハエルの手には銀細工の髪飾りがあった。それはミハエルの手に収まるくらいの大きさで薔薇の花を模っている。


「ありがとう、バルト。必ず、必ず戻ってくると約束する。」

「ああ、戻ってきたら話したいこともあるんだ。待っている。」


 こうして、大賢者ミハエルと魔王クロードレイは旅立った。500年後の厄災を滅ぼすために。 

 皆が、2人の帰りを待った。



 しかし、



 2人が帰ってきた姿を見たものは、いない。



 世界を救うことができたのか。


 物語はこの500年後の世界から始まる。








この物語はフィクションです

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