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旦那様のためになにかしてあげたいけど、私は一緒のいてあげることしかできない。
それ以外取り柄の無い人形だから。
旦那様のお人形だから。
見つめていた。
ガラスの筒の中にはそれぞれ、人形の目玉、黒い卵、アンモナイト、ヒトデ、貝、仮面の残骸、布の切れ端、鹿の骨、角、鉛筆、トランプ、白い砂、絵筆、カトラリー、石、人形の手、リンゴ、毛糸玉、古ぼけた手紙、クレヨン、ガラス、紐、枯れた草、燃やした手紙、が集められていた。
「旦那様ってなんでも集めるんですね」
シャーリーは老人を仰ぎ見た。
「なんでもは集めんよ、集めたいモノだけだ」
「楽しいですか?」
「そうだね、なにかが満たされるかな」
「何が満たされるんですか?」
「わからん」
「あの部屋の怖い人形もそうなんですか?」
「ああ、マコンデ人形か、魔法の研究で集めてるだけだよ」
シャーリーはそーっと扉を開けてみた。
するとこじんまりとした部屋の壁面に摩訶不思議な木彫りの人形がずらりと並んでいた。ねじくれて、歪で、奇っ怪な人形たち。
何か得体の知れないモノの笑い声がどこからともなく聞こえてくる。
人形の影がわなわなと踊っているようにシャーリーには見えた。
「ひっ」
バン!
シャーリーは怖気を感じて扉を勢いよく閉めた。
扉にもたれながら座り込む。
なにあれ……怖い。
思い出すだけで、寒気がした。
「怖いですよねあの人形たち」
「何かが宿っているからな」
「私みたいにですか?」
老人はニヤリとした。
「どうだろうね」
「あっちのお部屋は好きです」
「ああ、だろうね」
あっちの部屋というのは蝶の標本が部屋に飾ってある部屋だった。
世界中の色とりどりの蝶が飾られている。
老人はシャーリーを抱き上げた。