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 雪だるまは溶けてしまっていた。

「かわいそうに」

 シャーリーは変わり果てた姿を見て、言葉をこぼした。

「冬がきたら、また会えるさ」

「なんで、別れなくてはいけないんですか。ずっといればいいのに」

「生きてるからね、全ては生きてるんだ」

「旦那様みたいにですか?」

「ああ」

「私も?」

「そうだとも、生きてるよ」

 シャーリーは老人の脚に抱きついた。

 こうしているとあたたかい。

 横を見ると海が良く見えた。

 そこは館の最上階。煙突型になった部屋で、壁にそって座椅子が設けられ、腰掛けて景色が楽しめるようになっていた。

 窓を開け放つと爽やかな風がシャーリーの金髪をなびかせた。

 深い青と黄色い花のドレスを着ている。

 日がな一日、老人と海を眺めていた。

 ゆっくりと日が流れていくのを感じた。

 なにも話さずに、ただ、景色を眺めて一緒にいることが、心地良かった。ずっとそうしていたいほどに。

 暗くなり、窓を閉めると、ガラスに自分の顔が映り込んでいた。

人形の姿だけが映っている。

 一番奥に三面鏡があるだけの部屋。

 白銀色の髪の毛、金と青のクジャクのドレス。

 一歩、一歩、近づいて行く。鏡の中には黒と薄紫のドレス、バラが飾られた帽子、ダークブラウンの髪、七色の瞳の人形。

 右には金髪に赤いベルベッドのドレス、大きいつばの帽子を被った人形。

 左には緑色の髪、紫色の生地に白鳥の羽があしらわれたドレスを着た人形。

 鏡の中の自分自身と手を合わせた。ひんやりと冷たい、雪みたいだった。

 自分の姿は好きだった。旦那様が好いてくれる見た目だから。笑顔の私。旦那様に抱かれている私。談笑している私。寝ている私。

 私は幸せ者だ。

 ここには幸せしかなかった。

 旦那様といっしょにいられて、

 生まれてこれて、良かった。

 この幸せはずっとずっと続くのだと、人形は思っていた。

 ずっと、ずっと、永遠に。

 私は幸せなお人形。


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