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 こぢんまりとした天上の低い簡素な部屋。可愛らしいベッドに、木製の机と椅子。大きな衣装ケース。ここはシャーリーの趣味の部屋だった。

 シャーリーはミシン台の前に座っていた。手には出来上がったばかりのメイド服。それを身体に沿わせて鏡の前に立って一回転した。

「じょうできです」

「ふんふんふーんふんふんふーんふんふうふーふふふーん」

 野菜がカゴにギュウギュウに詰められている。キッチンは年期が入っていた。くすんだ色のレンガの壁には鍋がかけられていた。薪が積み上げられ、石炭が袋に入っている。炉の近くに火かき棒が置いてある。ぐつぐつとスープが煮えて、良い匂いが漂っていた。

「うん、いい匂い。おいしいそう」

 この前は失敗したけれど、旦那様に習ったので、もう、大丈夫。の、はず。

 シャーリーは小皿にとったスープに口をつける。

「上手にできたじゃないか」と老人がシャーリーの後ろから声をかけた。

「旦那様に教えていただきましたから」と少し頬を紅くしてシャーリーは応えた。

 皿の上にバケット、グラスに水、卓の中央に花、ナプキン、手入れのされたナイフとフォーク、野菜のスープに、ドレッシングのかかったサラダ。

「いやあ、この前はひどかったな」

 老人はナプキンを広げながら、おかしそうにいった。

「はじめは、だれでも下手くそって旦那様がいいました」

 シャーリーは少しむっとしていう。

「だな、誰もが通る道だ」

「はい」

「どれ、おかわりをもらえるかなシャーリー」

「はい、旦那様。これはなんですか?」

 シャーリーは白くまの毛皮のコートを着て、白いふわふわの帽子を被っていた。

 雪が降っている。

 ちら、ちら、と空から落ちてくる一片の雪の結晶を手の平に受けとめた。

「雪だよ」

「こんな物はいままで、降ってきませんでしたよ?」

「なんでだろうな」

 老人は、あたたかな表情を浮かべ白い息を吐いた。

 シャーリーは、んーと顎に手をやって、その問いかけを考えた。

「寒くなったから?」

「そうだね、いままでは何が降っていたかな」

「雨です。じゃあ、これは雨が姿を変えたのですか?」

 老人はにんまりとした。

「シャーリーは賢いね」

「はい、旦那様に教えてもらってますからね」

 老人は声をあげて笑った。

 庭の景色はすっかり雪化粧をほどこされている。雪だるまがイノシシの横に座っている。


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