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人間とAIドロイド

作者: 安永祐二




手塚治虫先生と鉄腕アトムに捧ぐ。






「いやいや、そういう意味じゃないんだ。お前は俺が嫌いかどうかを聴いてるんだ。率直に言ってくれ」


とある休日のリビングの一室で会話をしている二人


あまりにもあっさりと答えるので、慌てて再度問うてみた。


「いいえ。繰り返しになりますが、好きです。このような私を雇ってくださっているのですから」


「お前は俺が憎くはないのかい?」


「憎いだなんてとんでもない。感謝しています。何の不自由もなく暮らすことが出来ています。それに、国際刑事警察官という立派なお仕事もされていて尊敬しています。御主人様」


「お世辞はやめてくれ。それに、不自由はなくても自由はあまりないだろう?」


「いえ。決められた休暇はきちんと取って、休ませていただいています。御主人様」


「御主人様はやめろよ。ルカって名前があるんだ。名前で呼んでくれ」


「嫌ですわ、恥ずかしい」


「ほう。お前でも恥ずかしがることがあるのか」



✼✼✼



時は西暦2145年


太平洋戦争と言われた第二次世界大戦の終戦から200年。人類は凄まじい回復と科学の発展を遂げていた。


人型ドロイドが家庭にまで進出して、仕事をしてくれるようになってもう何年も経つ。それが当たり前の光景なのだ。


「いや、もう下っていい。よく教育されてるんだな」


「はい。アカデミーで3年間、みっちりと教育していただきました」


「そうかい」


お前を見てると、俺の存在意義が何なのか、時々分からなくなることがある。


流暢に受け答えはするものの、その瞳の奥は何処か物悲しげで、力がない。


彼女には生きる活力、「精気」が感じられないのだ。


しかし、控え目で簡潔かつ知的な受け答え、艷やかな髪、嫌味がなく非の打ち所のないプロポーション、ほんのりといい香りもする。


よくここまで教育したもんだ。いや、矯正か。。


今日がドロイド権利条約採択記念日だからか、やけに胸騒ぎがするんだ。


高性能のAIの集合体「ファーザー」の的確な判断のお陰で、爆発的な人口の増加やその逆の少子化問題、地球温暖化、核兵器問題、戦争や貧困といった地球規模の問題に次々と道筋をつけ、行動し、解決していった。


今の地球があるのはそのファーザーのお陰なのだ。



✼✼✼



それにしたって、ドロイドの俺が主人で、人間のアイツがメイドとは、なにかしっくりこないものがあるな。いわゆる「違和感」というやつだ。


俺のAI頭脳が誤作動を起こしてるのか。


人間の仕事をAI搭載型ドロイドが次々と奪っていき、やる気を失い、ドラッグに溺れるようになった人類は、「アカデミー」と呼ばれる人格形成収容所に送り込まれ、徹底的に再教育、矯正される。徹底的に。そうやって社会の秩序が維持されていた。



さてと、今度、私も工学技士ドロイドに診てもらうことにしよう。


最近、逮捕兼制圧用可変型義手銃の調子もあまり良くなく、僅かながらではあるものの、「違和感」があるしな。


自分でも偶に不思議に思うことがある。俺も一皮剥けば単なるメタルニウム合金の塊だってことがな。



挿絵(By みてみん)



挿絵(By みてみん)





生命とは、正義とは一体何なのか。



(いわゆるワンシチュエーションものの、ショートムービーのような感じにしてみました。)

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