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花束を抱え、神は咲う。  作者: 大石或和
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Epilogue

「遅いな」


 アイロードの右ストレートは、リヴァンによって簡単に見切られ、反撃の一撃を与えられた。


「チッ────────!!!」


 薙ぎ払いと言わんばかりの攻撃を喰らったアイロードは、勢いよく右の壁に吹き飛ばされる。しかし、魔力障壁を展開したことでダメージは最小限に防ぐことに成功した。


 アイロードはリヴァンを凝視する。けれど、何処にも弱点となるような点は見当たらず、どれも有効打には思えなかった。


「ただの腰抜けかと思ったが……意外と妥協はあるようだ。だが甘い」


 中々第二の攻撃を仕掛けないアイロードに痺れを切らし、リヴァンは突撃する。


 筋骨隆々の巨体が迫り、アイロードの生存本能は意識を無視して体を突き動かした。


「危ねえ……あんなん当たったら死ぬぞ!?」


「これを避けるか。だが、次はない」


 アイロードは息を切らしながらも、もう一度リヴァンを見る。どうやら、リヴァンは何か奥義を出そうとしているようで。


 リヴァンの周囲には無数の火の玉が発生した。一つは火球、二つ目は加工され火の矢に。続いて三つ目、四つ目も姿形を変えていった。


「これが、奥義か。確かに、避けるの無理そうだな」


 流石にリヴァンの攻撃準備を見ているだけで、アイロードも避けられる気は起きなかった。


 これが絶望かと打ち果てても良いのだが、それではここまで親友と戦ってきた意味がない。


 親友との約束を違えて死ぬことは、できなかった。


「ああ、やってやるよ!!」


 アイロードは全身に魔力障壁を何重にも作り出し、待ち受けるリヴァンの攻撃に備えた。


 こんな即興の防御だけで耐えられるとは元より考えていない。だが、抗うだけ、争っておきたいと思った。


「準備は良いか?アイロード」


 リヴァンは攻撃の直前、アイロードに問い掛ける。


「いいぜ。これを防いで、一撃でもあんたに当ててやるよ」


「威勢だけは良い」


 アイロード、一か八かの大勝負。


 死ねば負け。生き残れさえすれば、大勝ちだ。


「ではゆくぞ。────【炎劇パレード】」


「──────ッッ!!!!!」


 ついに、リヴァンの奥義は放たれた。


 アイロードは地を踏み、力を振り絞り、それに対抗する。


 何重にも連なる魔力障壁は一枚、また一枚と崩れていき、一分を超える頃には既に半数が失われていた。


 だが、まだ終わってはいない。


 絶えずリヴァンの攻撃は、彼に襲いかかる。


(終われ……終われ…終われ終われ終われ終われ終われ終われ終われ!!終われよ!!!!)


 一枚。また、一枚。


 壊れては次も壊れるの繰り返し。


 とうとう最後の一枚も破壊されてしまった。けれど、リヴァンの攻撃はあと四回残っている。


「ここを絶え切って、奴を────」


 アイロードの生死を賭けたラストアタックは始まった。


「面白い奴め」


 リヴァンの一撃目が放たれた。


 アイロードは右手に【セパレート】を発動させ、眼前に迫る火球をリヴァンの方向に跳ね返した。


 火球は勢いをつけ、主の方へ返る。


 しかし、リヴァンは焦りもしない。


「なに、避けて仕舞えば良いものよ」


 リヴァンは軽く、体を左に捻らせ火球を回避した。


 その刹那、リヴァンが回避した火球は残り三球のうちの一つにぶち当たり、誘爆を引き起こした。


「まさか、これが狙いだったというのか!?」


 リヴァンは爆発に巻き込まれ、ダメージをもろに受けた。


 黒煙は上がり、リヴァンは咳き込む。


 アイロードは残り三つ全てが誘爆したことを確認すると、立て続けて攻撃を行うため、黒煙の中を駆ける。


 黒煙が晴れるその前に、リヴァンの目の前に

現れ、怯む奴に渾身の一撃を叩き込む。


「……え?」


 確かにアイロードにはリヴァンへ右ストレートを叩き込んだ自信があった。しかし、目に映るのは反撃を喰らい初期位置に戻った自分の姿だった。


 リヴァンはまだ咳き込んでいる。どうやら、まぐれで放った一撃のようだった。


 痛みなんてなかった。彼にあるのは朦朧とする意識と、暗闇に覆われていく自分の視界だけだった。


 動くことはできそうになかった。多分骨は幾つか折れている。力も入らない。


 それでも彼には、諦められないものがある。


 目の前で今もなお【天啓の雫】を投与されてしまっている親友や、連れ去られてしまった親友。


(もう、何も怖くない。親友を救えないよりは…………)


 アイロードは薄れゆく感覚の中、ポケットから注射器を取り出すと、一目につかないようにそっと、右手に打ち込もうとした。


 その時だった。


「アイロードを……傷つけるな」


 一才の熱を帯びない言霊が、周囲の生命全てを支配しその場に縛りつけた。


 全員が行動権を失い、ただ一人、声の主である──リギアのみが行動権を得ていた。


 アイロードは力付き、注射器を落とす。彼が最後に見た光景は、白髪に赤のメッシュが入ったリギアだった。


 【天啓の雫】に適合し、圧倒的強者と化したリギアに父リヴァンは感激し彼の新たな誕生を祝福した。


「ああ、リギアよ。お前ならきっと適合してくれると信じていたぞ。さあ、共に新たな世界を築こう」


 出来がいい息子に対しては良き父として振る舞う彼に対し、リギアは冷酷に答える。


「僕はアイロードと共に撤退する。そこを退け」


「駄目だ!!お前のような傑作を、手放すわけにはいかぬ」


 どうやらリヴァンは意地でもリギアを引き止めたいようで、彼はどうにかしてリギアを止めるべく奮闘していた。


 だが返ってくるのはノーばかり。というよりも、彼の発言には到底生命が宿っているようには感じられなかった。


 それもそうだ。死人だったリギアを【天啓の雫】で無理やり生き返らせているのだ。意識がはっきりとするまでに時間はかかるだろう。


「退いてくれよ、父さん」


 絶対に逃さんと研究員を総動員するリヴァンだったが、リギアに圧倒され誰も手出しはできなかった。


「くそ……ならば仕方ない。死して、我が怒りを収めさせよ。────【極炎グヴェイド……」


 リヴァンは実力行使に出た。


 レブノやグロトリアを塵へと変貌させた強大な魔法を、彼はリギアへと向ける。


「はあ……」


 リギアは一度、ため息を吐いた。


 今の彼には優しさが残っていない。ただ目の前で佇む己が敵を殲滅することしか考えていなかった。


 仲間を傷つけられた怒りからか、ただ意識がはっきりとしていないからか、敵にかける情けは残っていない。


 リギアは【虚空】から剣を一本取り出すと、無造作に構えそこに魔力を集中させた。膨大な魔力を上乗せされた刃は、眼前の敵を逃すまいと正確に捉える。


 彼から滲み出る魔力は色を成し、周囲一帯に蒼色と漆黒の螺旋を描いた。


「それが適合したお前の力だというのか、リギア!!!!!」


 本来見える筈のない魔力の具現化、それだけでも相当な恐怖心を掻き立てる。しかし、今更逃げようとしても遅い。


 彼の魔力はリヴァンの逃げ道を絶った。意図せずとも彼の魔力がアイロードを畳まぬようにして、魔力結界を展開した。


「全員を殺すつもりか」


 リヴァンは全てを察し、問う。


「どうでもいい。死ね」


 周囲の様子を気にすることなく、リギアは剣の柄を力強く握りしめた。


「……火種リヴォリア】!!!!」


 リヴァンは先制攻撃を仕掛けた。


 しかしリギアは構うことなく、天に届くかの声量で己の技の名前を叫ぶ。


「【ウィリオン─────────────」



















「──────────アリシュテイン】」















 リギアはリヴァンの胴を一閃する。


 何も起こらない現状に、リヴァンは拍子抜けする。


「不発……か?」


 しかし、すぐさま自身の身に起きている違和感を察する。


「な、何が起きてるんだ、、、体から何かが込み上げて…」


 そう言ったが最後、リヴァンは爆散した。


 リヴァンの体に流れ込んだ膨大な量の魔力は行き場をなくし、周囲に分散して一帯を破壊し尽くした。


「逃げようか」


 リギアは崩壊する実験室からアイロードを連れて早急に脱出した。


 その後彼らが王城から姿を消したことは、公に語られることとなる。【王族殺しの反逆者】として。


 砕け落ちる実験室の中、共に崩壊するリヴァンの体には割れてた注射器の中身が染み込んだという。

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