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花束を抱え、神は咲う。  作者: 大石或和
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Round 2?

『では。お時間となりましたのでリアフィ様、オルデラス様は闘技場フィールドにお集まりください』


 一回戦からそこまで時間は経たないうちに、二回戦の招集はかかった。


 二回戦というか緊急戦?に向かうため、リアフィは選手控え室からフィールド入り口へと向かった。


 入り口からフィールド内を覗くと、反対側には歴戦の猛者と言わんばかりの屈強な体つきの老人が立っていた。絶対強い。


 一般人なら勝てるビジョンすら浮かばないだろうが、リアフィには普通に勝つ様子が見えていた。


 生前のリアフィならば苦戦を強いられ、最悪負けることすらあり得ただろう。しかし、悲しいかな。神と成った今では、騎士団長とやらの隙が見えて仕方ない。


 だが、決してそこを攻撃してはいけない。


 それもそのはず。リアフィが見えているのは紛れもなく、彼を殺す最適解である。攻撃なんてした時には、死んでしまうだろう。


 この試合は始まる前から勝ち確定であるが、真にやるべきことはどうやって騎士団長に敗北宣言をさせるかだ。これ重要である。


「さて、戦いながら考えるか」


 リアフィはフィールドへ歩き出した。


「ほう、君がリアフィ君だね?」


 騎士団長──オルデラスはリアフィの姿を視界に入れると、優しげな口ぶりで問いかけた。


 リアフィも別に彼を邪険にする必要はないとして、親しげに会話を始めた。


「はい。僕がリアフィです」


「先の試合は見事でありましたな。迫り来る輩どもを一撃で葬り去る技は、とても美しかった」


 リアフィはキョトンとした。


 まさか会話を始めて最初に、戦闘についてお褒めの言葉を預かるとは思ってもいなかったからだ。


 多分この人は素直に人を褒めることができる人物であると分かり、やはり殺すことは出来ないと再確認する。


「あれは敵が弱かっただけでしょう。僕なんて、まだまだ修行の身であります。今回は突然の試合のご提案、ありがとうございます」


 オルデラスがとても丁寧な口ぶりであったため、リアフィもそれに応えて、柄でもなく謙遜してみる。


「あれだけお強いのにも関わらず、力を誇ったりもしない。人も出来ておる。何処かの貴族の出かな?」


 また褒められていた。


 オルデラスとやら、何処か察しがいい。相手の発言だけで、家柄をある程度まで絞っている。


 リアフィは直接的な関わりがなかったし、見たのも初めてだった。とはいえ、下手すればオルデラスに素性を見破られてしまう可能性が出てきた。

 

(この試合、やっぱり油断は出来ないな)


 リアフィは感じた。この試合の注意点を。


「さて、リアフィ君。この試合は緊急戦というのは知っているだろう」


「はい」


「本来であれば不戦勝のところを曲げたのだ。勝てとは言わぬ。私に、それ相応の実力を見せておくれ。それが、今回の勝利条件じゃ」


 まさかの勝利条件の提示、となればわざわざ降参に持ち込ませるという気遣いは要らなそうである。


 考えてみるに、仮定ではあるが一定の攻撃をしていればオルデラスは実力を認め、三回戦への進出を決めてくれる。


 なので、殺さなければいいのだ。


「では、全力で行かせてもらいます」


 当然嘘である。全力で行ったら、オルデラスは生きているかわからない。


 加減…加減だ、とリアフィは己に言い聞かせる。両者一定の距離を取り、試合開始の合図を待った。


 風の音が、鮮明に聞こえた。


『それでは二回戦、開始です!!』


 アナウンスが鳴り響いた。


「ではリアフィ君。私から行かせてもらおう。騎士団長──オルデラス・リービッヒ、参る!!」


 オルデラスの宣言と共に、試合は開始された。


 彼は勢いよく地面を蹴り飛ばしたかと思えば、一瞬にしてリアフィとの間合を詰めた。


 あまりの速さに一歩後退するリアフィだったが、瞬時に背中に現した【虚空】から剣を取り出す。


 オルデラスの武器は大剣。絶対に大剣持っていないだろうと言いたいスピードで、攻撃は迫り来る。


 一撃、一撃とオルデラスの攻撃を弾き返す。


 当たり前だが、普通の剣と大剣での勝負なのでいくらリアフィでもそれなりの負荷はかかった。


(さすが騎士団長……気を抜けば神ですら、押されるか。ならば少し、実力を出そう)


 リアフィとオルデラスの剣が重なり合い、見事な鍔迫り合いを繰り広げる中、リアフィは魔力を溜め始めた。


 発射地点はオルデラスの真上。


 そこから発射されるのは、魔力の雷。


「射ろ!!」


 リアフィの号令と共に、雷はオルデラスに向けて放たれる。が、彼はそれを分かっていたかのように華麗に避けた。


 動きが年齢に見合っていない。オルデラスはとてもアクティブに動いている。


「さすがリアフィ君ですな。剣だけでなく、魔

力攻撃も同時にご使用になるとは」


 発言からみるに、だいぶ余裕そうである。


「ありがとうございますッッ!!!!」


 リアフィは立て続けに雷を落とした。


 一発、一発が地面を抉る威力であるというのに、それは一度たりとも命中しない。


 オルデラスは頭容易く、それらを回避した。


 リアフィは不思議に思う。


(なんでこの人には魔力攻撃が当たらない?)


 何度放とうとも、攻撃は当たる素振りを見せない。次第にリアフィも無駄だと魔法攻撃をやめた。


「その場の判断で攻撃を変えますか、賢いことですな!!」


 魔法攻撃がやむや否や、オルデラスはフィールドを縦横無尽に駆け抜け、リアフィに再度剣撃を仕掛けた。


「分かりますかな?何故魔力攻撃が当たらないのかを」


「分からないですね!!」


 リアフィはオルデラスの攻撃を弾く。が、彼の攻撃は何度も続き、若干押され気味だった。無論、負けることはないだろうが。


「魔力の隠蔽力が低い。貴方の攻撃は絶大ですが、貴方が考えるよりも人に察知されやすい」


 そう言われて、リアフィ確かにと思った。


 一回戦でも魔力を散りばめた時、戦士たちにバレてしまっているし心当たりはあった。なので、彼の言っていることは間違いではない。


「だから何度も避けられてしまう」


 そう言うと、オルデラスはリアフィと距離を開けた。何か繰り出す気だろう。


「魔力攻撃とは、こうするのです」


 オルデラスは右手を突き出した。


「ほう?」


 間一髪、リアフィは背後に現れた棘状の魔力攻撃を回避する。威力を見る限り、当たったら重傷は間違いないだろう。


「これを避けるとは中々……ではこれはどうかな!?」


 オルデラスは怒号を鳴らすと、四方八方から棘状の魔力攻撃を仕掛けた。


 先ほどの攻撃は巧みな技量によって隠されていたが、今回の攻撃は目に見えている。それを避けるのは、容易い……と思われた。


 リアフィの腕に傷が与えられる。


「魔力を隠蔽し、棘が枝分かれするのを察知させないようにしてたか」


「御名答!!」


 棘状の魔力攻撃を避ければ、次にはオルデラスの剣撃が絶えなく押し寄せる。二つに意識を割きながら、死なせない程度の攻撃の隙を狙う。


 結構難易度が高い。


 リアフィは、オルデラスは先ほどの雷で倒れてくれるものだと思っていたから驚いていた。彼はそれ以上の人材である。


 正直、あれで倒れてくれた方が楽ではあった。威力は失神するレベルで抑えていたし、多分回復もさせられた。


 だが、人間だからと見くびっていたのもまた事実。


 リアフィは謝罪の念を込め、全力の攻撃をお見舞いすることを心に誓った。


「これで終わりにしましょう。オルデラス殿」


 リアフィはラストアタックの宣言をする。


「ああ、これで勝負はつくだろう」


 オルデラスもそれに合わせる。


「これぞ、私の奥義。──【真紅の一閃】!」


 オルデラスは剣を構えた。


 その目には若者だから手加減してやろうという気が、一切含まれてはいなかった。


 なのでリアフィもそれに応える。


 魔力を練り、避けようのない一撃を編み出しす。


「────【黒紫の雷鳴】!」


 リアフィは拳を握る。それがトリガーとなり、フィールド全体の上空に隠されていた魔力の雷は全貌を現した。


「そうか、彼はもう……教えたことを取り込んだか!!ならば、私は最後まで戦いましょう」


 オルデラスは地を蹴り、リアフィへ一閃を放った。彼は死など、恐れていない様子であった。


「有難い御教授、感謝する。もし貴方が師であったなら、きっと僕はもっと強くなっていただろう」


 一閃が当たる直前、リアフィは感謝の意を述べると拳を強く振り下ろした。

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