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花束を抱え、神は咲う。  作者: 大石或和
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Ready……

(なんか、夢でも見ていたか)


 リアフィはベッドから体を起こすと、ふとそんなことを思った。感覚的に、少し前のことを見ていたような気がしていた。


 多分一週間前のこと。つまり、先述したことだ。


 まあ、見ていても見ていなくても夢なので今気にするべきことではない。そう考え、テキパキと身支度を済ませた。


「イデアル、起きろ」


「もう、少しだけ……」


 まだ寝ていたイデアルを起こすために身体を揺すったのだが、彼は起きる気配がない。


 リアフィは思い出した。こいつ、寝起きがとても悪いと言う事に。


「はぁ……」


 リアフィは大きなため息を吐くと、非常にもイデアルの毛布を取り上げ、部屋の奥へと姿を消した。


 何処からか聞こえるイデアルの悲鳴は、朝を知らせる鶏の代わりとなったであろう。


 毛布を剥ぎ取られ寒さに直面したイデアルは、仕方なく、本当に仕方なく重い足取りで身支度を行い始めた。


 彼は思う。どうせ、予定されていた時刻よりも早くに起こされたのだろうと。


 彼は無造作に部屋に備え付けられていた時計を見た。予想通り、予定時刻よりも二時間早かった。


「うん、早すぎ」


 イデアルは眠気がさめたと言わんばかりに、怒りに任せて持っていたコップを握りつぶした。


 彼も大概である。


 あと流石といえばそうなのだが、眠気が覚めたイデアルの動きはとても洗練されたものだった。


 歯磨きには多少の時間を使ったが、衣服を着替えるスピードや朝食を作るスピードは並みの人間とは桁違いだ。


 あれよあれよという間に、部屋の中心的部屋に置かれていた机には朝食が用意されていた。


「お前って凄いよな。寝起きじゃなければ完璧超人なのにな。そこだけ直せよ……」


 リアフィは本心からそう思った。


「無理だな。こればっかりはどうも難しい」


 イデアルはお手上げとばかりに、顔を横に振った。これを直すのは無理そうだ。


「さて、今日の作戦を決めよう」


 そんな談笑を交えつつ、イデアルは真剣なお面持ちをし、リアフィに話を切り出した。


 今日の目的は覇王十二使徒の選考会にて勝ち抜き、その役職を得ることである。


 二人にとっては一大イベントとであり、しくじることは全ての計画の破綻を意味する。いや本当に、これに失敗すれば後がない。


 なので作戦はより慎重に組む必要があった。適当に決めるなんてもっての外だ。イデアルが話を切り出した途端、場の空気は緊張した。二人しかいないけど。


「覇王十二使徒の選考会は、12ブロックに分けて行われる。それは知っているだろう?」


「うん」


 リアフィは相槌をうつ。


「覇者、賢者、聖者、剣者、術者、創者、愚者、統者、王者、探者、時者、壊者の12種。それぞれに人気度がある。」


「人気度?」


 リアフィは頭を傾けた。


「ああ。覇王十二使徒は就任時、それぞれの役職に合った能力を与えられる。人気度は、それの強さによるものだ」


 確かに、弱い能力を貰ってしまったらその人がいくら強かろうと序列は変わってしまうし、当たり前と言えば当たり前だ。


 実際に能力の振り幅は酷く、一番弱いものなら探し物が簡単に見つけられるという非戦闘向きなものがある。


 自分からそこに行くのはある種の物好きか、役職さえ貰えればいい人か、探し物がどうしても見つけたい人くらいだろう。


「だから、それぞれの就任への難易度は変わってくる。特に覇者や賢者、壊者は人気が高いと聞く」


「じゃあ、それ以外が安パイかな」


 リアフィは無難な選択を示した。


「ああ。それが最適解だと俺も思う」


 イデアルはリアフィの選択に賛成の意を示した。


「少なくともリギアが負けることないから、お前は好きなのを選んでくれて構わない」


「まぁね」


 尤も、リアフィが負ける可能性は無に等しかった。神としての片鱗を見せずとも、能力的なもので相手の行動パターンとかが簡単にわかってしまう。


 なので、安パイを選ぶのはイデアルだけである。


「じゃあ俺は探者にでも行こうか」


「それが一番安全ではあるよな」


 イデアルは飲み物を啜りながら、安全な道を選んだのだった。


「よし、行こう」


 こんな作戦会議を終えると二人は宿を後にし、覇王十二使徒の選考会が行われるという会場を目指して歩き始めた。


 会場と言っても見知った王城の前なので、迷うことはまず無いだろう。度が過ぎた方向音痴でもなければ。


「分かってるか、リアフィ?」


 イデアルは一度リアフィに確認する。


「ああ。負けそうになってもあの力だけは使うな、だろ?」


「そうだ。使えば王家の人間に素性がバレるかも知れない」


 リギアが無心で発動した奥義。


 それが発動された場所にいた人間は、彼ら以外に生き残っていないだろうが、もしかしたらの可能性もある。


 もし知られていたら素性はバレてしまうだろう。


「りょーかい」


 リアフィは適当な返事を送る。


 要するに、自力で勝ち抜いて見せろという訳だ。自力でも勝てるとは思うが、どんなイレギュラーが起こるかは分からない。用心は必要だ。


 とまあ、会話を重ねているうちに、二人はだいぶ賑やかな場所へとやってきた。


 その中心部には受付場所があり、置かれている看板には『覇王十二使徒選考会はこちら』と大きく書かれている。


 来た場所は間違ってなさそうだ。


 受付列があったので並んでみてはいる。が、列が役職ごとに分かられているとはいえ、人気な職は混みすぎている。回転率も悪い。


 ちまちまと列は進んでいるが、大きく動くことはまずない。これっぽっちも。


 後ろを見れば、進行度に構うことなく、列は二人が並んだ時よりも遥かに長くなっていた。


(都会って怖いね)


 リアフィは誰に話す訳でもなく思った。


「じゃあ、受付終わったら待っててよ」


 リアフィはすぐに受付が終わるであろうイデアルと別れ、個々で受付を済ませる事にした。


 そっちの方が効率はいいし、何より長い列を二人で並ぶ必要もない。

 

 イデアルは探者の受付列へと向かっていった。


「僕は覇者。これ一択だよね。別に深い意味はないけれど、なんかカッコいいし!!」


 リアフィは独り言を呟いた。


 周りの視線が一点に集中し、それを感じ取った彼は何処か恥ずかしそうに顔を赤らめて縮こまった。


(そうだここ……城じゃないから一般の人も多くいるんだった……)


 後悔したリアフィだった。


 うう、と暗い顔をすること約30分、とうとうリアフィの受付の番がやって来た。うん、長かった。


「覇王での受付をお願いします」


 受付の笑顔が素敵なお姉さんに、リアフィはお願いした。決して可愛いとかは思っていない。決して、本当に。


 お姉さんはリアフィの名前を聞き登録を済ませると、覇王ブロックがつける腕章を差しだした。これにて受付は終了である。


「やっと終わったよ、イデアル」


「長かったな」


 案の定すぐに受付が終わっていたイデアルはリアフィと合流すると、それそれはそれは呆れた顔を列に向けるのだった。


「行くぞ、リアフィ」


「そうだな」


 何はともあれ、エントリーを済ませることが出来たので、二人は城に隣接されている闘技場へと向かった。


 二人はブロックが違うので、一旦ここで二手に別れることになる。なんか今回は単独行動が多い。


 リアフィは一人、覇王のブロックへと進んだ。


 覇王のブロックに着きまず案内されたのは、選手控え室。別に個々に控室があるとかではなく、全員が同じ部屋に集められている。


 ここへ来ているのは腕に自信のある人たち。特に筋肉ダルマが多いので、控室は熱気でムンムンしている。居れたものではない。


 僕はそそくさと廊下に出て、他の人たち同様に開始の時間を待った。


 周囲を見回してみれば、ソワソワしている人が大多数を占めている。それ以外は自信家だと一目で分かる。


(面白くなりそうだ。気は抜けないけど)


 今日の日程は主に三つ。

 一・一回戦、乱闘。

 二・二回戦、決闘。

 三・三回戦、決闘

 という形。


 小難しく書かれているけれど、裏を返せば三回勝ち抜けば覇王十二使徒になれるということ。イージーゲームである。


 イデアルとブロックも違うため、二人で蹴落としあうなんてこともない。本当にイージーゲームである。


 勝つためなら、あの力を使わない分には本気で暴れてもいい。そうイデアルに言われているので、リアフィは是非楽しむことにした。


『選考会にお越しの皆様、おはようございます。ただ今より、選考会を始めさせていただきます』


 時間になったらしい。アナウンスが始まった。


 その場の全員が指の骨を鳴らしたり、首の骨を鳴らしたり、ストレッチをしたり、各々準備を始めた。


 場の空気は一変し、全員が目的のためなら手段を選ばない獣に早変わりした。うん、人って恐ろしい。


「さてと、どう戦おうかな」


 リアフィは楽しそうに言ったのだった。


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