Story4
と、考えてみた。
実際はまったく嫌という気がない。
いや、今無くなった。体から湧き上がる気持ちが、ゼロになるように抜けていき元に戻っていく。
そして、今はもはや晴れやかな気分だ。どんな殺人者でも許してしまいそうってほど気持ちが開放的だった。そんなこと、許してはいけないが。
また部屋に戻った。落ちている破片を丁寧に拾い上げ、机の上に置いた。
気がつくと、手はガラスの破片で血だらけになっていた。
だが、この手を孤児院の誰に見せても心配もしてくれない。
子供に見せたら、触ってもっとぐちゃぐちゃにしてしまうだろう。
丁寧に服で破片の血を拭いた。痛みを我慢しながらだったせいで、手が震えてしまって破片が落ちてしまう。
何とか破片から血を拭いて、机にまとめた。
改めて破片を見ると、なぜだかひっかかることがあった。
なんだかおかしい。破片にヒビが1つもなかった。よく見ると、割れ方に統一性もあった。
まるで、血が拭きやすいように割れているようだった。
だが、気にしても鏡が直るはずがない。気にして直ってしまうほど世の中イカれてはいない。
少年は汚らしいベッドに横になり、天井を眺めた。
ドロが所々についていてシミになっているその天井だけが、頻繁には汚されない唯一の場所だった。
天井が 妙に高く触ることが出来ないため掃除できないから、天井だけは一度も掃除したことがない。
その天井を眺めながら、なぜ自分に部屋があるのかとも思ってしまうほど、少年は頭を悩ませていた。個人部屋があるというところで、皆から省かれている気がしてきてしまう。
個人部屋がなければ、みんなと同じところなら仲良くできるんじゃないか?
みんなと同じ状況・環境で生活していれば自然と友達になって、いじめなんてなくなるんではないかと思った。
他の子たちは違う部屋で寝たり、同室だったりと、少年とは違う環境なのだ。
同室がいい。そう思い始めた時だった。
「失礼するよ」
カチャリと、ドアが開いた。