Story3
部屋に戻ると、部屋は掃除前より荒れていた。泥や水、手鏡などが割れていた。
手鏡は、少年が初めて貰ったものだった。名前や顔は思い出せない誰かから貰ったものだ。
その人は、少年に会いにきたわけではなかったが、ずっと1人で孤児院の掃除をやらされて
いた少年に、初めて優しくしてくれた人だった。
その鏡は、最初で最後のプレゼントだった。
それ以来、少年を優しく見てくれる人は1人も来なかった。
少年は、手鏡の破片を集めた。
そして無言で、ただひたすら手鏡の枠に押し込めた。
今まで、この鏡だけはずっと守ってきた。
石を投げられるたびに、少年は鏡をかばって石に当たっていた。
少年は、初めて悔しいと思った。表情に丸きり変化はないが、拳が固くなってきている。
拳が震え、破片を割れるくらい強く握っていた。
少年は、窓の外の連中に部屋にあるすべてを投げてやりたかった。
大切なものはもう全て壊れてしまった。
もうこの部屋にあるものに意味はない。
だが、できない。むしろ、またしょうがないと思って笑ってしまいそうだ。
その理由はある。自分にある、特別な能力についてだ。
だが、これが特別人に害を及ぼすものではない。
いや、もはや誰にも見せたことがない。
つまり、引き取り手が来ないこととは関係ないということだ。
少年は、部屋を出た。孤児院さえ飛び出したかった。
こんな自分だけひどい扱いを受けているんだ。嫌になって当然だ。