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CALPIS  作者: days
2/4

Story2

少年の部屋の前を、何人もの子供が騒ぎながらかけて

言った。

「なあ知ってるか?ハイトがこの孤児院出るんだっ

て!」

さっきの子供とは違う奴らだ。少年が孤児院から出た

いことを知っていながら、子供たちは騒いでいるの

だ。

最近、孤児院から出て行く人が増えた。

引き取り手が見つかり始めたんだ。

確かに良いことだが、自分は一生でれない、そんな気がしていた。

部屋から出て、ハイトの元に向かった。ハイトは、こ

の孤児院で唯一の友達だからだ。

ハイトは、玄関にいた。

「おめでとう」

少年は、また笑って言った。

「・・・・ごめん」

ハイトは振り返って、少年に深く頭を下げた。

「何だよ?」

少年はしゃがんで、ハイトの肩を押して無理矢理頭を

あげさせた。

「俺まで出て行っちまったら、お前は・・・・」

「大丈夫。毎日楽しいよ」

少年は万遍の笑みで言ったつもりだったが、ハイトは

見抜いてしまった。

「本当に、悪い。俺も夢がある。こんな所では叶わな

い夢が!」

ハイトの目には希望があった。きらきら輝いていて、

眩しいくらいの。

少年は羨ましかった、自分にないその輝きを持ってい

るハイトがだ。輝きが羨ましかったわけではない。

ハイトが羨ましかった。

自分も、こんな輝きがあれば ここからでれるかもしれない。そう思ったからだ。

ハイトを呼ぶ声が、外から聞こえた。甲高い声で、優

しく呼びかけている。

その人は、子どもが幼い時に亡くなり、ハイトとかぶせて見ているらしい。

ハイトは以前から、そこに行きたくないと言っていた

が、ここよりはいいと思ったのだろう。

だが、少年はたとえそこでも喜んで行きたかった。こ

こにいたくない。それが後先考えずに出て行けと言っ

ているのだ。

「じゃあな」

「うん、じゃあね」

少年は、今度は笑わず、ハイトに手も振らなかった。

振りたくなかったのかもしれない。振ることが別れの

儀式なら、もう会えないかもしれない。

いや、もう会えない。少年がここから出ない限り、一

生会うことは出来ない。

なぜ自分に話が来ないのか不思議でしょうがなかっ

た。周りの子には何回も話が来ているのに、自分は一

回もない。むしろ、孤児院の外に出たこともない。な

ぜ自分を引き取る人が1人も来ないのか。それが気に

なって仕方なかった。

少年はこの時、唯一の友達を失った。これでもう、か

ばってくれる人間はいなくなった。少年は笑う。諦め

を示して。


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