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猫耳フードと旅する少女 ~巡りまわる不思議な世界~  作者: 灰猫 無色
甘い土と岩世界
9/13

甘い土と岩世界 #1

 空は草原のような緑色。

 どこか重苦しい空気の中、楽しそうな声が辺りに響いていました。


 あどけなさを残す顔だけどすらりと高い背、ちょっとだけ日焼けをしている白い肌に、白いワンピース。

 色々と小物が詰まったジャケットを羽織って、生活必需品が詰まったリュックサックを背負っている。

 小動物を思わせるような"もこもこ"の猫耳フードの下で、長く蒼い髪をふんわりと空に泳がせながら少女はベージュ色の木を根元からパキリと折っていました。


「ねぇねぇ、この木、木じゃないみたい! 私、力持ちになったのかなぁ!?」

『違うからねアーシェ。あと最初も言ったけど、絶対に魔法を切らしちゃダメだからね』

「はーい!」


 アーシェは自分の何倍もある大きさの木を片手で持つと、それをリュックサックに丁寧に入れていきます。

 明らかにリュックサックの口よりも大きいのに、まるで吸い込まれるかのようにドンドン入っていく様子は、リュックサックが木を食べているようだと喋る猫耳フードは思いました。


「それにしても、人と全然会わないねぇ」

『ここで人と会う事はまずないと思うよ』

「あれ、そうなのぉ?」

『うん。もしかしたら出会えるかもしれないけれど……期待はしない方がいいね』

「なんでぇ?」

『なんでも』

「えぇー、教えてレコせんせー」

『先生じゃないし、ボクだってなんでも知ってるわけじゃないんだよ?』

「嘘だぁ」


 楽しそうに話をしながら、アーシェはレコを被りなおして茶色い地面を歩きます。

 空はまるでミントみたいなのに、土や木はチョコレートみたいだなぁ、と思いながらアーシェは歩いて、スキップして、宙へと浮かびます。


「んぅー、お空、ちょっと重い?」

『物質的なフィルター程度じゃ無視できるくらい小さいのに、地上に溜まりやすいようなのか重たいみたいだからね』

「どーいうことぉ?」

『あー……二酸化炭素みたいな』

「にさ……たんそ?」

『ダメだこりゃ』


 チョコレートの森を抜けて、茶色の平原を抜けたころ。

 アーシェたちは地平線に青い、とても青い色の海を見つけました。

 それはまるでラムネのような綺麗な色をしていて、アーシェは目を輝かせて速度を上げます。


「レコ、レコ!! 見て、見てぇ!! ラムネ、ラムネの海だよぉ!?」

『待った待った、アーシェ、落ち着いて! あれはラムネじゃないから!! 海だから!!』

「でもラムネみたいなすっごい綺麗な色だよ!?」

『それでもあれは海だから! 絶対に飲んじゃダメだよ』

「むぅー、レコのケチぃ」

『ケチじゃない。もしもアレ飲んじゃったらアーシェ死んじゃうよ?』

「え、それはやだぁ……」


 アーシェはしょんぼりとしながらゆっくりと海の前に降りて、茶色い砂浜と綺麗な青色の海を見ます。

 それは茶色の世界の中でも美しい景色で、見れて良かったと思うようなものでした。

 そんな景色を、レコはミントチョコパフェみたいだなと思いましたが、あえて何も言いませんでした。


「綺麗だねぇ……」

『……綺麗だね』

「海と砂だけだねぇ……」

『……草もあるけどわかりづらいね』

「みんな一緒の色だもんねぇ……」

『……青と茶色と緑色しかないからね』

「……甘いもの食べたいなぁ」

『食べ物は』

「リュックから、だよね」


 アーシェはリュックを抱えるように持ち直すと、中から青と白の縞模様のシートを取り出して砂浜に敷きます。

 それからバスケットとビーチパラソルを取り出して、ぶすりと砂浜に刺しました。


「今日のお昼ご飯はサンドイッチー! 恐竜の卵で作った卵焼きとマンモスのハム、シロップレタスとフルーツトーメの実!!」

『しょっぱいのと甘いのね。それにしてもそのリュックサック、本当に便利だよね。容量は無制限、内部の時間は止まってるけど入れる時に止めない指定ができる、魔力を鍵としていて防犯ばっちり、サイズ無視。いったいどこの神の所業なのやら』

「もぐもぐ……これはねぇ、ヘリオちゃんが作ってくれたの!」

『ヘリオ……ああ、あのヤンデレ魔女っ娘か。それにしてもアーシェの故郷の人たちってなんなのさ、何かしら一芸に秀でてるとか。実はみんな外の世界からの移住者じゃないの』

「ごっくん。なんかねぇ、みんな何かに特化して産まれてくるんだってぇ」

『特化』

「アーシェだったら運命操作の魔法、ヘリオちゃんはアーティファクトの作成、とかねぇ。もちろん何もない人もいるけど、そういう人たちも色々できるんだぁ。もぐもぐ」

『なるほどね。アーシェと契約して長いけど、まだまだ知らないことが多いな』

「んくっ……レコが知りたいなら教えるよぉ? 何が知りたいのぉ?」

『そうだな……とりあえずまずは、食べるか喋るかどっちかにしようか』

「もぐもぐ」

『……うん、知ってた』

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