大草原と石壁世界 #エピローグ
最初に機械を作った時はどんな気持ちだった、か。
楽をしたい、効率化したい……そんな気持ちだったと思う。
そうして自分のために作った機械で喜んでくれた時、感謝された時、認められた気がした。
それから僕は機械作りにハマり始めたんだと思う。
書類を仕分けしてくれる機械。
掃除をしてくれるロボット。
自動で料理をしてくれる装置。
マスコットを兼任した自動給仕。
けれど何時しか何も思いつかなくなって、やる気がでなくって、家に篭ることにした。
僕が何もしなくて、全てロボットが代わりにしてくれる。
遊ぶような友人なんているはずもない。
ロボットと遊ぶのも飽きていたんだよ。
そんな日が続いていたから、彼女が家の外で騒いでいるのを聞いたとき、わくわくしたんだ。
まるで、というよりもそのものの、外の世界から来たという世間知らずな少女、アーシェちゃん。
見た目はふわふわした猫耳のフードだけど、その実態は魔道具であるレコ君。
最初、レコ君を見た時は僕の知らない技術で作られた機械だと思った。
そうしてどうにか仕組みを調べようとして怒られたんだよね。
彼女たちが去った後も、それはもう考え続けたよ。
あのまるで生きているかのようなAIはどうやって作られたんだろう。
毛糸のような手触りを保ったまま筋肉や骨があるかのように動かすには。
フェルトで出来たような目や口が滑らかに動いているのは……。
魔道具と知った今では、なるほど、魂を道具に入れ込むと認識すれば納得する。
電気を使わなくても、疑似的な筋組織などを作らなくても、魔力で代替できるのだから。
いてもたってもいられなくて、徹夜で作業をしていたらいつの間にか彼女が前に立っていて、声をかけてきたのは本気で驚いたよ。
心臓が止まるかと思った。
「あのねあのね、お外の人とお話して欲しいんだぁ」
彼女とレコ君の話をまとめると、壁の外には僕たちと別の文明を持った人がいて、その人たちが理解不能な僕たちの存在を怖がっているから話して交流して欲しい、というものだった。
なんでも魔力という不思議な力を持っていて、魔法という技術が発展しているというじゃないか!
これは是非技術交流をせねば、って燃えたね。
そんなことだから当然話を断るはずもなく、僕は二つ返事で了承した。
そこからは驚きの連続さ。
空を飛ぶなんて想像もしていなかったし、本当に壁に扉がなかったなんて面倒で調べていなかったし、壁の外は色とりどりの街や文明で溢れかえっていたんだ。
その点は僕も君に確認したいんだよ。
どうして壁を作ったのに、扉を付けなかったんだい、あんな素晴らしい文化が外にあるのに。
え、君が作ったんじゃない? 外の人たちが作った?
ああ、アーシェちゃんも何かそう言ってたような……。
けれどもまぁ、おかげであの景色を一番最初に堪能できたのは感謝してるよ。
外の人たちって言っても、僕らと変わらなかったしね。
流石に獣人やエルフ、ドワーフ、オークと言った種族には驚いたけど……。
そのあとの話し合いというか、認識の違いを合わせていくのは大変だったなぁ。
僕は研究・開発が好きなだけで、政治は苦手なんだけど。
そこはそういうのが得意な人に投げて、僕は自分たちが作った機械をプレゼンしたね。
外の人たちに不便なことがないか聞いて、機械を渡して。
電気がないと動かないから、って言ったら電気のことから説明することになるなんて思わなかったよ。
その後もその後で「雷の力を使うなんて罰当たりな!」ってちょっと揉めたけど、まぁその辺も根気よく説明したさ。
最初は非効率的だけど魔力を電気に変えて動かしてもらって、並行して魔力を研究して魔力で動く機械を作って。
今じゃ空気中にある魔力を使って動かしたり、発電機なんて作って電気を作ったり、ね。
……そういえば街の中にある電気はどうやって作られてるんだろう。
神様の魔力? そりゃ凄い! あれだけの規模を使ってたら国宝級の人でも一分持たないって言われてるのに、そこは流石だね。
ん? 何かあった? 何もない? そう。
まぁでも、今後もずっと発展し続けると思うし発展させていくよ。
だってさ、触覚がなくなったから熱いものを触ってもわかんないって彼女は笑っていたけど、それって、大切な家族に触っても、感触がわからないってことじゃないか。
だからそんな悲しいこと、絶対に何とかして見せる。
魔法だろうが科学だろうが、触ったものの感覚がわかるようになるものを作る。絶対にだ。
そしたら彼女たちがまた来た時に、見れるかもしれないじゃないか。
アーシェちゃんの嬉しそうな顔と、レコ君の悔しそうな顔が。
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